大手繊維商社の豊島(未上場)はこのほど、2022年6月期決算を発表した。売上高が前期比5.9%増の1920億円、営業利益が同46.6%減の41億円、経常利益が同36.7%減の57億円、純利益が38.2%増の53億円だった。減益の主な要因は、輸入時のコンテナ便価格の高騰や円安を売価に転嫁できなかったため。売上高総利益(粗利)率は11.9%で、前期に比べ2.3ポイント悪化した。
増収の理由は、綿花相場の上昇によるもの。期初(昨年7月)に1ポンド85セントだった綿花価格は期中のピークには155セントに、期末には98セントへと乱高下した。綿花・綿糸取引が大半を占める素材事業では151億円の増収要因となったものの、相場の乱高下で価格転嫁が進められず、減益だった。
主力の製品事業は前期までの医療用ガウンなどのコロナ特需がなくなったことが減収要因となり、売上高は42億円減の1217億円だった。
23年6月期の目標は売上高が1800億円、経常利益が60億円。豊島半七社長は「足元では受注残高が増加するなど、衣料品市況には明るさが見られる」とした上で、「これ以上の円安は衣料品サプライヤーにとってはかなり厳しい」との見方を示した。
決算発表での豊島社長とメディアの主な一問一答は以下の通り。
−22年6月期を振り返ると?
豊島半七社長(以下、豊島):上期(21年7〜12月)は大変厳しく、原料高やコンテナ輸送費の高騰など、日を追うごとに業績が悪化するような有様だった。かなり早い段階、昨年秋ごろから私を筆頭に役員などが売り先のアパレルや小売りなどに状況を説明しに行っていたが、その時期にはまだ原料高や輸送費高騰の状況の深刻さが伝わらず、なかなか理解を得られなかった。潮目が変わったのは、大手SPAが値上げを表明した春以降で、下期に若干(業績の落ち込みを)戻せたという印象だ。
-足元の状況は?
豊島:もともと思っていたよりはいい。素材は低調だが。主力のOEM・ODM事業に関しては受注残も増えており、7月以降の店頭の回復が追い風になっているようだ。前期に苦しめられたロックダウンに伴う生産地や輸送の混乱も、今はだいぶ落ち着いており、そういった影響もほとんどない。前期に、ロックダウンの影響などで中国からASEANに生産をシフトしていたが、中国の工場でも再び日本のオーダーを求めるようになっている。生産の面ではだいぶ安定している。
-懸念点は?
豊島:それを言ったら、たくさんありますよ(笑)。綿花を筆頭に素材の価格はまだ落ち着いてないし、コロナの第8波への懸念もある。大きいのは為替だろう。これ以上の円安は、日本のアパレル産業にとってかなり厳しいのではないか。
-6年目を迎えたCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の状況は?
豊島:投資関連では前期(21年7月〜22年6月)に、ライトオン(21年10月)やブロックチェーンを活用した貿易情報連携プラットフォームのトレードワルツ(22年8月)、AIを使った画像解析のアイキュー(AIQ)に出資した。このうちアイキューはCVCによるものだ。CVCはすでに第二期を迎えており、出資先は累計で24社になっている。常に20社ほどをリストに上げて、検討をしている。もともとキャピタルゲインを狙った投資ではなく、マイノリティー出資がメーンであり、既存の事業をアップデートしたり、ブラッシュアップしたりが目的で、投資会社とは違う。ただ、営業先を開拓したり、取引先を紹介したり、ということを一緒になってやっており、それなりの成果も上がってきた。最終的に出資まで至らなかったケースも含めると、CVC関連の企業との取引額は、今期で10億円に届きそうだ。これは一つの成果といっていいだろう。
-今期の重要テーマは?
豊島:やはりDX(デジタル・トランスフォーメーション)だ。3DCADを使ったサンプル提案に関してはすでに全部の課に提案できる人員を配置しており、提案数ベースではかなりの割合が3Dに置き換わっている。ただ、これはあくまで取引先のアパレル・小売り側の要望や考え方ありき。望んでいない取引先に3Dで提案しても意味はない。アイテムによっても実際に物を見て決めるということもあるだろう。こうした3D型のサンプル提案以外にも、サプライチェーンや、課題解決型のOSM(オリジナル・ソリューション・マニュファクチュアリング)なども推進していく。