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アウトレットと通常SCの違いはどこに?

 埼玉・深谷に10月20日オープンする「ふかや花園プレミアム・アウトレット」を取材してきました。ファッションブランドがアウトレット専用商品を多数企画・投入しているのはアウトレットではもうお馴染みですが、アウトレット専用企画でもない、現行のシーズン商品をそのまま入れている店舗もかなり多いことが目にとまりました。

 こうなってくると、アウトレットも通常のショッピングセンターやファッションビルともう変わりませんね。アウトレット業態が日本に進出して20年超。改めて「アウトレット業態とは何か。通常のショッピングセンターと何が違うのか」を考える機会となりました。

「WWDJAPAN」編集委員
五十君 花実
NEWS 01

「ふかや花園プレミアム・アウトレット」が10月20日開業 「ヴァレンティノ」「ヴェルサーチェ」など出店

 三菱地所・サイモンは10月20日、埼玉・深谷市に「ふかや花園プレミアム・アウトレット(以下、ふかや花園PO)」を開業する。同社としては2013年に千葉の「酒々井プレミアム・アウトレット」をオープンして以来、10年ぶり10カ所目の開業となるが、今春には北九州にイオンモール系列の「ジ アウトレット」が出店、23年春には大阪・門真にららぽーととの併設で「三井アウトレットパーク 大阪門真」もオープンする。24年には京都に、三菱地所・サイモンの「京都城陽プレミアム・アウトレット」も開業予定と、ここ数年は各地でアウトレットの開業が続く。「ふかや花園PO」の特色を取材した。

 「ふかや花園PO」は敷地面積17万6800平方メートルに、オープン時は137店が出店する。うちファッションなどの物販が94、飲食・食物販が41、サービスが2だ。飲食・食物販41というのは、「酒々井プレミアム・アウトレット」オープン時の約2倍といい、フードコートだけでなく、通常ならファッションブランドの店舗が入りそうな場所にも回転寿司店やメキシカンレストラン、ウナギ料理店が入る。「国内外の(衣料品や雑貨)ブランドをリーズナブルに購入できる点がアウトレットの醍醐味であることは変わらないが、その上で今はトキ消費や感動価値の提供がさらに重要になっている」と、山岸正紀 三菱地所・サイモン社長は狙いを話す。深谷に本社がある、アイスキャンディーの「ガリガリ君」でおなじみの赤城乳業と組んだ、子ども向けのミニ遊園地や施設内のアートウォールなども、そうした考えで設置した。

お出掛け消費だけでなく
地元住民の日常使いも意識

 これまではアウトレットというと、都心から車や電車で出掛けて買い物を楽しむという、お出掛け消費や非日常感とも結びついてきた。「ふかや花園PO」は深谷市が地域の農業や観光業活性化を目指し進める「花園IC(インターチェンジ)拠点整備プロジェクト」として開発されていることもあり、関越自動車道の花園ICからすぐ。秩父鉄道ふかや花園駅からのアクセスもよく、広域から集客する考えは変わらない。ただ、「同時に地元のお客さまが夕食だけ食べにくる、犬の散歩に訪れるといった日常消費を取り込んでいく」ことも目指す。

 三菱地所・サイモンは従来、海外の街並みを模してプレミアム・アウトレット施設を作り込んできたが、今回は深谷の街にゆかりのある赤レンガの外壁を強調。これも地元住民の日常生活へ溶け込むことを表したものだ。コロナ禍で訪日外国人客が消え、小売市場全体として日本人客による足元商圏での消費に注目が集まったことももちろん反映している。

現行シーズンのEC限定商品を
品ぞろえの目玉にするショップも

 ファッションなどの物販94店のうち、「WWDJAPAN」的に注目したいのは、国内アウトレットは5店舗目の出店という「ヴァレンティノ(VALENTINO)」や、国内7店舗目という「ヴェルサーチェ(VERSACE)」。それぞれ最新で1年前のものという過去商品をプロパー価格の50%引き前後で販売する。「ヴァレンティノ」の“ロックスタッズ”のミニバッグは税込20万円強、「ヴェルサーチェ」のVロゴのチェーンバッグは9万200円だ。インポーターのコロネットは、取り扱いブランドのアウトレット商品を集めた店を初出店した。ボトムスの「インコテックス(INCOTEX)」やダウンの「ムーレー(MOORER)」などがそろう。

 セレクトショップ業態やカジュアル業態では、アウトレット専用に企画・生産した新規商品が品ぞろえの主軸で、過去シーズンの在庫はほんの一部という構成は変わらず。アダストリアは自社ECモールと連動したブランドミックス型OMOストアの「ドットエスティストア(.ST STORE)」で出店。過去シーズン在庫は店奥の壁面と一部什器のみ陳列している。ららぽーとなどのファッションビルにも同業態で出店しているが、アウトレットへの出店はここが3店舗目。

 「フリークスストア(FREAK’S STORE)」は現行シーズンのEC限定商品を品ぞろえし、実際に手に取れることを目玉の1つにしている。「EC限定商品は比較的高年齢層の客に支持されており、ファミリー層の集客が見込めるアウトレットとは相性がいい」という判断だ。

地元百貨店による
地場食材のセレクトショップが充実

 ほかにファッションの物販では、「スピック&スパン(SPICK AND SPAN)」などを含むベイクルーズの複合業態や、「ビームス(BEAMS)」「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」などが出店する。「デサントゴルフ(DESCENTE GOLF)」や「ピン(PING)」など、ブームとなっているゴルフブランドも複数出店している。

 リーシングを強化したという食物販領域では、埼玉の地場百貨店、丸広百貨店による地元食品のセレクトショップ「モイサイタマ マルヒロ(MOI SAITAMA MARUHIRO)」が楽しい。深谷のゆるキャラ「ふっかちゃん」のお菓子や、深谷ネギの加工食品、埼玉の外食チェーンと食品メーカーを組ませたコラボ冷凍商品、地元のパン屋のパン、秩父産のウイスキーやワインなどが豊富。秩父の長瀞地区にあるカフェ「長瀞とガレ」も出店し、秩父の郷土料理みそポテトやオリジナルのクラフトビールなどを提供している。

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NEWS 02

パタゴニアが自社古着を原料に循環Tシャツ製造へ 日本独自スキーム確立

 パタゴニア(PATAGONIA)は7月、無限にリサイクル可能な繊維“インフィナ(Infinna)”を用いたTシャツを発売した。“インフィナ”はフィンランドのスタートアップ企業インフィニテッドファイバー(INFINITED FIBER)がコットンなどのセルロース系繊維の使用済み繊維を原料に再生した新しいリサイクル繊維で、柔らかく丈夫で肌触りはコットンの風合いを持つ。

 日本支社はインフィナを用いた製品発売に合わせて独自の回収スキームを確立した。店頭で回収した使い古したコットンなどのセルロース繊維の衣料を集めて、インフィニテッドファイバーに送り、新たなパタゴニア製品の原料として活用するというもの。不要になった自社製品を回収して自社サプライチェーンに戻す新しい試みでもある。日本支社の責任者である篠健司環境社会部ブランド・レスポンシビリティ・マネージャーに聞く。

WWD:コットン古着から新たにセルロース繊維を作る技術を持つインフィニテッドファイバーと複数年契約を結んだ。その目的は?

篠健司環境社会部ブランド・レスポンシビリティ・マネージャー(以下、篠):パタゴニアもインフィニテッドファイバーも循環性を追求している。アパレル産業の大部分が「テイク・メイク・ウェイスト(取って、作って、捨てる)」というモデルに基づいていて、不要となった衣類がどうなるかについては責任を負っていない。世界中で廃棄される繊維は毎年60%ずつ増加し、2030年には年間1億4800万トンに上ると予測されている。素材自体がリサイクル繊維だったとしても、回収されて再利用される繊維はわずかしかない。インフィニテッドファイバーはポストコンシューマー(使い古された)コットンなどのセルロース繊維を素材に戻すことができる技術を持っている。同社は現在、工場を新設しておりパイロットレベルから商業レベルになる。今後、パタゴニアでは“インフィナ”を用いた製品が増える予定だ。

WWD:コットン(セルロース系繊維)古着から新しい繊維を作る技術を持つ企業は他にもあるが、なぜインフィニテッドファイバーだったのか?

:ビスコースの生産に使われる有毒な二硫化炭素の代わりに、動物飼料グレードの尿素を使用しているので、有機溶媒は必要ない。また、再生する際にパウダーにまで戻すので、(コットン古着を原料にセルロース繊維を作ると短繊維になり強度に問題がある場合が多い)100%“インフィナ”で衣類を作ることも可能だ。セルロース系廃棄物から柔らかく丈夫で肌触りもコットンに近い繊維ができる。

WWD:当面の日本の回収目標は300kgだとか。パートナー企業やスキームについて教えてほしい。

:豊田通商が自社ネットワークとリサイクル事業基盤を生かし、パートナー企業であるナカノが分別した繊維をインフィニテッドファイバーに輸出する。豊田通商は長年パタゴニアのサプライヤーでもあり、当社の循環型の仕組みを理解していただいている。ナカノは故繊維をリサイクルした再生繊維原料やウエス、軍手の製造販売、良質の中古衣料を海外に輸出することを通じて日本の繊維循環を支えている企業。“インフィナ”の原料になるのはコットン90%以上の製品でその分別を担当する。

WWD:移動の環境負荷を考慮した場合、理想は日本に再生工場があることだが、今はない。日本から本国を経由せずに直接送ることは、無駄が少なく効率がいい。同じような取り組みをする場合、本国経由で物事を進めていく企業が多いのが現状だ。

:トータルのプロセス自体をシンプルにすることが重要だと考えた。インフィニテッドファイバーとは、米国の担当者につないでもらいつつ、直接交渉してプログラムを作った。どのような条件の古着が適しているか、ミニマムの量、送る頻度などを検討して300kgを割り出した。国によって使える技術やパートナー、そして法律も異なる。移動に伴う環境負荷を考慮して、各国が適切なスキームを作ることが重要だ。

WWD:繊維のリサイクルについてパタゴニアが今重視していることは?

:販売した自社製品を自社のサプライチェーンに戻すスキームをどう作るか、だ。自分たちが生産した製品を引き取りリサイクルするだけではなく、回収したものを自分たちが使うモデルがないと循環性を追求したとは言えないのではないか。

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最新号の読みどころ

「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。