2023年春夏パリ・ファッション・ウイークが9月26〜10月4日に開催された。すっかり活気を取り戻したパリでは、多くのデザイナーが街に戻ってコレクションを発表。肌見せやランジェリーにインスピレーションを受けたルックを通して、フェミニニティーや着用者をエンパワーするような、ファッションの賛美が広がった。素材はデニムやレザーが多く見られたほか、全体を通してシアー感や光沢を取り入れた“Y2K”スタイルがトレンドをけん引。ここでは、欧米有力店のバイヤーたちが感じた23年春夏パリ・コレクションの総論やトレンドを紹介する。
ノードストローム(NORDSTROM)
リッキー・デ・ソーレ(Rickie De Sole)/ウィメンズ・デザイナー・ ファッション兼エディトリアル・ディレクター
よかったブランド:「シャネル(CHANEL)」「サカイ(SACAI)」「ミュウミュウ(MIU MIU)」「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「ロエベ(LOEWE)」
英雑誌「デイズド(DAZED)」の編集長も務めるスタイリストで、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH以下、オフ-ホワイト)」のアート&イメージディレクターに就任したイブラヒム・カマラ(Ibrahim Kamara)によるデビューコレクションは、壮大なブルーをハウスカラーとし、ブランドの新たな1章を表現した。今季の注目は、多様なパンツスタイル。プリーツや太めの幅、ウエストをすっきりと下げたスタイル、フレアボトムス、カーゴパンツなど、豊富なスタイルが見られた。伝統的にイブニングウエアに使われることの多いスパンコールやビーズ、刺しゅうは、新たな可能性を日常着にもたらした。全体を通して今シーズンは、「シャネル」によるシルクシフォンや千鳥格子の新解釈、「サカイ」「ミュウミュウ」に見られたカーゴスタイルや斬新なシャツスタイルなど、軽やかさと深い感性の表現が見られた。
バーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)
リンダ・ファーゴ(LINDA FARGO)/ファッション部門シニア・バイス・ プレジデント
よかったブランド:「ドリス ヴァン ノッテン」「シャネル」「ロエベ」「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」「ジュンヤ ワタナベ」「ヴァレンティノ」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「ディオール(DIOR)」「リック・オウエンス」「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」
美とアイデンティティーの出発点として人体に焦点を当てた「ディオール」「オフ-ホワイト」「イッセイ ミヤケ」でのダンサーの起用は素晴らしかった。困難な問題に取り組みながら真実を探究し、現実的に考えること、また固定観念にとらわれないで柔軟に考えていくことを、視覚的かつ詩的に表現する発表方法を用いたデムナ(Demna)「バレンシアガ(BALENCIAGA)」アーティスティック・ディレクターをたたえる。自分の体に誇りを持つことを表現した着こなしや、見せるためのインナーウエア、シースルーのレイヤーなどがトレンドに挙げられる。斬新なフットウエアも多く登場した。コレクションのショーでは多くのブランドがクリエイティビティーと向き合い、自分自身のアイデンティティーからファッションとは何かまで、文化的なメッセージを発信していた。“ファッション”の規範はもはや解体されており、刺激的で新しい解釈が進んでいる。
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