アウトドア用品大手のモンベルは、同社最大の旗艦店「モンベル アウトドアヴィレッジ奈良店」を奈良市内の幹線道路沿いに20日オープンした。国内127店舗目の直営店で売り場面積は約2500平方メートル。直営飲食店「ベルサイドカフェ」を併設し、総店舗面積は約3300平方メートルとなる。
自社ブランド「モンベル」の登山用具を中心にクライミング、キャンプ、自転車、パドルスポーツ、フィールドウエア、ファクトリーアウトレットなど全カテゴリーをそろえ、商品点数は約2万5000点にのぼる。日本正規代理店を務める韓国のアウトドアブランド「ヘリノックス」なども取り扱う。奈良のご当地デザインアイテムとして人気の鹿や寺などをプリントした限定Tシャツ、マグカップ、クリアボトルも販売する。
店内と屋外の広い空間を生かして、擬似体験できるのも特徴だ。
店内には高さ10mのクライミング体験用ピナクル(人工の岩壁)を設置した。大人だけでなく子供も本格的なクライミングを安全に楽しめる。パドルスポーツコーナーには、フォールディングカヤックのオリジナルブランド「アルフェック」をはじめ、さまざまなブランドのカヌー、カヤック、SUPを約30艇展示する。屋外にはカヤック体験ができる池も設けた。
サイクリングコーナーには、オリジナルブランド「シャイデック」を中心に本格的なロードバイクから子供用まで常時100台を置く。併設したサービスピットでは、専門知識を持つスタッフが常駐し、点検・整備を受け付ける。
テラス席を含めて54席のカフェでは、焼きたてのナンが付いたカレーセットや窯焼きのナポリピッツァなどを提供する。買い物の合間にくつろげて、長く滞在できる。
世界最大店舗を奈良に出店した理由について、辰野勇会長兼CEOは「自分が奈良に住んでいて、近くに自分の居場所があれば、楽しめると思ったから。縁があってこれだけ大きな物件を取得できたが、着工から足かけ3年がかかった。当社のビジネスは店作りも物作りも、採算を優先してやっているわけではない。自分が一番楽しめる店、自分が欲しいと思うものを作ってきた。ここで面白いことをやっていれば、モンベルを知らない人にも来てもらえると思う」ときっぱり。
モンベルは他のアウトドアブランドが出店しないような地方への出店を増やしている。北海道の大雪山のふもとにある東川町、鳥取県の大山町、四国の中心に位置する高知県の山間部の本山町などは、アウトドアレジャーもさかんな地域だが、人口は少ない。農業や林業に従事する地元住民に向けたウエアなども売る。
4月には人口わずか2300人の北海道・南富良野に道内最大店舗をオープンした。その際も「勝算があったわけではなかった。地元の熱い思いとチャンスとそれに応えたいというわれわれの思いがあり、実現した」(辰野会長)。半年経った今も南富良野店の売り上げは絶好調という。広域からも同店をめざして客が集まる。一方で都心の東京・六本木ヒルズ店は売り上げ不振で21年12月に撤退した。
「これがいまの日本の現状。都心のマーケットもようやく回復してきたが、都会が空洞化し苦戦する一方、地方の店が健闘している。キャンプブームとは思っていないが、アウトドア人気で、まさにこれからは地方の時代だと思っている」
同社の21年8月期のグループ売上高は約850億円。22年8月期は前期比20%増で推移した。有料会員組織「モンベルクラブ」の会員数は、21年6月に100万人を突破。この1年間で新規会員が10万人増えている。