環境省は10月25日、「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動(仮称)」を発表した。2050年カーボンニュートラルおよび2030年度削減目標の実現に向け、中でもライフスタイル分野での大幅なCO2削減を目指し、国と自治体、企業、団体、消費者の連携をうながす。そのため同日、官民連携協議会を立ち上げた。新たな市場創出とともに、来年開催されるG7広島サミットやG20などでの発信を視野に入れている。
同日開かれた会見で西村明宏環境大臣は「30年度削減目標を達成するには家庭からの排出を66%削減する必要がある。しかし、脱炭素に向けて“何をしたらいいかわからない”国民は多く、大きなうねりをもって進んでいるとはいいがたい」と現状を分析。同運動では「衣食住にわたる新しいライフスタイルの全体像、絵姿を示し、団体、自治体、企業を連携し豊かな生活を後押しする」と語った。
また省エネ家電の使用やテレワークといった行動変容例をイラストを使って取り上げ「脱炭素は我慢するものではない。これらが実現すれば家計からは毎月3万6000円が浮くと試算できるし、自由時間が増える。よりよい暮らしのために力強く後押しする」と強調した。
ライフスタイルの中でも「ファッション」「住まい」「デジタルワーク」を3本柱としてフォーカス。「若者を含めた、全世代が働きやすい服装を選べるオフィス改革」を呼びかけ、「業界の皆さまと連携しサステナブル・ファッションを浸透させる」とした。ファッションについては、山田美樹環境副大臣が登壇し、モデル着用による“サステナブル・ファッション”を紹介。スーツを再構築した服やリサイクル素材の靴などを取り上げ「たとえば服を長く着ること、リペアリユースすることもサステナブル・ファッション」などと語った。
官民連携協議会には25日時点で313の地方自治体や企業が参画しており、会見では花王や楽天などから50人以上が壇上やオンラインを通じてその意気込みを語った。リストにはアーバンリサーチ、川島織物セルコン、コンデナスト・ジャパン、そごう・西武、ZOZO、JSFAなどが名前を連ねている。今後、広く参加を受け付け、11月25日をメドに第1回の実務レベルの協議会を開催。以後月一ペースで開催する。必要に応じて、衣食住・移動や資源循環などの分野やグリーンライフポイントなどの政策に応じたサブグループを設ける。またポータルサイトを開設し、アイデアなどを広く受け付ける。
「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」というネーミングは現在(仮)となっているものの、西村環境大臣と対談した小池都知事からは「副題を付けてはどうか」と揶揄され、山本一太群馬県知事からは「イケてない」とバッサリ指摘される一幕もあり、正式名称の決定が注目される。