「アディダス(ADIDAS)」は25日、カニエ・ウェスト(Kanye West)改めイェ(Ye)とのパートナーシップを解消したことを発表した。これに伴い、イェと手掛ける「イージー(YEEZY)」事業も直ちに終了する。同社はこれにより、2022年度の純利益に最大で2億5000万ユーロ(約365億円)のマイナスの影響があると予想している。
同社は、「当社は反ユダヤ主義を含め、いかなるヘイトスピーチも容認しない。イェの最近の発言や行動は憎悪に満ちた危険なものであり、到底受け入れられるものではない。多様性と包括性、相互尊重、公正という当社の価値観に反している」とコメントした。なお、このパートナーシップ契約に基づく「イージー」の既存商品などのデザイン権は全て同社が所有しており、詳細は11月9日に予定されている22年7〜9月期決算発表で公表するという。
「アディダス」とイェは15年2月に初めて協業して以来、継続してスニーカーやアパレルを発売して大きな成功を収めてきたが、ここ数週間におけるイェの“問題行動”によって「アディダス」に対する批判の声も高まっていた。イェは3日、「イージー」のショーに“White Lives Matter(白人の命も大切)”と背面にプリントされたTシャツを着用して登場。これは人種差別に抗議する“Black Lives Matter(黒人の命は大切)”に対抗して白人至上主義者が作った、ヘイトを助長するスローガンとして知られている。これによってイェは厳しく批判され、「アディダス」は6日に「『イージー』とのパートナーシップを再検討している」とコメントした。
しかし、イェはその後もLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長兼最高経営責任者のほか、元妻のキム・カーダシアン(Kim Kardashian)の家族やファッションエディターらに対する暴言や、反ユダヤ主義的な発言などをソーシャルメディアに投稿。こうしたことから、「アディダス」の不買運動や、イェとのパートナーシップ解消を求める署名運動などが起きていた。
なお、やはりイェと協業していた「バレンシアガ(BALENCIAGA)」も関係を解消している。同ブランドの親会社であるケリング(KERING)が20日に開催した2022年7~9月期の決算説明会の席上で、米「WWD」がイェに関する質問をしたことで明らかとなった。