スタートアップ企業を中心に始まったフェムテックムーブメント。昨年には、ファーストリテイリングなど大手企業も参入し、「フェムテック」が新語・流行語大賞にノミネートされるなど一般認知も拡大した。女性の生活を豊かにするフェムテック商材に親和性を見いだし参加を決めたアパレル・ビューティ企業は多いが、例えば吸水ショーツ市場はすでに飽和状態。これまで個人の問題として捉えられていた体の不調を口に出し、ソリューションを求めていく土壌が整った今、各社独自の強みを生かし新たな選択肢を提案できるのか。2012年から女性のヘルスケア領域に特化した業界分析を行うウーマンズの阿部エリナ社長に、今後の市場予想や企業が気をつけるべきポイントを聞いた。(この記事はWWDジャパン2022年10月24日号からの抜粋に加筆をしています)
WWDJAPAN(以下、WWD):直近の市場の動きをどう見ている?
阿部エリナ・ウーマンズ社長(以下、阿部):今年に入り大手企業の参入が一気に増加しソリューションの幅が広がった。だが、海外と比較すると生理・妊娠出産・更年期・セクシャルといった、バストやデリケートゾーン周りに関するいわゆるビキニ医療のカテゴリーに偏っている点が課題だ。例えば、男女共通疾患であっても女性の発症率が高いもの、女性の病態の方が深刻なものなど、本来女性の健康課題は多様であることが見落とされている。
WWD:矢野経済研究所によると、2021年時点での日本のフェムテックおよびフェムケア市場の規模は約635億円を見込む。今後も市場の成長は期待できる?
阿部:メディアの報道は落ち着くだろうが、市場規模としては今後も拡大を続けるはずだ。実はフェムテックに参入してもマネタイズに苦戦している企業は多い。すでに撤退した企業もある。しかし、一般生活者に浸透するのはまさにこれからなので、苦戦している企業もあと1年踏ん張れば堅調に市場の伸びを感じられるだろう。ちょうど当社が企画し800社以上から参加があったイベントでアンケートを実施したところ、「参入して売り上げが好調」と回答したのは約0.8%。「参入したいが検討中」は約70%だった。これからさらにプレーヤーが増える可能性は十分ある。
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