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連載 進化する幸せ産業

花火に干物、波に揺られるカラ桶etc.、多彩な熱海を味わう「星野リゾート リゾナーレ熱海」【ウィズコロナで進化する幸せ産業】

 東海道新幹線で東京駅から約40分と、都心からのアクセスもいい熱海。バブル以降、衰退したものの、コロナ禍前には“熱海の奇跡”と呼ばれるV字回復で注目された。コロナ禍や伊豆山土石流災害の影響に苦しんだが、首都圏からの集客が好調で、静岡県熱海市は2021年度の市内宿泊者数は170万人以上と、前年度比14.3%増と発表した。

 熱海は昭和の雰囲気を残した観光ホテルなど、レトロな温泉街のイメージが強いが、逆にそれが若い世代にも受けているらしい。印象的だったのが、知人の20代の若手デザイナーが友人と楽しんだという“レトロ看板ハンティング”。フォント推しの彼女たちは、ノスタルジックな看板を探して温泉街を散策したそう。旅館のロゴ入り浴衣、レトロ喫茶のメニュー、スナックの内装など、1周まわって新鮮に感じるデザインに、至るところで遭遇する。今や国内で唯一の秘宝館も八幡山山頂に。昭和遺産は熱海のキラーコンテンツだ。

パーティー会場は波の上
カラ桶で楽しむ熱海の夕べ

 熱海には、レトロ文化や温泉以外にも多くのキラーコンテンツがある。それをうまく活用し、若いファミリー層の集客率を高めた「星野リゾート リゾナーレ熱海(以下、リゾナーレ熱海)」の企画力には脱帽した。どれも、「ここまでやるか!」と笑えるほどインパクトがあるのだ。中でもこの秋は、つい撮りたくなる、コンセプチュアルな舞台を設定している。

 例えば、巨大な桶型ボートでぷかぷか浮かびながら海の上で歌う“海上カラ桶”は傑作。秋の夕暮れは気温が20度弱と過ごしやすく、9月から11月28日まで毎週月曜日に開催している。熱海マリーナで相模湾を一望しつつ、海上で味わうクラフトビールは格別だ。カラ桶には最新のカラオケ機器が搭載されており、ソーシャルディスタンスを保つアウトドアというのもうれしい。実際に体験してみて、その開放感に驚いた。乗り込むとふわっと檜の香りが漂い、船内は意外と広く、ゆったりと座れて快適だった。たこのマラカス、魚型のタンバリンなど、海をモチーフにしたカラオケの定番アイテムもフォトジェニック。港や渚が登場する曲をピックアップし、約1時間の船上宴会を満喫した。カラ桶号には4人まで乗船でき、1組税込3万円。熱海マリーナを独り占めしているかのような非日常が味わえるなら、コスパも悪くない。

海の生き物のコスプレで
浜辺のハロウィンを満喫

 “家族みんなが楽しみ尽くすファミリーリゾート”が、「リゾナーレ熱海」のブランドコンセプト。10月のハロウィンシーズンは、海が見渡せる「アクティビティラウンジ」にクラゲやアンコウのランプが灯り、幻想的なライティングに変わる。イソギンチャクやチンアナゴなど、海底の生き物の装飾が施され、クマノミやウニ、タツノオトシゴなど、さまざまな仮装ウエア&グッズを自由に試せる。サメ型のバギーやウミガメの甲羅といったベビー用から、海藻やトビウオのマントなど大人用まで、どの世代でも楽しめるウエアをそろえる。サザエやウニなど親子で試せるかぶりものもある。海の生き物になりきって家族で記念撮影なども、ここならではの体験だ。金目鯛やサザエ、サクラエビなどをモチーフにした海のお化けも不定期で出没し、大人も童心に戻れる。

秋の味覚、干物になりきる
唯一無二なコンテンツも

 脂の乗った魚が多く収獲され、風が涼しくなる秋は、干物が一番おいしくなる季節。アジの干物生産量、購入量共に日本一という静岡県の干物の魅力を伝えるべく、さまざまなイベントも開催している。ホテル最上階の「ソラノビーチ Books&Cafe」では、大小さまざまな干物のオブジェが並び、130㎝の干物クッションと共に網の上で干される“干物ベッド”なるフォトスポットも登場。

 おやつ感覚で干物を味わう“3時のヒモノ”プランもユニークだ。昔ながらの“クラシック干物”とハーブやスパイスなどでアレンジした“アップデート干物”の食べ比べメニューを用意。串タイプの干物を焼き、スナック感覚で味わう。テーブルも包み紙も干物のデザインというこだわり。網の上に干物型のラスクが並んだ“干物ラスク”なる新メニューもある。 干物の風味と相性がいいブルーオーシャンハーブティーが付いて税込850円。オリジナルのティーパックもひもの型という徹底ぶりだ。

 さらに、干物に囲まれ、干物と過ごせるカラフルな“ヒモノルーム”なるコンセプチュアルな客室も登場。テラス付きなので、七輪で干物を炙るのもいい。干物のガーランドやクッションのほか、パジャマまでひれが付いた干物仕様だ。干物イベントは、11月30日までの開催。他にも、みかんの収穫を祝う“ミカンフェス”や、梅が咲く新春の“あたみ梅カフェ”など、施設内の各所で季節の味覚を楽しむ企画を今後も展開していく。

年中楽しめる花火大会を
体感できる仕掛けも満載

 熱海は、花火でも有名だ。「熱海海上花火大会」は年間を通じて開催され、今年は残り11月5日、20日、12月4日、18日、24日に実施予定だ。夏のイメージが強い花火だが、空気が澄んでくる秋や冬の花火はひときわ美しいという。また、すり鉢状の熱海の地形は、コンサートホールのような音響効果があり、迫力満点だ。

 全室オーシャンビューの「リゾナーレ熱海」は、温泉やレストラン、パブリックスペースなどからも花火を鑑賞できる。施設内の各所に花火モチーフが施され、親子でチャレンジできる「アクティビティラウンジ」のクライミングウォールも花火を模したデザインだ。

 そして、「和食ダイニング 花火」も必見。各テーブルが花火をモチーフにしたドームで囲まれ、花火の中で食事を楽しむような空間となっている。来たるクリスマスシーズンには、花火をモチーフとしたツリーやサンタクロースが登場。「ソラノビーチBook&Cafe」では、花火が打ち上がる様子を表現した“花火クリスマスパフェ”なる華やかなスイーツも提供する。食べるとパチパチと音が鳴るキャンディを使用するなど、五感で花火を感じるメニューだ。

熱海のアイコンをフル稼働
どの世代にも印象を残す心意気

 海や温泉、干物や花火など、熱海ならではのアイコンをフル稼働させることで、ブランド力を高めている「リゾナーレ熱海」。地味な干物をカラフルかつキュートな存在に仕立てたり、カラ桶を実現したするなど、「ここまでやるか!」という振り切りは、印象に残る仕掛けとなる。

 「リゾナーレ熱海」に滞在してもう一つ感心したのは、どの世代にも心地よい優しさを提供している点だ。例えば大浴場「明星の湯」は、段差が少ない浅めの浴槽で、熱すぎない。子どもや高齢者にも寄り添った設計で、大人にとっても長く過ごせる空間となっている。

 「スタジオビュッフェ もぐもぐ」をはじめ、食器も小ぶりで軽いものが多く、小さな子どもでも扱いやすい器なことに気付いた。朝食メニューのパンは全てミニサイズで、小さな手でも食べやすい。さまざまな味を試せるという点で、このサイズ感は自分にとってもうれしかった。ブッフェメニューに離乳食が並んでいたのも驚いた。

 キッズ用のプレイルームやリモートワークが可能なラウンジも、大人と子どものエリアや機能がくっきりとは区切られず、ゆるやかに共存しているので、お互いの存在がストレスにならない。樹上アスレチックや樹齢300年を超えるクスノキの上にあるツリーハウスがある「森の空中基地 くすくす」も、どの世代にもわくわくする環境だろう。

 既存の名物や旬、立地を最大限に生かし、“カラ桶”や“干物”など笑いを誘うモチーフでキラーコンテンツに進化させる。発信する側が面白がり、本気で取り組むのがよい結果につながるのか、どの装置も思いっきりイカれていて(もちろんほめ言葉)インパクト大。あらゆる層に響く“映えスポット”が、秋の熱海にはある。

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