ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。今回は半年前に開業した大型商業施設「ららぽーと福岡」の考察。九州発のららぽーととして話題を集める同施設の商圏を詳しく分析し、可能性と課題をまとめた。
4月25日に開業して半年が経った「ららぽーと福岡」を取材した機会に、これまで福岡商圏に開設された郊外SC(ショッピングセンター)とも比較して「ららぽーと流」の商圏の取り方を考察してみた。福岡は大都市圏にしては稀有なRSC(広域型ショッピングセンター)空白地帯であり、ららぽーと福岡がおいしい空白域をどこまで取り込めるか注目したい。
福岡商圏と「ららぽーと福岡」の立地
福岡市の人口は163万人だが商圏は福岡県全域(512万人)どころか新幹線アクセスで西は熊本県や長崎県、東は山口県まで1000万人超の広がりがあり、空路や海路で韓国や近隣アジア諸国とも緊密につながる国際商圏でもある。そんな超広域商圏の中核となる商業集積が天神と博多駅だが、コロナ前で前者が2400億円、後者が1200億円(JR博多シティのピークは18年の1185億円)を売り上げていた。両者の中間にはキャナルシティ博多(商業施設面積5万1542平方メートル)があって、インバウンドピーク(17年8月期)の売り上げは410億円を超えていた。
ウォーターフロントでは西区に00年10月開業のアウトレットモール、マリノアシティ福岡(同4万3260平方メートル)、中央区のシーサイドももちには18年11月開業のCSC、マークイズ福岡ももち(同4万8000平方メートル)がある。西区のCSC(中型商圏のショッピングセンター)としては06年4月開業のイオンモール福岡伊部(同3万6275平方メートル)、11年4月開業の木の葉モール橋本(同2万2000平方メートル)、東区のCSCとしては00年6月開業のゆめタウン博多(同4万8500平方メートル、増床後)、03年11月開業のイオンモール香椎浜(同3万4000平方メートル)があるが、内陸側の南区や城南区、早良区には目立ったCSCがなく、大型SCにとって狙い目の空白域になっていた。
福岡空港の東側は福岡市外でローカルの住宅地や農地が広がり、糟屋郡柏屋町には04年6月に地域初の郊外型RSC、イオンモール福岡(開業時名称はダイヤモンドシティ・ルクル、同8万3500平方メートル)が開業しているが、福岡空港に阻まれて福岡市内からの集客は限られ、東〜東南のローカル圏から集客していると思われる。東南の筑紫野市には1996年3月開業のゆめタウン筑紫野(同3万2785平方メートル)、08年12月開業のイオンモール筑紫野(同5万8700平方メートル)があって足元を抑えており、東南方向ローカルの広がりにも限界がある。
福岡商圏というと博多駅と天神、ウォーターフロントばかりが注目されるが、市内住宅地域の多くはSM(スーパーマーケット)核のNSC(近隣型ショッピングセンター)やCSCがカバーするだけで、多様な消費に応える本格的なRSCは皆無という大都市圏としては稀有な空白域だった。とりわけ居住人口に対する商業集積の薄さが指摘されるのが住居専用地域が広がる南区や城南区、早良区で、博多区南部の那珂地区に開業したららぽーと福岡は車アクセスの利点もあってこの3区域からの集客が期待できる。実際、ナビで検証してみても城南区南部、早良区中部あたりからの車アクセスは極めて良好で、都市高速環状線を使わなくても一般道で10km圏アクセスは30分を下回る。
筑紫通りに面するとはいえ最寄りのJR竹下駅からは徒歩9分、西鉄大橋駅からもバス10分(博多バスターミナルからはバス20分)という公共アクセスはやや苦しい立地だが、福岡市中央青果市場跡の再開発物件で、周辺に位置していた卸業者や食品業社の加工場や倉庫が移転した跡が次々とマンションに建て変わりつつあり、足元人口が急ピッチで増加していくというボーナスに恵まれている。
そんな立地をどう見てどんな構成を組んだのか、ららぽーと福岡の施設構成とテナント構成を見ていこう。
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