毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2022年10月31日号からの抜粋です)
本橋:これまで「外商」というワードはよく耳にしていましたが、実際にはどんな仕事ぶりなのか想像がつきませんでした。外商顧客に若い世代が増えていると聞き、30代前半の女性顧客を取材しました。外商員とLINEで連絡を取り合うなど友達感覚で、ホームパーティーのメニューなんかも気軽に相談している。しかもその情報が上質で間違いないというのなら、すごく頼れる存在ですよね。
林:昔と違って消費者に情報があるので、その上をいかないといけないからね。求められれば手に入りにくいクラシックカーやプライベートジェットの購入も手伝う。パリコレで外商顧客をアテンドする事例も紹介したけど、メゾン単位での招待はあっても、いくつものメゾンをはしごできるのは百貨店の外商ならではの得難い体験。こういうのは増えていくだろうね。
本橋:ジバンシィ ジャパン(GIVENCHY JAPAN)の佐藤考輔社長を取材しましたが、“GAISHO”はフランス本国でも認知されていて、一歩上をいくサービスをするために、ブランド側も外商と連携を深めているそうです。
林:ブランドの提案だとそのカテゴリーだけの範疇になってしまうが、百貨店は人のあらゆるシーンに関われるカテゴリーを持っている。よくライフタイムバリュー(LTV)が問われるけれど、まさにゆりかごから墓場までの関係がつくれる。富裕層とこれだけつながっているというのは、何十年もかけて関係を築いてきた結果だから、そうそう真似できない。
本橋:そうですね。百貨店の真髄は外商なんだと思いました。外商は“百貨”の品ぞろえと深い顧客理解を掛け合わせた、究極のパーソナライズサービス。この濃密なおもてなしを一般のお客さまが少しでも享受できれば、もっと多くの人が百貨店ファンになる、と期待します。
林:二極化の最たる例で、逆にこういうことができるところしか生き残れなくなってきている。江戸時代に反物をお得意さんの家まで見せに行って、信頼関係で商売をしていたのが呉服系百貨店の始まりだが、また特別な人のためのものに先祖返りしている。世の中が、貧富の差がはっきりあった江戸時代に逆戻りしているのかも。