ファッション

ウオッチ部門ディレクター、ジャン・アルノーが語る 「ルイ・ヴィトン」時計事業20年の情熱

 2022年は、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」がメゾンとして時計作りにも傾倒して、最初の本格時計コレクション“タンブール(TAMBOUR)”を発表してからちょうど20年のアニバーサリーイヤーだ。これを記念してルイ・ヴィトン渋谷メンズ店で開催された“タンブール”のエキシビションに合わせて、世界200本の限定モデル“タンブール トゥエンティ(TAMBOUR TWENTY)”の開発責任者でもあるウオッチ部門ディレクターのジャン・アルノー(Jean Arnault)が来日した。アルノー=ディレクターは、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長兼最高経営責任者(CEO)の四男。自身が初めて心引かれた時計についての思い出や、限定モデル開発の経緯、「ルイ・ヴィトン」の今後の時計事業について話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):メゾンの時計作りを率いているが、そもそも時計には興味があった?最初に心引かれた時計、時計作りに興味を持ったきっかけは?

ジャン・アルノー「ルイ・ヴィトン」ウオッチ部門ディレクター(以下、アルノー=ディレクター):心引かれた最初の時計は、ありがちな「父の時計」ではなくて、11歳の頃に父と一緒に見た時計。時計専門店で見た「ブルガリ(BVLGARI)」の“ダニエル・ロート(DANIEL ROTH)”のミニッツリピーター&オートマタモデル「イル・ジョカトーレ・ヴェネツィアーノ(ヴェネチアの勝負師)」です。

WWD:その頃の「ブルガリ」は、父親がトップを務めるLVMHの傘下になる前。加えて子どもには理解しづらい複雑機械式モデルだ。当時からこうしたハイウオッチメイキングに興味があった?

アルノー=ディレクター:「機械がどんな仕組みで『音で時刻を知らせる』『勝負師の人形の手を動かしたり、サイコロの目をランダムに変えたり、ろうそくの火をきらめかせたりできる』のだろう?」と不思議に思いました。その後、この種の時計を目にすることはありませんでしたが、こうした興味をずっと心の中に抱き続けていました。

WWD:その時は時計作りに関わるなんて思っていなかった?

アルノー=ディレクター:もちろん、まったく考えてはいませんでした。でも今は「ルイ・ヴィトン」で時計作りに関わっています。子どもの頃に「夢のよう」と思っていた時計作りに関われて、とてもうれしく思っています。

WWD:「ルイ・ヴィトン」の時計にはどんな魅力がある?

アルノー=ディレクター:逆説的な表現になりますが、歴史が20年間しかないことです。つまり時計作りにおいて、「伝統が何よりも尊重されるブランドではない」ことが最大の魅力だと考えています。だから時計作りにおいては本当にクリエイティブで冒険することができる。本当にラッキーなことだと思っています。

WWD:今回の「タンブール」誕生20周年記念モデル」“タンブール トゥエンティ”は、初めて全面的に企画・開発に関わったモデルだ。

アルノー=ディレクター:このモデルは、20年前にこの場所(ルイ・ヴィトン 表参道店)で発売したオリジナルモデルをお持ちの方や、コレクターの方に敬意を込めたものです。この製品の企画に当たって、私は20年間という時間を人間に置き換えて考えてみました。人間にとって20歳までは「学ぶ」期間。学習し、自分が必要な知識を得る期間だと思います。と同時に20歳というのは、高等教育を受けるのか?仕事をするのか?どんなキャリアを築いていくのか?を決める大きな意思決定の時期。人生のターニングポイントです。そして“タンブール”は、メゾンの時計作りの原点となった時計です。この時計の大きな節目には、どんな記念モデルがふさわしいのか?を、開発スタッフと数カ月にわたって議論を重ねました。

WWD:このモデルを節目に“タンブール”コレクションをどう進化させたい?

アルノー=ディレクター:このコレクションは、本当に目を引くデザインです。好き嫌いははっきり分かれますが、良いデザインというのはそういうもの。02年以降製品化し続けているのは素晴らしいことです。この20年間でトゥールビヨンからミニッツリピーターまで、さまざまなモデルを開発、発売できました。これから先も、さらに素晴らしい時計作りを進めるつもりです。

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