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ゴールドウインが型紙改良で廃棄量3分の1へ 慶大発シンフラックスと協働 

 ゴールドウインは11月4日、製造工程の廃棄削減に向けた新たなプロジェクト「シン・グリッド(SYN-GRID)」を発表した。慶大発のスタートアップ企業シンフラックス(Synflux)と協働し、同社が持つ独自のパターンメイキング技術「アルゴリズミック クチュール(Algorithmic Couture)」を応用する。「アルゴリズミック・クチュール」はAI(人工知能)とアルゴリズムを活用して衣服生産時に排出される素材の廃棄を極小化するためのデザインシステム。衣料の生産工程で廃棄される繊維は利用される量の約15%と言われており、シンフラックスはその削減に向けた技術開発に取り組む。

 「シン・グリッド」によって生産工程の廃棄量が従来の3分の1程度になったという「ニュートラルワークス.(NEUTRALWORKS.)」のフリースのクルーとボトムを11月8日に、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」の防水透湿素材のシェルジャケットを11月18日に発売する。今後、ゴールドウインが手掛ける全ブランドのウエアでの導入も検討していく。

 「アルゴリズミック・クチュール」は開発当初、廃棄量は格段に減らすことができるものの、切り替えや縫製箇所が増えるなどの課題があった。今回、新たに縫製できるパーツ数の上限や切り替えし線を調整する機能をシステムに導入。量産可能な工業用パターンを実現した。

 シンフラックスと2年前から協働する大坪岳人ニュートラルワークス事業部長はプロジェクト始動の理由を「昨今のいわゆる“SDGs”的な取り組みのほとんどが、CO2削減のために材料をリサイクルに置き換えたり、染料を変えたり、何かを回収したりするといった施策だ。材料をエコなものに変えたとしてもそもそも作る過程でたくさん捨てているという事実がある。端端で出た生地を捨てずに再利用する流れも出てきているが、そもそも廃棄を削減するためにはどうしたら良いかを考えるためにパターンに着目した」という。

 大坪部長は「アルゴリズミック・クチュール」の優位性を「A Iやコンピューターによって計算され、人が考えるよりも遥かに早いスピードで合理的に無駄を削減することができる」というが、一方で課題も指摘する。「服はパズルではない。誰一人として同じ体型がいない中でいろんな人たちが着用することを前提に設計するために、ドレープやカーブといった廃棄をなくす視点で見ると非合理的な線や人間の感性も必要になる。スポーツアパレルの場合は動いている時のことも考えなければいけない。そこはまだデジタルだけでは解決できない」という。

 2年をかけて実用化に至った。「結果的にはデジタルとフィジカル(ゴールドウインのパタンナーによるパターン)を何度も行き来して、今回の商品ができた。服が人間の動きや生活にフィットする必要があるので、まだまだ人間的なフィジカルなモノ作りも必要でもある。時間はかかるが今回かなり学習できたので、次はまた2年後ということではない(笑)」と語った。

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