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「ベアミネラル」新社長が語るブランド復調へのプラン 「やるべきことを積み上げれば来年度40%増は可能」

 元レブロン(REVLON)社長の菅野沙織氏は、2月に同社を退社後、8月3日付でクリーンビューティブランド「ベアミネラル(BAREMINEARALS)」を輸入販売するベアエッセンシャル社長兼オルヴェオングローバル(Orveon Gloval)日本地区担当ゼネラル・マネージャーに就いた。「ベアミネラル」のほか、「ローラ メルシエ(LAURA MERCIER)」「バクサム(BUXOM)」のブランド統括も務める。

 3ブランドは、前保有者の資生堂が不採算事業の整理の一環で、21年に米国の投資ファンドのアドベント・インターナショナル(ADVENT INTERNATIONAL)」に売却。同ファンドは3ブランドを擁する新会社、オルヴェオンを設立していた。菅野新社長に、就任までの経緯と今後の戦略を聞いた。

WWD:前職のレブロンを辞めてベアエッセンシャル社長に就任するまでの経緯は?

菅野沙織ベアエッセンシャル社長兼オルヴェオン グローバル日本地区担当ゼネラル・マネージャー(以下、菅野):レブロンで社長を10年以上勤め、コロナ前までは売り上げも好調でリップクリームをヒットさせたり “V字回復”と言っていただくことも多かったり、いろいろな努力の結果が出てやりきった感がありました。「レブロン」はマスマーケットで展開していましたが、その前は「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」でプレステージやエステティックにも携わり、幅広いチャネルも経験できました。年齢も考えてそろそろ引退しようと決めたのが昨年6月で、諸々の調整がついて2月末に社長の職を離れました。

WWD:引退後に何かプランが?

菅野:実は2年前に結婚して、夫とお互いが元気なうちに旅行したり、たまには料理をしてあげたり、そろそろスローライフを送りたいと思って。レブロンの社長を辞めた後も上級顧問として週に何度かはお手伝いをしていて、そんな矢先にオルヴェオンから声が掛かりました。引退と決めて、若い頃からの上司がたくさんいますからお礼のメッセージを送ったら、オルヴェオンのナンバー2のポジションにいる昔の上司から「日本を強化するからちょっと待て」と言われて。そこから「ベアミネラル」や「ローラメルシエ」の店舗を見て回りました。

WWD:最終的にベアエッセンシャルの社長を引き受けた決め手は?

菅野:2017年から輸入化粧品協会の理事長を務めているのですが、クリーンビューティは化粧品業界としてこれから考えていかないといけない方向性だと感じていたところに届いた話だったので、「これは使命かしら」と思って。そこから何回かオルヴェオンの面接を受けて非常に話が合ったので、化粧品人生の最後にやるべきことと思って決めました。「ベアミネラル」は何十年も前からミネラルを使った地球と肌に優しい化粧品、クリーンビューティを発信してきましたが、コロナをきっかけに消費者の意識が地球や体に安全なものに向かっている今がやっとスタートポイントではないかと。新しいカテゴリーをつくりたいというわけではなく、「ベアミネラル」が元々持っている考え方や理念を広めたいと思ったんです。きっちりやれば大きな波になるし、それは地球にとっても人にとってもいいことなので、ささやかながら尽力したいと。

いかに早くブランド認知度を
改善するかが使命

WWD:ベアエッセンシャルでのご自身のミッションについてどう考えているか?

菅野:「ベアミネラル」は、かつてQVCで販売していた頃はテレビの力もあって高い認知度がありました。最近は新製品の開発が少なく、いいアイデアも寝かされていた面があります。それを掘り起こすのが私の仕事なので、本国と共に新製品の開発や投資も考えていくし、ブランディングももう一度考え直そうと。「ベアミネラル」は40カ国近くで展開していますが、日本はアジアのキーカントリーで、もう一度マーケットシェアを上げるのが最大のミッション。それからブランドの素晴らしい製品や理念を伝え、お客さまとのタッチポイントを増やし、認知度を取り戻して売り上げを上げることです。「ローラメルシエ」に関しては、全体的な売り上げの管理や承認事項は当社の管轄ですが、マーケティングや営業活動などはディストリビューター契約を結んでいる資生堂が行います。

WWD:改めて「ベアミネラル」の特徴は?

菅野:クリーンビューティの元祖とも言えるサンフランシスコ発ミネラルコスメブランドで、日本では売り上げの50%弱をファンデーションが占めています。次いでスキンケアが約25%、カラーコスメが約15%、残りがブラシなどのツール。90%以上の製品がビーガンである点も特徴です。ミネラルで肌に優しいだけでなく、パッケージにおける環境配慮、残布を使ってポーチを作ったり、寄付をしたり、SDGsが重要視されるずっと前からさまざまな取り組みをしてきました。ですが、売っているものはビューティなので、発色の良さやアーティストがおすすめできる仕上がりの良さ、感触やテクスチャーの良さ、メイクアップとしての美しさが最大の特徴です。

WWD:ブランディングを練り直しているとの話があったが、新たなターゲットは?

菅野:クリーンビューティに共感する人はもちろんですが、アクティブな人という顧客像が見えてきています。ビーガンやナチュラル、オーガニックって地味にしてしまいがちなんですが、そういうマインドの人ってヨガやピラティスをしたり健康に気をつけて食べ物に気を使ったり、すごくおしゃれなウェアを着て沖縄にリトリートに行ったりしますよね。そうした素敵なライフスタイルの中でメイクを楽しむ人がターゲットなんじゃないかと。肌に優しい製品だから「敏感肌の人のための」とか考えてしまいがちですが、香りがないから男性も使いやすいとか肌に優しいから子どもも使えるとか、ターゲットは広がるんですよね。ヘルシーにアクティブに暮らす人全てがターゲットだと思うので、狭いアプローチはもうしません。

本国チームにカラーコスメの
開発でリクエスト

WWD:現状、ファンデーションの売り上げシェアが最も高いとのことだが、商品構成は今後変えるか?

菅野:本国ではファンデーションが中心になっていますが、日本で直近で売れているのはハイライターやチークです。こうした商品は遊び心がありますよね。ファンデーションだけではどうしても地味。ファンデーションと色ものの役割をきっちり考えてほしいと本国に伝えています。新客を獲得できる面白い商品を作ってほしいという話もしました。商品がただあるだけではダメで、使いたい理由をはっきりさせなければいけない。色がいいのか、質がいいのか。色ものに関してはストーリーをきちんと作ってほしいというリクエストを開発チームにしています。そうした商品をバスらせるのは私たちの仕事です。

WWD:チャネル別の売り上げシェアは?

菅野:「ベアミネラル」は自社ECがとても強く、売り上げの45%程度を占めています。55%が実店舗で、百貨店が13店、高級セルフ・セミセルフが65店です。ここ数カ月は新製品が当たっているのもあり、百貨店の売り上げが伸びてきています。

WWD:ECが圧倒的に強い中、新規出店は考えているか?

菅野:ブランドの認知度をいかに早く改善するかを考えたとき、ある程度の投資や取り組みが必要です。百貨店に関しては店舗数を広げるのは簡単ではないため、店舗ごとの売り上げをいかに早く上げるかに集中しようと思っています。それは販売や接客力という話ではなく、マーケティングやPRがブランドの認知度を上げていかに新客を店頭に誘引できるかになります。来年は新製品も増えるのでそこに注力します。高級セルフ・セミセルフショップに関しても既存店の売り上げを上げるのがまず1番にやること。販売員が常駐できない分、ディスプレーだけで魅力を伝えなくてはいけません。新規出店でいうと、来年はまず大型都市のトラフィックが多いところを狙って最大10店舗を目指して増やしていきたいと考えています。

WWD:ECについて、自社サイト以外の戦略は?

菅野:一部百貨店のECや「アットコスメショッピング(@COSME SHOPPING)」などもありますが、ほぼ自社サイトの売り上げというのが現状です。先日、アマゾンとアイスタイルの協業の話もありましたが、アマゾンもZOZOもビューティ志向になっているので、そうした大型の適切なプラトフォームにきちっと入って、ブランドの認知度を上げていくことが非常に重要だと考えています。バナー広告なども目にする機会が増える仕組みにしないとスピード感を持って認知度を上げられないので、それは来年実行します。

WWD:来年度の売り上げ目標は?

菅野:今年に対して40%増で考えています。ここ数年低迷気味でしたが、来年は新製品も多く、百貨店、セミセルフ、ECとそれぞれの戦略がはっきりしているので、それを積み上げたら可能だと思っています。まだまだ取り組みたいことがあるので、24年末には今年に対して2倍の売上高を目指します。

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