ファッション

古川優香や宇野実彩子監修の深度のあるD2Cコスメブランド開発で相次ぎヒットを飛ばすダイレクトテック “売れる”D2Cコスメブランドの立ち上げ支援を開始した狙いとは?

 D2C(Direct to Consumer)事業を得意とするダイレクトテックは、モデルやアーティスト、動画クリエーターなどを起用したD2Cコスメブランドなどを相次いで立ち上げ、ヒットを飛ばしている。7月には成功実績をもとにした独自メソッドを提供し“売れる”D2Cコスメブランドの立ち上げを支援するサービス「ディーツーシーギャラリー(D2C GALLERY)」を開始。同ギャラリーを活用したブランド開発も進み、同社の動向に注目が集まっている。堀ノ内丈史ダイレクトテック取締役にD2Cブランドの可能性を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):D2CやP2C(Person to Consumer)のコスメブランドがZ世代を中心に話題となり実績を積んでいる。

堀ノ内丈史ダイレクトテック取締役(以下、堀ノ内):当社はD2C事業を中心に手掛ける企業として2018年11月に立ち上がりました。最初に手掛けたのはファッションモデルの古川優香さんが監修したコスメブランド「リカフロッシュ(RICAFROSH)」です。古川さんはコスメブランドを手掛けたいと協業先を探していて、当社を含め4社によるコンペティションがありました。当社はベクトルの子会社であるため、PR業務も含め対応できるとして選ばれました。

WWD:「リカフロッシュ」は初年度から好調だったがその要因は。

堀ノ内:他社でも同様のビジネスモデルはありますが、一過性で終わるケースが少なくありません。古川さんは最初からプロダクトへの熱量が高かったんです。“落ちにくい”をキーワードに、リップの開発に1年以上かかりました。ティント効果を強めると唇が荒れてしまうのでそのバランスに苦労しましたね。「リカフロッシュ」は20年2月にデビューし、第1弾アイテムの“ジューシーリブティント”は塗った瞬間の美しさが持続し、得意とするニュアンスカラーが絶妙でマスクにも色移りしにくいと高い支持を得ました。製品力の高さに加え、古川さんはフォロワーとの相互コミュニケーションも大切にするので、深度のあるブランド体験を提供できたことも奏功しました。初回の生産量は4色で1万を超える個数でしたが、EC、店舗とも3カ月後には品薄に。生産が追いつかないうれしい悲鳴をあげました。初年度は想定の5倍の売り上げを達成。2年目も順調に推移しています。ブランドを代表する製品になったリップティントのほか、マルチパレットやマスカラ、グリッターなどアイテムを拡大し、シリーズ累計販売数120万個(22年9月時点)を突破しました。

WWD:2番目のブランドはアパレルで、その後コスメブランドが続いた。それぞれの狙いと反応は。

堀ノ内:人気ユーチューバーのかすがプロデュースしたアパレルブランド「ボカニー(BOKA NII)」を21年3月に立ち上げました。1万円以内で購入できるレトロカジュアルなウエアをそろえ、初日に6000万円以上売り上げました。ユーチューバープロデュースのアパレルブランドの初日売り上げ記録も更新しました。今年1月にはデザインコンサルティングファームのアナイスカンパニーとタッグを組み、AAA(トリプル・エー)メンバーの宇野実彩子がプロデュースするコスメブランド「ユーチュー(U/CHOO)」をスタート。彼女のマネージャーと親交があり、コスメをプロデュースしたいと本人が希望していると聞きブランド作りが始まりました。彼女はアーティストなので、ライブ中でも“超絶落ちにくい”をコンセプトにアイシャドウやリップティントなどを展開。目元用のグリッターも用意し、初月に15万個を販売。5カ月で40万個を突破しました。スタートは公式ECサイトで販売しましたが、多くの人に手に取ってほしいとバラエティーショップやドラッグストアなど販売網を広げ、現在は店舗売り上げが70%以上を占めています。

発売初日に1万個が完売

WWD:1月には美容系ユーチューバーのマリリンによる「ヴィム ビューティー(VIM BEAUTY)」も発売した。自身のユーチューブでもハウツー動画などを配信し大きな反響を得た。

堀ノ内:「ヴィム ビューティー」は当社初のベースメイクアイテムでした。クッションファンデーションとコンシーラーがセットになった2in1の“エフェクト ライク フィニッシュ ファンデーション キット”は公式ECサイトのみで販売し、初回生産分の1万個が即日完売しました。「高いキープ力・プロ級の仕上がり・使いやすさ」にこだわり、そばかすやほくろ、肌トラブルをカバーするためこれまでたくさんのファンデーションを試してきたマリリンが、誰でも簡単に使える、崩れにくいクッションファンデーションを作りたいという思いから開発したものでした。

WWD:手掛ける全ブランドが想定を上回る実績を残している。

堀ノ内:D2Cブランドを手掛ける中で大切なのは、誰に届けるかということです。ただ単に話題のインフルエンサーと組めばいいわけではなく、その人が発信する上で最適なアイテムであるか、価格設定は適正かなどさまざな検証が必要です。インフルエンサーやクリエーターはブランド作りのプロではないため、ブランディングやコミュニケーション設計をサポートするのが重要。コンシューマーから納得感が得られることが大切なんです。愛され続けるブランドを育成する指標として、当社では年間購入回数のKPIを立てています。リピート率が重要で「リカフロッシュ」はEC売り上げの70%がリピート客によるものです。

D2Cのプラットフォームを構築

WWD:こうした成功事例をもとに、D2Cコスメブランドの立ち上げを支援するサービス「ディーツーシーギャラリー」が始まっている。同サービスは自らライバル会社を作り出すことになるのでは?

堀ノ内:当社にはこれまでの成功や失敗のナレッジや事例が数多くあります。コンサルティングするのではなくロジックなども伝えていて、非常に問い合わせが多いですね。現在、2つのコスメブランドのプロジェクトが進んでいます。D2CやP2C市場は注目を集めていますが、市場規模は小さい。市場全体を拡大するには1社だけでは難しいため、参入企業を増やす狙いもあります。

WWD:今後さらに成長するため必要なことは。

堀ノ内:D2Cブランドからコンシューマーブランドへのスイッチングが課題です。それには販路の拡大は必須です。また、インフルエンサーなどがプロデュースするブランドは、その人が年齢を重ねると、当初のコンセプトに見合った商品作りが難しくなります。時流に沿ってブランドも成長し、息の長いブランド作りをともに手掛ける必要がありますね。今期(23年2月期)の売上高は初年度と比べて3倍の20億円を見込んでいます。2年後には取り扱いブランドを8に、「ディーツーシーギャラリー」で25ブランド程度を扱い、売上高50億円を目指します。将来的にはD2C、P2Cブランドのプラットフォームを構築し、世界に通用するブランドを育成して日本のクリエーターで経済圏を広げたいですね。

PHOTOS:SHUHEI SHINE

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