第二次世界大戦後に生まれたベビーブーム世代の後、1965~80年ごろに生まれた世代を指すX世代。金融テクノロジー企業のスマート・アセットによると、X世代の支出額はベビーブーム世代より44%、Z世代より18%多く、他の全ての世代より経済に貢献していると言う。何かとZ世代に対する言及が多い今、ここでは、X世代女性のニーズに向き合うことで見えてくるビューティ業界の可能性を考える。(この記事はWWDジャパン2022年11月7日号からの抜粋です)
X世代の女性の生き方を表す特徴の1つとして、幅広い職種で活躍し、1つの現場にとどまらない多様性を持っていることが挙げられる。これをスタイリスト兼ファッションコンサルタントのステイシー・ロンドンは「私たち世代はみんな“マルチハイフネーター(複数の仕事を持つ人のこと。複数の職業名をハイフンでつなぐことからつけられた名称)”だ」と語る。ベビーブーム世代の両親の介護などをしながら、ミレニアルからアルファ世代(アメリカや英語圏で概ね1980~2020年代)の子どもを経済的に支えているのが現状だ。実際、ミレニアル世代の64%は親から経済的支援を受けているという。さらにスマート・アセットによれば、パンデミック期間中にX世代の純資産は50%増加したが、これはどの世代よりも高い数字となっており、消費者としてアメリカに住む50歳以上の女性は、15兆ドル(約2200兆円)の購買力を持っていると算出されている。
ほかにも、この世代の特徴としてテクノロジーの進化とともに育ってきたことがある。オンライン診察やアプリでの買い物にも慣れていて、デジタルへの抵抗がないことから、オンラインショッピングも使いこなすなど適応能力は高い。
マーケティングの落とし穴
このように、上下の世代を支える豊かな経済力を持ち、活動的で、デジタル化にもうまく対応してきたX世代。それにもかかわらず、同世代をターゲットにしているマーケティングは5%にも満たない。
実際、市場調査会社ニールセンの21年の報告では、50歳以上の女性のテレビでの露出はわずか8%で、その中でも大半は母親役などの家にいる存在か、補佐的な役割としてしか描かれていないという。メディアにおけるジェンダー表現を研究するジーナ・デイビス・インスティチュートの20年のレポートでは、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどで製作された19年のヒット映画を分析した結果、50歳以上の女性は50歳以上の男性に比べ、老けていて体の弱い存在として表現されていたケースが4倍以上高かった。またオシャレに気を使わず、流行遅れのファッションを着ている確率も4倍高かった。調査対象となった全映画のほぼ半数が50歳以上の女性キャラクターを否定的かつステレオタイプな役柄で登場させており、29%の映画には50歳以上の女性が全く登場しなかった。その中でも登場する女性の数は、圧倒的に白人が多く、常にシスジェンダーだった。この研究では、「50歳以上のレズビアンとトランス女性は映画から完全に消去されている」と報告されている。
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