連載企画「WWDJAPAN ビューティ」お悩み相談室」では、SNSのアンケート機能を用いて「WWDJAPAN」フォロワーに現在のビューティに関する悩みをヒアリング。読者のリアルな疑問や悩みをビューティストたちに解決してもらいます。2回目は、何度も繰り返すしつこい“大人ニキビ”について。相澤皮フ科クリニックの相澤浩院長に、大人ニキビの原因や対策、治療法について話を聞いた。
――大人ニキビと思春期ニキビの違いはありますか?
相澤浩・相澤皮フ科クリニック院長(以下、相澤):ニキビの種類は「大人ニキビ」と「思春期ニキビ」に大きく分かれます。個人差はありますが、大人ニキビは20歳以上(欧米では25歳以上)で発症するニキビ、思春期ニキビは9~10歳くらいから発症するニキビを指します。また、両方とも発症原因も異なり、大人ニキビは精神的ストレスによって男性ホルモンが増加し毛穴詰まりが起こります。一方、思春期ニキビは女性ホルモンや男性ホルモンにより皮脂が増えて毛穴が詰まり、ニキビになります。発症する部位も異なり、大人ニキビは皮脂が少ないUゾーン(フェイスライン)に表れる人が多く、思春期ニキビは皮脂の多いTゾーン(おでこ~鼻)が中心です。原因が全く異なるので、思春期ニキビができやすい人は大人ニキビもできやすいということはありません。
――大人ニキビの男女比は?
相澤:男性ホルモンの増加が関係しているため、大人ニキビに悩むのは女性が圧倒的に多いです。以前は当院に来院する95%は女性でしたね。ただ、近年は睡眠不足やストレスの増加により男性の来院も増えて全体の30%ほどを占めています。髭脱毛など男性の美容意識向上から、大人ニキビ診療へのハードルが低くなっていることも影響していますね。余談ですが、思春期ニキビ治療のために母親が高校生の息子を連れて来院するケースも増えています。ニキビ跡が残ると、就職時の面接で不利になるのではないかなど気がかりだそうです。
――大人ニキビの一般的な治療法は?
相澤:オーソドックスな治療法は、以前は低用量ピルを中心として抗男性ホルモン治療を行っていました。あとは漢方薬、血圧を下げる効果のあるスピロラクトン錠、弱い女性ホルモンの薬を使用するなど。美容外科によってはビタミンAの一種であるイソトレチノインやビタミンA誘導体の経口薬・アキュテインを処方される場合もありますが、重大な健康被害のおそれがあるため、おすすめはできません。大人ニキビは体に負担をかけずに治療できることが分かってきたため、当院では漢方薬にプラスして男性ホルモン受容体拮抗作用を持つスピロノラクトンなど擬似ホルモン療法を組み合わせた、体に優しい治療を行っています。効果はゆっくりではありますが、体質改善も促せます。
保湿成分の入っているスキンケアが大事
――忙しくてクリニックに行けないときの応急処置はありますか?
相澤:大事なのは日々のスキンケアです。大人ニキビのケアで心掛けてほしいのは保湿成分の入っているスキンケアを使うこと。通常はしっとり感のある保湿系ローションに乳液、クリームなどの合わせ使いで良いでしょう。「クリームなどの油分はニキビに良くないのでは」と思っている人もいますが、それは誤解。ぜひ積極的に組み合わせてください。 バーム状の保湿剤は水分蒸発を防ぐという目的で最後に使用するのは良いですが、水をほぼ含まないので保湿目的には向かないと思います。赤ニキビやニキビ痕の色素沈着にはビタミンC誘導体やナイアシンアミドのスキンケアが有効です。ただし、ビタミンC誘導体やナイアシンアミドは一時的な乾燥を引き起こすためTゾーンにはしっかりと、Uゾーンには薄く塗布して上から乳液やクリームで蓋をしてあげるといいですね。また、スキンケアを一切しない「肌断食」という言葉もありますが、それは逆効果です。フェイスパックは、剥がすタイプのものは肌に刺激を与えるので避けてください。ニキビパッチは密閉療法で肌の水分を逃さない役割があり、おすすめします。「ニキビパッチはニキビ菌が繁殖する」というイメージを持たれている人もいるようですが、そのようなことはありません。
――大人ニキビの予防法、また避けてほしいケアや生活習慣を教えてください。
相澤:大人ニキビの一番の原因は「乾燥」です。保湿ケアをしっかりと行うことが一番の予防法です。乾燥の原因として男性ホルモンが増加し、角層を乾燥させることが挙げられます。 ストレスを溜めると男性ホルモンも増加しますので、睡眠やお風呂でのリラックスタイムを大切にしましょう。 まずは1時間でも多く睡眠をとること。質の良い睡眠をとることは成長ホルモンが出て肌の修復力を高めます。食事に関しては、甘い物や炭水化物をそこまで気にする必要はなく、個人差はありますが、食べ過ぎなければ影響はほとんどありません。ただし、遅い時間の夕食やおやつはおすすめしません。 血糖が上昇すると、血糖を下げるためインスリンが分泌されます。インスリンは男性ホルモン作用を強くする働きがあるためニキビができてしまいます。 また、インスリン分泌は夜遅くなると多くなり、高血糖になると皮膚のバリア機能を上げる成長ホルモン分泌を減らします。
――大人ニキビができたときは早めにクリニックで受診するのが望ましいですね。
相澤:その通りです。ただし、日本皮膚科学会から認定された皮膚科専門医を受診するのがおすすめです。よく目にする皮膚科や皮膚専門などは、皮膚科専門の先生ではなく、例えば内科の先生が皮膚科研修を受けないで標榜されているケースがあります。大人ニキビと一言でいっても、人によって赤みの色の違いや範囲、ぶつぶつがある人とない人、大きさの違い、跡だけが残る人などさまざまです。私は1987年からニキビ治療一本で約50万人のデータを見ていますが、治療は単純じゃないと日々実感しています。大人ニキビにも数種類あることが分かってきたため、顔面のパーツごとにフォーカスした治療を日々進行中です。
「WWDJAPAN」編集部がおすすめするスキンケア
「アクネスラボ」の“ベーシックライン”
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弱酸性のアミノ酸系洗浄成分を使用している、大人ニキビに対応したスキンケアシリーズ。いずれも合成香料・着色料・鉱物油・パラベン不使用で、皮脂のバランスを整えて繰り返すニキビやトラブル肌をケアして健やかに導く。集中ケアアイテムとしてスポッツクリームや夜用ポイントパッチもラインアップする。
「エトヴォス」の“バランシングVCクリアスポッツ”
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石油系界面活性剤、鉱物油、シリコン、タール系色素、合成香料、パラベン不使用のジェル状美容液。アゼライン酸誘導体や保湿系ビタミンCなどを配合し、保湿しながらキメの整った肌に導く。オイルフリーで透明ジェルのため朝晩のスキンケアはもちろん、メイクの上からも使用できる。
「ノブ」の“モイスチュアクリーム”
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ニキビ肌をやさしくケアするスキンケアシリーズ“ACシリーズ”の保湿クリーム。保湿成分を配合し、乾燥を防いで潤いのバランスを整える。クレンジングジェル、ウォッシングフォーム、フェイスローション、モイスチュアジェルもそろえ、シリーズ全品が無香料、無着色、低刺激性の仕上がり。
「ファンケル」の“アクネケアライン”
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肌の不調や繰り返しできる大人ニキビに関与している“ゆさぶり因子”に着目したスキンケアライン。全アイテムに有効成分として「甘草成分誘導体」を配合したほか、“エッセンス”にはトラネキサム酸を含んで肌荒れや肌のゆらぎを防いで大人ニキビを予防する。また、セージエキスやウメ果実エキス保湿成分が健やかな肌に導く。