東京・下北沢が連日、盛況だ。「リロード(RELOAD)」や「ミカン(MIKAN)下北」といった商業施設を小田急、京王両電鉄がオープンしたこともあり、駅周辺に人が絶えない。観光地化もしている印象だが、買い物率も引き続き高い。
一方で、下北沢に10店舗以上を構える古着店の社長は、「駅前物件はとにかく人気で、空きがない。仮にあったとしても、文字通りの争奪戦だ」と話す。それもあって、「これからはこだわり派の“大人層”に向けて、より外側に商圏が広がるだろう。当社も駐車場や飲食店を併設した店舗を考えている。そこでは年々価格が上昇する“トゥルービンテージ”も並べる予定だ」と続ける。飽和状態ともいえる中心地(駅周辺)から、波紋のように店舗が広がる様は、なるほど容易に想像できる。
さて、ここである若者の挑戦を紹介したい。
京王線で下北沢の一つ隣の池ノ上駅近くに11月12日、「フリー(FOLLIEE.)」という店舗をオープンする末永竜介オーナー(29歳)だ。大学卒業後、古着卸の会社で4年間修行を積み、その後実家(仙台)のラーメン店で働いて資金を貯め、独立する。
フリーが入居するのは生花店だった築56年の2階建て物件で、店舗面積は約30m²。壁に漆喰、床にペンキを塗り、ロッジ風の外壁や2階の出窓はそのまま生かした。池ノ上駅からは徒歩1分で、下北沢駅からも同8分だ。
なぜ池ノ上なのか?と問うと、「下北沢は古着店も人も多過ぎる。自分がイタリアやフランス、アメリカで買い付けた1940〜70年代の古着について、1点ずつきちんと“ストーリー”を話したいし、そのためには滞在時間も長くしたい。フィッティングもゆっくりしてほしい。だから中心地から少しステップバックする必要があった」と答える。「腰を落ち着かせてもらいたくて」と、青林製作所の椅子も2脚置く。
物件の決め手については、「建物そのものに味がある、古い物件と決めていた。当初は、台東区など下町で探していたがなかなか見つからず、そんな折、知人の古着店オーナーに『池ノ上に空き物件が出てるぞ』と教えてもらった」という。
フリーのラインアップは、古着が9割。色・柄の豊富さが特徴だ。末永オーナーは、「間もなく国内ブランド『ユウヤモリベ(YUYAMORIBE)』に別注したブルゾン(予価4万5000円)が入荷する」と話す。60〜70年代のアメリカのビンテージの柄物ラグをリメークしたものだという。また近い将来として、「古着6割、セレクト4割を目指す。尾州(愛知県一宮市を中心としたエリア)など、地場産業とリンクしたブランドに興味がある」と述べる。
池ノ上は、駅を中心に南北に商店街が伸びる小さな街だ。古くからの個人商店も多く、近くに小学校もあって、フリーの前を多くのランドセルがにぎやかな声と共に下校する。ファッション関連の店舗はまだ皆無だが、隠れ家的な飲食店にファッションおよびビューティ業界人が通うなど、“下北沢のその先”として盛り上がるべき素地は備える。そして、その一端を握るのが20代の若きオーナーというわけだ。
次の土日も東京は秋晴れの予報だ。訳知り顔の業界の中堅・ベテランにも、下北沢から散歩がてら足を伸ばしてみるのをお勧めしたい。
■フリー
オープン日:11月12日
時間:月〜金曜日 13:00〜21:00 / 土・日・祝日 12:00〜20:00
定休日:無休
住所:東京都世田谷区代沢2-42-8