ファッション

仏発ジュエラー「ブシュロン」の挑戦 産業廃棄物の再生素材をジュエリーに

 フランス・パリ発ジュエラー「ブシュロン」は、革新的な素材を用いたクリエイティブなジュエリーで知られている。その取り組みはサステナビリティまで多岐にわたる。今年は 産業廃棄物をアップサイクルした素材によるカプセルコレクション“ジャック ドゥ ブシュロン ウルティム”を発表。来年には銀座旗艦店の移転も予定している。コロナ後初めて来日したエレーヌ・プリ=デュケン=ブシュロン最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。 (この記事は「WWDJAPAN」11月7日号からの転載です)

 来日は2019年以来だ。日本のスタッフと会うために来日し、来年銀座中央通りにオープンする旗艦店の視察もしてきた」とブシュロンのエレーヌ・プリ=デュケン CEOは話す。新型コロナが落ち着きつつあり、来日を決定した。コロナ禍とポストコロナの商況は 世界的に活況だ。コロナ禍では渡航の制限などがあり、各国のローカル市場にフォーカスした 活動を余儀なくされたこともあり、各市場の消費が伸びた。「リベンジ消費による高額品の需要な度が増えて、全ての市場で売り上げが大幅に伸びた。 特にファインジュエリーやハイジュエリーが好調だ」とプリ=デュケンCEO。「ブシュロン」では、年2 回ハイジュエリーを発表する。1月はアーカイブなど過去の作品を再解釈したクラシックなもので、7月は、革新的な素材や技術を用いたコレクションだ。

 「1月と7月の顧客は全く違うタイプだ。1月のコレクションは投資価値を求める人、7月はコンテンポラリーアートなどを好む人が購入する傾向がある」。コロナ禍ではデジタル施策も強化した。ビデオチャットをきっかけに対面接客につなげたり、SNS を活用したコミュニケーションを行っている。21 年には、ECも刷新した。全体から見る売り上げの割合は少ないが、ECでは日本が一番大きな市場 だ。プリ=デュケンCEOは、「コロナ禍で始めたデジタルプラットフォームを活用した販売方法や コミュニケーションを継続して行う。コロナ禍では、ジュエリーを販売するためのオンライン接客や ジュエリーを自宅に届ける新たなサービスを始めた」とコメント。このような消費者にとって利便性の高いサービスも商況に反映されているのだろう。

コミュニケーション強化とジェンダーレスな施策で認知度がアップ

 「ブシュロン」の日本における認知度は、ここ数年、急激に高まっている。「日本市場は、ブライダルが強いというイメージだったが、スタッフの努力により『ブシュロン』は新たなステージに突入したと思う。ブライダルの売り上げ比率に対して、ジュエリーとハイジュエリーの販売が追い上げをみせ、他の市場と同じイメージになった」。コミュニケーションへの投資を強化し、「ブシュロン」が革新的でクリエイティブなジュエラーであるということが浸透してきた。また、アイコンである“キャトル”のジェンダーレスなプロモーションがトレンドとリンクして成功。男女問わず着けられるデザインが受け入れられている。「現在、日本には19店舗あるが、24年までに移転や売り場面積の拡大をし、最新コンセプトの導入を完了する」とプリ=デュケンCEO。

業界をリードする革新性から生まれたアップサイクルジュエリー

 今年登場したカプセルコレクション“ジャック ドゥ ブシュロン ウルティム”では、産業廃棄物をリサイクルしてジュエリーに採用。「ブシュロン」では、素材や技術などの研究開発を継続的に行う。その研究中に発見されたのが“コファリット (COFALIT)®”という素材だ。プリ=デュケンCEOは、「高速道路の盛り土のほか有用性のない最終産業廃棄物を1400〜1500度に熱すると多孔性の物質になり、それを粉にして圧縮したのが“コファリット®”。廃棄するしかないものに新たな価値を与えてジュエリーにすることはポエティックだと思った」と語る。“コファリット®︎”は、有害物質のアスベストを含む廃棄物を高温で熱することで無害化し、フラッシュ焼結法で加工することにより鉱物のような素材になる。「まだ研究段階だが、今後は“コファリット®”をさまざまなコレクションに取り入れることを検討している」と話す。「ブシュロン」では、サステナビリティの取り組みを強化しており、ジュエリーの環境負荷削減を試みている。ジュエリーの素材が環境に与える影響を研究し、独自の目標を掲げて発表していく。

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