若者マーケティング研究機関のSHIBUYA109lab.が選定する「トレンド大賞」が今年も発表された。15〜24歳の女性564人を対象に調査し、9部門で今年流行った人、物、コトを選び出した。選ばれたキーワードとそこから読み取れる若者の心を、SHIBUYA109lab.の長田麻衣所長に解説してもらった。
長田所長は「去年と比較して、大きな違いは外出緩和の影響」だと話す。例えばカフェ・グルメ部門はテイクアウトグルメが流行したコロナ禍と異なり、今回は1〜3位が家の外で楽しむグルメだ。「カヌレは“無機質カフェ”で、バナナスプリットは“アメリカンパーティー”(体験部門ノミネート)で楽しむなど、空間とセットで楽しむ食が選ばれた」。
また2位の「JKケーキ」はコンビニやスーパーで買ったスポンジケーキとスナックで作るケーキのことで、作る過程を楽しみ、SNSに投稿するのが流行った。「コロナ禍では放課後に学校で遊べなかったが、今年は緩和された。若者の情勢を反映したトレンド」だと長田所長は語る。
外出によって写真を撮る機会が増え、ポーズ部門が新設された。韓国アイドルから流行した「ギャルピース」や、一人が手でハートを作り、もう一人がそれに応えずグッドポーズをする「片思いハート」など、複数人で楽しむポーズが流行した。体験部門では「花火」もノミネート。コロナ禍の抑圧から解放され、ようやく遊べるという若者たちの数年間の思いが詰まっている。
コスメ・スキンケア部門は、昨年上位を占めたスキンケアが消え、メイクアップとヘアケアが並んだ。1位の「純欲メイク」は中国SNS発のメイクアップで、束間まつげに鼻先まで入れるチーク、ラメやハイライトの濡れツヤ感が若者の心を掴んだ。長田所長によると「中国に対して興味があり、メイク方法や撮影方法が注目されている。言葉はわからないながらも(中国のSNSアプリ)REDを見る若者もいる」といい、早くも次のトレンド候補に中国発の「白湯メイク」が浮上している。
またI-neが展開する「ヨル(YOLU)」の「カームナイトリペアシャンプー」が2位に入った。製品のクオリティの高さに加え、パッケージや広告の情緒的な訴求が響き、多くの口コミが生まれたことも後押しとなった。
若者が“深く狭いコミュニティ”を求めるワケ
外出緩和の影響が大きかった一方、長田所長は「外出先の選択肢が広がっても、コミュニティも一緒に広がったわけではない」と話す。オタ活、ファッションテイストなどの興味関心でコミュニティが形成されやすいSNSの影響に加え、コロナ禍の2年で“深く狭い”コミュニティの中でトレンドが生まれる流れが定着した。
「若者は周りからどう見られるかをすごく気にする。そのため、自分を認めてくれる、その中で調和が取れていれば大丈夫という“信頼できるコミュニティ”を求める。マスがなくなった今、よりコミュニティを捉えていくのが大事だ」と長田所長は指摘する。
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