多くのジュエラーは7月のオートクチュール・コレクション中に新作ハイジュエリーの発表を行うが、「カルティエ(CARTIER)」は、世界各地で6月に新作発表を行っている。今年はスペイン・マドリードでイベントを開催。王のジュエラーと呼ばれる「カルティエ」というだけあり、各国の王室と深いつながりがある。また、最近では積極的にアンバサダーを起用。王室やアンバサダーとの関係や戦略について、アルノー・カレズ(Arnaud Carrez)=カルティエ シニア バイスプレジデント&チーフ マーケティングオフィサーに聞いた。
WWD:ハイジュエリーの発表を例年6月に行う理由は?
アルノー・カレズ=カルティエ シニア バイスプレジデント&チーフ マーケティング オフィサー(以下、カレズ):顧客やパートナー企業、プレスの方々に特別な時間を提供したいと考えて6月の早い時期に、新作コレクションにふさわしい国と都市で発表している。「カルティエ」のクリエイションと共鳴し、特別な体験ができるような美しい場所を選んでいる。また、「カルティエ」とゆかりのある場所というのもポイントだ。
WWD:今年、発表の場をスペイン・マドリードに選んだ理由は?
カレズ:スペイン王室と「カルティエ」は長い友好と忠誠の歴史で結ばれている。1904年に、当時の国王であったアルフォンソ13世(Alfonso XIII)が「カルティエ」を王室御用達ジュエラーにしたのがスペイン王室とわれわれの絆の始まりだ。メゾンのアーカイブには20年に王室のために作られたティアラの写真がある。27年にスペインの宮廷人が購入したミステリークロックは、現在「カルティエ」のコレクションの一つとなっている。それ以来、「カルティエ」はスペイン全土で支持されている。2012年、マドリードのティッセン ボルネミッサ美術館で開催された「アート オブ カルティエ(EL ARTE DE CARTIER)」展では、カルティエ コレクションから400点を超える作品を展示。同年にはマドリードのレティーロ公園にあるカサ・デ・バカスセンターに“パビリオン オブ デザイン”をオープンし、3週間にわたりデザインをテーマとしたポップアップイベントを開催した。このような背景があるので、新作コレクションを発表する場所をマドリードにした。
アンバサダーはキャンペーンの枠を超えた存在
WWD:「カルティエ」はメゾンのアンバサダーではなく、コレクションのアンバサダーを起用しているが、その理由は?
カレズ:アンバサダーやフレンズ オブ メゾンとはメゾンの歴史に寄り添う継続的な関係を築きたい。“サントス ドゥ カルティエ”と米俳優のジェイク・ジレンホール(Jake Gyllenhaal)をはじめ、“パシャ ドゥ カルティエ”のキャンペーンでは、米俳優のラミ・マレック(Rami Malek)やメイジー・ウィリアムズ(Maisie Williams)、香港出身のK POPスターのジャクソン・ワン(Jackson Wang)、豪シンガーソングライターのトロイ・シヴァン(Troye Sivan)、米シンガーのウィロー・スミス(Willow Smith)などが集結。「カルティエ」とこれら、フレンズ オブ メゾンとの関係は、キャンペーンの垣根を超えてさまざまな取り組みにつながっている。ジレンホールとマレックは、「ドバイ エキスポ 2020」とのコラボのプロジェクトにも参加。彼らは、さまざまなプロジェクトを通して、メゾンの革新に携わっている。
WWD:イラン出身女優のゴルシフテ・ファラハニ(Golshifteh Farahani)をハイジュエリーのアンバサダーに起用した理由は?
カレズ:ファラハニは、誰もが認める素晴らしい女優であり、歌手、ミュージシャンだ。アート系の映画からハリウッド映画に出演し、レッドカーペットでは、そのスタイルとエレガンスで注目を集める存在だ。彼女は、既にフレンズ オブ メゾンとして活動しており、昨年もハイジュエリーのアンバサダーを務めた。彼女の多面的な個性は、多様で多文化なヘリテージをインスピレーションにする「カルティエ」のハイジュエリーを完璧に体現している。