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「口だけ出されるのは嫌だった」 マッシュ近藤社長が株式の過半を手放す理由

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 マッシュホールディングス(近藤広幸社長、以下マッシュHD)は12月末までに、米投資ファンドのベインキャピタルに株式を譲渡すると発表した。近藤社長は再出資し、株式保有比率はベインキャピタルが約6割、近藤社長が約4割となる。「3〜5年以内に上場を目指す」(近藤社長)ためのパートナーシップだが、創業社長が株の過半を手放すことには驚きも大きい。ファンド側も当初は過半を保有することまでは考えていなかったという。真意は何なのか、近藤社長に聞いた。

近藤広幸/マッシュホールディングス社長

近藤広幸(こんどう・ひろゆき):1975年生まれ。インテリア、広告、映像など、さまざまなデザイン業務を経験し、99年にCGアニメーション制作業務を中心としたマッシュスタイルラボを設立。2005 年、ファッション事業部の立ち上げを皮切りに、ビューティ、フード、スポーツ&ウエルネスなどに事業を拡大。12年にマッシュホールディングスを設立し、現職に就任

WWD:どのような経緯で株式譲渡を決めたのか。

近藤広幸マッシュHD社長(以下、近藤):2022年8月期の売上高が初めて1000億円の大台を突破し、1023億円となった。営業利益は98億円だ。「株式上場しないのか」と聞かれることも数年前から増えていたが、上場するときには、国内と海外の売り上げを1対1にしたいとずっと思ってきた。コロナ禍前に、「スナイデル(SNIDEL)」が社内の先陣を切る形で海外売り上げ比率が38%にまで高まったこともあったし、それをモデルケースとして他ブランドにも横展開していこうと考えていた。しかしコロナ禍で状況は変わった。マッシュHD全体として、国内と海外の売り上げ比率は現状9対1に留まっている。

 これを急速に1対1に持っていき、3〜5年後の上場後には国内と海外それぞれで売上高1500億円、全社で3000億円を目指したい。しかし、海外事業を100億円から1500億円に短期間で伸ばすというのは、マッシュだけの力では難しい。われわれだけでは、国内事業を伸ばすことで精一杯だ。それで21年年末から複数のファンドと話をしていた。最終的にパートナーをベインキャピタルに決定したのは、22年の5月だ。

WWD:ベインを選んだ決め手は何だったのか。

近藤:マッシュHDは、これまでファッション、ビューティ、フードを主軸にしてきた。それに加えて、今後はライセンス事業も大きく伸ばしていきたい。現状、ライセンス事業ではニュージーランドの自然派洗剤ブランド「エコストア(ECOSTORE)」と、今秋物から運営している英ブランド「バブアー(BARBOUR)」を展開している。こうした事業ドメインとシナジーがあるかを、ファンド各社からの提案を受けて検討した。ベインキャピタルは例えば、ファッション分野では「カナダグース(CANADA GOOSE)」や「サムソナイト(SAMSONITE)」に投資実績があり、数年間で利益を大きく伸ばしている。

 ビューティでは韓国の化粧品大手「カーバー コリア(CARVER KOREA)」、米オーガニックコスメ「サンダイアル ブランズ(SUNDIAL BRANDS)」 など、フードではドミノ・ピザ ジャパン、すかいらーくなどを短期間で大きく成長させている。ライセンス事業においても、傘下に持つアサツーディ・ケイで、アニメを使ったコンテンツ事業などを手掛けている。このように、われわれが目指す全ての事業でベインには経験がある。

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