エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES以下、ELC)は11月15日、トム フォード インターナショナル(TOM FORD INTERNATIONAL以下、TFI)から「トム フォード」とその知的財産を買収することに合意した。取引額は28億ドル(約3920億円)。2005年から「トム フォード」とアイウエアのライセンス契約を結んでいるイタリアの大手眼鏡企業マルコリン(MARCOLIN)が契約を継続し、ELCに2億5000万ドル(約350億円)を支払うため、ELCの負担額はおよそ23億ドル(約3220億円)になると見られている。
「トム フォード」を運営するTFIは、デザイナーのトム・フォードが05年に創業。同年にELCと提携し、ビューティを扱う「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」を立ち上げた。ELCのトレイシー・トーマス・トラヴィス(Tracey Thomas Travis)最高財務責任者によれば、「トム フォード ビューティ」は特にフレグランスが好調で、今後さらに成長が見込まれるという。現在、TFIの最高経営責任者(CEO)を務めるフォード創業者は、23年末までクリエイティブ・ビジョナリーとしてブランドに携わる。ドメニコ・デ・ソーレ(Domenico De Sole)TFI会長も、同じく23年末までコンサルタントとして同社に残る。
06年ごろから「トム フォード」とライセンス契約を締結し、メンズウエアを手掛けてきたエルメネジルド ゼニア グループ(ERMENEGILDO ZEGNA GROUP以下、ゼニア)との関係も継続する。今後はメンズに加えて、ライセンス契約の範囲をウィメンズ、アンダーウエア、アクセサリーなどファッション事業全体に拡大する。
ELCのファブリツィオ・フリーダ(Fabrizio Freda)社長兼CEOは、「『トム フォード ビューティ』がラグジュアリーフレグランスとメイクアップの分野で成功を収め、世界中の見識ある消費者に魅力的で高品質な製品を提供していることを誇らしく思う。今回の戦略的買収は、同ブランドの新たな可能性を引き出し、その成長計画をさらに強化するものだ。また、ラグジュアリービューティ分野における当社の勢いを長期的にサポートし、プレステージビューティのリーディングカンパニーであり続けるという当社のコミットメントをいっそう確かなものにしてくれるだろう」と語った。
フォード創業者は、「ELCは『トム フォード』にとって理想的な相手であり、今回の買収はこれ以上ないほど喜ばしいことだ。TFIの創業当初から比類のないパートナーだったELCが、次章を迎える『トム フォード』の舵取りをしてくれることを大変うれしく思っている。また、長年の素晴らしいパートナーであるゼニアとマルコリンとの関係が今後も続くことも、とてもうれしく思っている」と述べた。
今回の買収は、ELCにとって過去最大規模となった。なお、22年7月ごろにはTFIが身売りを検討していると米ブルームバーグ(BLOOMBERG)が報じたほか、8月にはELCが「トム フォード」の買収に向けて交渉していると米「ウォール・ストリート・ジャーナル(THE WALL STREET JOURNAL)」が報じた。また、11月初旬には「グッチ(GUCCI)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」などを擁するケリング(KERING)が買い手候補として準備を進めているとの憶測が広まっていた。