ファッション

JR名古屋高島屋「売り上げ過去最高ペース」の理由

 ジェイアール名古屋タカシマヤ(JR名古屋高島屋)の業績が急回復している。隣接するタカシマヤ ゲートタワーモールと合わせた2022年度上期(3〜8月)の売上高は、前年同期比24.5%増の799億円。コロナ前の19年度上期の実績を0.4%ながらも上回り、過去最高になった。9月以降も勢いは続いており、現状のペースでいけば通期でも過去最高だった19年度の1653億円を超える。けん引役のラグジュアリーブランド(特選)の売り場を段階的に増床しており、名古屋地区での優位性を盤石にする考えだ。

ラグジュアリーブランドを1.5倍に増床

 特選の売り場は22年から23年秋にかけて1.5倍に増床する。現状2・3階と4階の一部で展開している特選は、1年にわたる改装計画を経て、新規5、改装5の計34ブランドになる。また来年の改装で7階紳士服フロアの一部にも特選の売り場を拡大する。

 既に今年2月に「マノロブラニク」(4階)、4月に「モンクレール」(2階)を新規導入し、11月19日には3階の「エルメス」を移転・増床した。移転前の1.2倍になった「エルメス」は、近隣の岐阜県多治見市で作られたタイルを用いるなど話題性のある空間デザインが特徴だ。奥にはVIPルームを新設し、上顧客の満足度を高める。

 好調なラグジュアリーの売り場増床については、大都市の百貨店が足並みをそろえていると言ってよい。ただ、同店の場合は、ターミナル駅に直結する立地特性もあって20〜30代の若い客層に強い。特選を担当する畑添章宏副部長は「とにかく客数の増加が際立っている」と話す。「特選の22年度上期の売り上げは、19年度に比べて1.5倍(売り場面積は同じ)。今年に入ってからのラグジュアリーブランドの値上げによって、一品単価も上昇しているが、それ以上に革小物やバッグを求める若いお客さまが目に見えて増加している」。名古屋エリアはもともと免税売上高の割合が低いため、中華圏の訪日客の減少の影響はあまり受けない。

 若い世代の集客力はラグジュアリーブランドにも評価されている。ブランドが既存店とは別にポップアップイベントを開く場合、東京では伊勢丹新宿本店、大阪では阪急うめだ本店、名古屋ではJR名古屋高島屋が選ばれるケースが増えている。「プラダ」や「ロエベ」のポップアップイベントでは、限定品を求めて多くの若者でにぎわった。

ゲートタワーモールとの相乗効果

 JR名古屋駅に直結するJR名古屋高島屋は2000年に開業した。運営するのはJR東海と高島屋の合弁会社、ジェイアール東海高島屋である。

 百貨店としては後発にもかかわらず、じわじわと売上高を伸ばし、14年度には名古屋エリアで不動の一番店だった栄の松坂屋名古屋店を抜いた。17年度には隣接地にショッピングセンター(SC)のタカシマヤゲートタワーモールを開業。売り場面積は、JR名古屋高島屋の5万5000平方メートル、ゲートタワーモールの3万2000平方メートルと合わせれば、約8万7000平方メートルになった。21年度の売上高の1416億円は、伊勢丹新宿本店の2536億円、阪急本店(阪急うめだ本店、阪急メンズ大阪)の2006億円、西武池袋本店の1540億円に次いで日本の百貨店で4位につける。

 ゲートタワーモールの開業によって、百貨店が弱かった20〜30代の若い女性客を取り込むことに成功した。百貨店とゲートタワーモールが各階で連結した「二館一体」によって、若い女性が百貨店側のラグジュアリーブランドや化粧品を買い回る流れが生まれた。これが既存の百貨店系アパレルブランドの落ち込みをカバーしている。

 畑添副部長は「SCのゲートタワーモールが開業したことで、百貨店のグレードを上げて棲み分ける方向性が明確になった。コロナによってそれが加速した」と振り返る。グレードを上げる売り場づくりの一環として、21年8月には近接する大名古屋ビルヂング(運営:三菱地所)内に、高級時計を集めた「ウォッチメゾン」(1、2階の1200平方メートル)を設けた。「ロレックス」「カルティエ」「オメガ」「ピアジェ」など人気ブランドを集めた日本有数の品ぞろえで、岐阜県や三重県など広域からも客を呼び込む。

 ライバルとして比較されることが多い松坂屋名古屋店は、古くから家族代々の付き合いがある外商顧客がたくさんいるのが強みだ。松坂屋名古屋店の売上高に占める外商の割合は約50%で、富裕層の岩盤支持層を持つ。一方、新参のJR名古屋高島屋は外商の割合を発表していないが、そこまで高くなく、広域からの一般顧客に支えられているといってよい。そのためコロナ下での外出自粛では他の商業位施設以上の打撃を受けた。

 出勤・通学、旅行、出張といった移動が回復し、ターミナルに人が戻った。これを商機と捉えて、改装や発信力の強化など積極策に打って出る。

関連タグの最新記事

ファッションの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

リーダーたちに聞く「最強のファッション ✕ DX」

「WWDJAPAN」11月18日号の特集は、毎年恒例の「DX特集」です。今回はDXの先進企業&キーパーソンたちに「リテール」「サプライチェーン」「AI」そして「中国」の4つのテーマで迫ります。「シーイン」「TEMU」などメガ越境EC企業の台頭する一方、1992年には世界一だった日本企業の競争力は直近では38位にまで後退。その理由は生産性の低さです。DXは多くの日本企業の経営者にとって待ったなしの課…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。