企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回はファーストリテイリング最新決算の注目ポイントを解説する。(この記事は「WWDJAPAN」2022年11月21日号からの抜粋です)
今回はファーストリテイリング2022年8月期決算から国内ユニクロ事業の課題を読み解きます。
グループ売上高は前期比7.9%増で、コロナ禍前の19年度比でも0.5%増でした。今回すごいと思ったのは、粗利率が前年の50.3%から52.4%になったことです。会見では値下げを上手にコントロールしたと言っていました。原価は上がるも値下げを抑えられたので、過去最高の粗利率が出ています。販管費も上がりましたが、粗利額の増加分が上回り、為替差益1143億円を差し引いても過去最高ということでした。
順風満帆に見えますが、あえて課題を挙げるとしたら、国内ユニクロ事業がライフサイクルの「衰退期」に入ったかもしれないということと、増える一方の在庫日数です。
まず国内ユニクロ事業は減収微増益でした。既存店売上高が同3.3%減でしたが、粗利が2.5%増だったためです。実は国内ユニクロ事業には、ユニクロ事業で蓄積してきたノウハウや、構築してきた商売の仕組みに対してグローバルのユニクロ事業から支払われるロイヤリティー収入があるんです。国内ユニクロ、海外ユニクロともに、相応のロイヤリティーを負担しているそうで、21年度は238億円、22年度は327億円もあります。そして、それを除くと、国内ユニクロ事業は減収減益なんです。これがあるから過去最高の粗利率を達成できたというわけです。
これに対して、今回の決算発表資料の中の「国内ユニクロ事業開示変更」というページで、以後「(このロイヤリティー収入は、国内ユニクロ事業ではなく)セグメントに帰属しない収益および全社費用である調整額の方に含める」ことを発表しました。
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