ビューティ

Kビューティの黒船アモーレパシフィック クッションファンデを生み出した研究開発力の源泉

 アモーレパシフィック グループは1945年に創業し、年間売上高46億1000万ドル(約6402億円、2021年)を誇る韓国最大手のビューティ企業だ。「エチュード」「イニスフリー」。日本の消費者にも聞きなじみのあるこれらのビューティブランドは同社がグローバル展開している。また、近年は美容製品のグローバルなカテゴリーの一つとして定着した、クッションファンデーションを開発した草分け役でもある。9月には基幹ブランドの一つである「ラネージュ」の日本展開を開始。これを足掛かりに、さらなる市場開拓を進める。

つややかでしっとりした仕上がり
基幹ブランド「ラネージュ」日本上陸

 「ラネージュ」は世界30カ国以上で展開する。9月に日本でローンチした“ネオクッション”(全2種、税込各2970円)は、手軽に肌悩みをカバーするクッションファンデの特長そのままに、崩れやすいという欠点をカバーした。

 ミントのパッケージの“ネオクッション マット”は、同ブランドのクッションファンデ史上最も小さなパウダーを採用。しっかりした密着感で毛穴やシミをカバーするが、マスクにはつきにくく、自然なセミマット肌に仕上がる。ピンクのパッケージの“ネオクッション グロウ”はパウダー化した「リキッドダイヤモンド」が肌に輝きを与える。どの角度からでもつややかに演出し、しっとり感が一日中持続する。韓国国内では20年6月から販売し、アジア各国に展開を広げている。

女性のベースメイクをもっと簡単に
使命感が生んだイノベーション

 多くの美容ブランド・製品を展開する同社がその中でも特別な思い入れをもち、製品開発に情熱を注ぐのがクッションファンデだ。2008年に同社の「アイオペ」から発売した最初のクッションファンデである“エアクッション”は、「多忙な女性の時間を奪うベースメイクを短縮したい」「何度も化粧直しをする手間を減らしたい」という使命感から生まれた製品だ。
 
 それから15年。たゆまぬ研究開発により進化を続けるクッションファンデは、累計販売量1億個を突破する主力製品となった。「ヘラ」の“ブラッククッション”や「エチュード」の“ダブルラスティングクッション”など、数々のヒットアイテムを生んだ。同社のクッション部門の製品開発をリードするキム・ギョンナム氏は、「クッションファンデの成果は、単なるビジネスとしての成功ではなく、女性の化粧文化そのものに変化を与えたことだ」と語る。
 
 同社の売上高のうち、韓国以外のグローバル売上高は約34%を占める。そのうち9割以上を占めるアジア市場においてけん引役として期待をかけるのが日本市場だ。「日本の消費者は新しさと革新性を求める傾向が強い。ビューティー製品への理解度が高く、投資を惜しまない先進市場だ」とキム氏。「当社の技術力とノウハウを結集した美容製品を通じ、より広くKビューティーの文化を根付かせていきたい」と語る。

日本事業は2ケタ増収ペースで拡大へ
ニーズに合わせた製品開発を強化

 アモーレパシフィックの看板製品であるクッションファンデは、すでに日本人の美容意識・行動にも変化を及ぼしている。クッションファンデの開発秘話をクッション部門の開発責任者であるキム・ギョンナム氏、日本でのビジネスの今後を松井理奈アモーレパシフィックジャパン代表に聞いた。

WWD:クッションファンデ誕生のきっかけは。

キム・ギョンナム アモーレパシフィック R&Dセンター メイク2 チーム長(以下、キム):クッションファンデが生まれた経緯は意外なものだった。ヒントになったのは、偶然当社の研究員の目に入った「駐車確認スタンプ」。液体なのに流れることなく駐車券に均一に押されるスタンプから、研究員はひらめきを得た。クッションファンデは発売以降、メイクアップとスキンケア機能の強化を続けており、「ラネージュ」の“ネオクッション”は当社のクッションファンデでは「第5世代」にあたる。海外市場進出を進めるに合わせ、中国、ベトナム、タイなどアジア人の生活習慣と環境、ニーズに合わせた製品リリースも続けている。

WWD:日本の消費者の美容意識、ビューティ企業にはどのような印象があるか。

キム:日本は世界3位の巨大なビューティー市場だ。日本の顧客は、基本的に日本のブランドに対するロイヤリティー(忠誠度)が高い一方で、グローバルトレンドに非常に敏感な市場でもある。ものづくりにおける日本企業特有の職人気質は、勉強すべきことだと常に考えている。

WWD:日本市場のポテンシャルをどう捉えるか。

松井理奈アモーレパシフィック ジャパン代表(以下、松井):オンライン・オフラインの両軸で顧客との接点を拡大し、今後は2桁増収ペースを続けていく計画だ。すでに一定の認知度がある「エチュード」「イニスフリー」を軸足に、「ラネージュ」を筆頭にした当社ブランドを導入・成長させる。日本の流通業者とパートナーシップを構築し、日本の顧客の声に耳を傾けながら現地にフィットした商品をリリースしていく。

WWD:日本以外でのグローバル展開の進捗は。

松井:当社の2021年のグローバル営業利益は前年比190%増となった。特に、北米市場においての成長率が高い。「ラネージュ」「雪花秀」「イニスフリー」などが好調で、22年の上半期の北米における売上高は前年同期比約65%増。オンラインを中心に核心製品のアグレッシブなマーケティングとインフルエンサーとのコラボでブランドの認知度が高まった結果だ。7月の「アマゾン プライムデー」では「ラネージュ」が「ビューティー&パーソナルケア」カテゴリーで最も売れたブランドになった。現地のラグジュアリーナチュラルスキンケアブランド「タタハーパー」の買収(9月)を契機に、多様なカスタマーを受け入れられる足場を固めていきたい。

問い合わせ先
AMOREPACIFIC JAPAN
03-5561-6800