アディダス(ADIDAS)は、カニエ・ウェスト(Kanye West)改めイェ(Ye)による長年の問題行動をアディダス上層部が無視していたとする社員からの匿名の手紙を受け、内部調査を開始したことを認めた。
「アディダス」とイェは2013年に初めて協業して以来、継続してスニーカーやアパレルを発売して大きな成功を収めてきたが、イェの反ユダヤ主義的な発言を受けて10月にパートナーシップを解消したことを発表した。
米「ローリングストーン(ROLLING STONE)」誌が独占的に報じた匿名の手紙には、約10年にわたって複数の事件が起きていると記されており、アディダスの上層部はイェの問題行動を知っていたにもかかわらず、「モラルを放棄した」という。また、この手紙の差出人は、イェとのパートナーシップをもっと早く解消すべきだったのではないかと疑問を呈し、「カニエだけを非難したいところだが、否定できない真実は、アディダスの経営陣と役員会も加害者だったということだ」とコメントしているという。
同誌によると、イェは会議中にポルノビデオを流すことで有名だったという。また、時にはイェの元妻であるキム・カーダシアン(Kim Kardashian)の親密な写真やビデオをスタッフに見せることもあったと報じている。さらに、従業員をいじめ、脅迫し、女性スタッフには性的なコメントや過度に個人的なコメントをすることもあったという。
イェとのパートナーシップ解消は、事実上、アディダスの大株主であるユニオン インベストメント(UNION INVESTMENT)からの圧力によるものだったという。「フィナンシャル・タイムズ(FINANCIAL TIMES)」紙によれば、同社はアディダスに対して匿名の手紙に書かれた内容に関する詳細な情報を要求しているという。
匿名の手紙は、アディダスの幹部がこうした事案により迅速に対応できるよう、パートナーシップを定期的に見直し、解消するかどうかを判断するための規則を打ち出すよう求めているほか、イェの“恐怖を与える言動”に長年さらされてきたスタッフに対して公式な謝罪を求めている。
専門家は、アディダスはイェとのコラボレーションによって22年までに15億~20億ユーロ(約2145億~2860億円)の利益を得たと推測する。アディダスのスポークスマンはWWDに対して「現時点で手紙の内容の真偽は定かではないが、事態を深刻に受け止めて調査を開始した。われわれは、パートナーシップの解消に関する一連の事件について、これまでも、そしてこれからも、従業員との対話に積極的に取り組んでいく」とコメントした。