裏原宿のカルチャー発信力を取り戻そうと、地元の事業者らが動き始めた。地元の店舗関係者らが集まる原宿神宮前商店会の早川千秋会長(ジム専務取締役)は、2021年9月に任意団体「URAHARA PROJECT(ウラハラプロジェクト)」を発足し、裏原宿の街おこしに取り組んできた。このたびストリートでのファッションイベントを開催した。
キャットストリート(旧渋谷遊歩道)に40mのレッドカーペットが敷かれ、着飾ったモデルたちが歩く。
11月20日、原宿神宮前商店会主催による「ウラハラフェス2022オータム」が開かれた。会場となったのは「ラルフローレン」旗艦店の裏側のキャットストリート。雑誌「ポップティーン」で活躍するZ世代のモデルチーム「LOVEteen」によるファッションショーで幕が開いた。
「裏原ブーム」を知らない世代を狙う
プログラムは盛りだくさんで、裏原宿で営業する「キモノ バイ ナデシコ」は文化服装学院の学生をモデルに起用した着物ショーを行い、子供向けの服飾教室「キッズデザインスクール」に通う子どもたちは自分でスタイリングした服を着てショーを実施した。原宿にあるベルエポック美容専門学校の学生たちはヘアメイクショーを披露した。レッドカーペットは来場者が自由に写真を取れるよう開放され、多くの人がモデル気分を楽しんだ。
早川会長は「Z世代やその下の子供たちの参加型イベントを目指した」と話す。背景にはこのエリアの危機感がある。裏原宿を発信地としたストリートファッションは1990年代半ばから2000年代半ばに一世を風靡した。いわゆる「裏原ブーム」である。だが、10数年がすぎ、エリアの発信力は低下していた。そこにコロナが重なり、イベント会場となったキャットストリートの北側の店舗空室率は一時26%に達した。早川氏がウラハラプロジェクトを組織したのはこの頃である。
「今の若者は裏原ブームなんて知らない。エリアの魅力を高めるには、若い世代を巻き込む必要がある」との思いを強くする。プロによる洗練されたファッションショーを実施するよりも、次の時代を担う子供や10代、20代に裏原宿を自分の街だと思える手作りイベントがふさわしいと判断した。
準備期間わずか2カ月
準備期間2カ月という異例のスピードで開催に漕ぎづけた。ウラハラプロジェクトはファッション関係者だけでなく、アート、音楽、スポーツ、食など、様々な分野の第一人者がプロジェクトメンバーとして名を連ねている。共通するのは街への思いの強さ。「多くのメンバーが個人事業主なので、とにかく意思決定が早い。各自のネットワークを通じてスポンサー集めなど物事がとんとん拍子で決まっていった」
原宿神宮前商店会は、ふだんから渋谷区や地元警察と親密な関係を築いてきた。道路使用許可などの手続きもスムーズに進み、当日には長谷部健・渋谷区長と警察のマスコットのピーポ君もレッドカーペットを歩き、子供たちから歓声を浴びた。ピーポ君にはカジュアルな装いの吉田直人・原宿警察署長が付き添った。
さみしかったキャットストリートの北側も最近、「シーイン」のショールミングストアが開店したことでも注目を集めた。店舗空室率もだいぶ改善されており、スニーカー、フィギュア、アートギャラリーといった新しい顔ぶれが増えている。
コロナからの回復を加速させるためにも、ウラハラプロジェクトはさまざまな企画を練っている。「ウラハラフェス」も春と秋の年2回の開催を軌道に乗せ、エリアの発信力を高めていく。