デザイナーのシュエ・ジェンファン(Shueh Jen-Fang)が手掛けるウィメンズブランド「ジェニー ファックス(JENNY FAX)」が、2023年春夏コレクションをファッションショー形式で11月29日に発表した。東京・表参道の商業施設「スパイラル(SPIRAL)」の多目的ホールに、カーペットのみのシンプルなランウエイを作った。
シーズンテーマは“かわいいのにかわいそう”。台湾で過ごしたデザイナー自身の幼少期の思い出を表現した。ジェンファン=デザイナーは4人姉妹の次女として生まれ、登校前に制服やシューズ、靴下を同じクローゼットから取り合う日々を過ごしたという。服が破れたら両面テープで修理し、ネックがよれたトップスでも関係なく着続ける。それでも、「別に不幸だと思ったことはない。むしろ限りがあるからこそ幸せだった」と語る。
そんなデザイナーの“幸せ”な体験を、洋服に落とし込んだ。ファーストルックでは、ソリッドなワークジャケットに、シワシワの付け襟を合わせたキッチュなスタイルを披露。その後も、無数の穴が空いたビッグTシャツをジャケットの上に重ねたり、花柄のタオルをスカートのように巻きつけたり、ウサギのキャラクター“ミッフィー”の総柄生地でワンピースを作ったりと、幼いころに親しんだアイテムを再解釈していく。モデルたちの寝起きのように乱れたヘアメイクも、シーズンテーマを強く反映していた。
一方で、ノスタルジーで終わらないのは、同ブランドらしいガーリーなディテールと、力強さを感じる要素があるからだ。肩や胸元にはフリルやラッフルを多用し、肩周りを誇張するパターンワークやボーンによる独特な造形、ビビッドな赤のカラーリングが目立った。ほかには個性的なアクセサリーも豊富で、「アンジェリックプリティ(Angelic Pretty)」とのコラボシューズや、3DアーティストのKADDETと協業した髪ゴム風のブレスレットなどを披露した。