12月1日に改装グランドオープンした新宿駅直結の商業施設、新宿フラッグスの内覧会を取材しました。われわれアパレル業界紙的なホットトピック筆頭は、「アメリカンラグシー(AMERICAN RAG CIE)」が4年ぶりに日本1号店の地、新宿フラッグスに再出店した、という話だったんですが、それとは別で「このブランド、今こんな取り組みもしているのか!」という驚きがあった店があるので紹介します。ニューエラジャパンが運営する「ニューエラ(NEW ERA)」です。
「ニューエラ」と言えば、“つばが平らなベースボールキャップのブランド”“よくBボーイがかぶっているキャップのブランド”といったイメージを抱く人も少なくないと思います。でも、今はキャップだけでなく、アパレルやバッグなども多数企画しているんですね。しかも、アパレルはブランドロゴ入りの分かりやすい商品だけでなく、“ブラックレーベル”と呼ぶロゴを抑えたファッションラインにも注力しているそうです。新宿フラッグス3階の店舗(今回は新規出店したわけではなくリニューアルです)でも、入り口すぐの場所に“ブラックレーベル”を陳列していました。
……とまあ、ここまでは単に私がブランドについて勉強不足だっただけで、知っている人は知っている情報だと思います。お店のあり方として興味深い話はここから。店外のエレベーター横のスペースに、ブランドロゴ入りのロッカーが設置してあるんです。聞けばEC購入商品の受け取り用ロッカーとのこと。店舗内外にそうしたロッカーを設けるショップやブランドは昨今増えつつありますが(例えば「無印良品」など)、「ニューエラ」もやっているのか、と。「ニューエラ」としては、ロッカー設置店舗はここが初だそうです。新宿駅で乗降する忙しい客がサッと商品を受け取って帰ることができるように、というのが設置意図。ECで商品を買う際に、店頭受け取りかロッカー受け取りか(もちろん自宅配送も)は選べます。
EC全盛時代に練られた“実店舗の価値”
そしてロッカーよりも驚いたのが、店内のカウンターにキャップ用のプレス機(アイロン)が2台あり、「ニューエラ」の代表的なモデルのキャップならいつでもプレスして形を整えてくれるという点。さらには、プレス機の横に熱圧着のワッペン用のアイロンもあり、「ニューエラ」で購入したキャップ(一部除く)には購入後1カ月以内であれば2文字までのワッペンも無料で付けてくれるんだとか。ECを含む同店舗以外での購入商品も、レシートさえあれば対応するとのことです。どうですかこの施策。EC全盛時代に実店舗にどんな価値を持たせるか、実店舗とECをどう使い分けるかといった視点で、よく練られているなと感じますよね。
こういう策が今の時代は非常に大切だという話はO2Oなどの文脈でよく語られますが、こんなに分かりやすく実践している店って、実はそんなに多くないようにも感じます。このプレス機とワッペン用アイロン、実は「ニューエラ」の国内直営全店(アウトレットを除くと10店あります)に導入されているらしく、ブランドファンにとっては目新しい話ではないのかもしれません。しかし、勉強不足だった私には「『ニューエラ』って、そんなにオムニ施策に意識的なブランドだったのか!」という驚きがありました。
それらに加えて、店内にはキャップが買える自販機もあって、今回のリニューアルの目玉の1つとなっていました。ショップの総面積が約198平方メートルと比較的広いからこそ、いろいろと実験的なことができている印象です。自販機も店外ロッカーと同様に、キャップがほしい人が接客なしにササッと買えるというのがポイントだそう。自販機というフォーマットは、訪日外国人客にも“日本的”として人気が出そうです。実際、羽田空港には「ニューエラ」店舗はないものの、このキャップ自販機は2台設置しているそうですよ。
以上、「ニューエラ」をよく知る人には「何を今更……」な情報ばかりかもしれませんが、意外と「チェックしていなかった!」という人も少なくないのでは。新宿フラッグスに立ち寄った際は、EC時代に打ち出す実店舗の価値、O2O施策として何をやっているか、といった視点で「ニューエラ」を是非パトロールしてみてください。