REPORT
現代社会における「ノイズ」は本当に不必要?切り捨てられるものに意味を与えるコレクション
日本の最新技術とウエアを組み合わせたコレクションを提案してきた「アンリアレイジ」が今シーズンのコンセプトに選んだのは「ノイズ」。今回のパートナーには、プログラマーでアーティストの浦川通を迎えた。インビテーションは砂嵐のような模様の台紙と黒いボーダー模様のプラスチックが1組になっていて、その2枚をぴったり重ねることでブランドロゴが浮かび上がるデザインだった。
会場の中心には、四方をインビテーションと同じボーダー模様のパネルで囲んだ正方形のランウエイが設置されている。ノイジーな音楽が鳴り響く中、モノトーンの生地をパッチワークしたワンピースからショーはスタートし、その後砂嵐を思わせる細かいパッチワークで仕立てたパワーショルダーのチェスターコートや、モノトーンのローゲージニットにワイドパンツを合わせたルックが続く。
信号のような音とノイズとともにコレクションは次のフェーズへ。細かな砂嵐風の柄が入ったライトグレーのワンピースをまとったモデルがランウエイのパネルぎりぎりまで歩みを進めると、ウエアにドット柄や市松模様が浮かび上がる。コンピュータープログラムによってコードを埋め込んだデジタルジャカードによるものだ。森永邦彦デザイナーは「情報化社会において不必要とされている“ノイズ”について再考し、“意味のあるノイズ”を作ろうとした。前半部分ではノイズを直接的に表現し、後半では浦川さんの技術を駆使することで、ノイズに見えるものの中に情報や意味をのせた」と語る。ヒールの形が印象的なメタリックのブーツは、山田泰介・中央大学研究開発機構助教との協業による足に負担をかけないタイプを採用するなど、ディテールにまでこだわりを見せた。ラストはキャサリン・ジェンキンスの「ザ フラワー デュエット」が流れる中、パネルがゆっくりと取り去られ、パネルと同様の効果を持つPVCポンチョを羽織ったモデルが登場。最新のデジタル技術を駆使して洋服の上に現れた花柄は意外なほど有機的に、そして優しく映り、「意味がないと言われるもの」に想いをはせようとする森永デザイナーの祈りを十分に表現した。