1774年にドイツで生まれたシューズブランド「ビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)」は2023年、グローバ ルと日本で大きな転換期を迎える。“世界中の全ての人々に足の健康を”というブランドの原点を発信すべく、3部作のキャンペーン動画も制作するなど、確かなミッションを掲げて成長を続ける。これからの戦略や、改めて今伝えたいメッセージとは。オリヴァー・ライヒェルト(Oliver Reichert))=ビルケンシュトックグループ最高経営責任者(CEO)と、日本市場の舵取りを担うラウル・ウォートマン(Raoul Wortmann)代表取締役・マネージングダイレクターに聞いた。
市場開拓の鍵を握る
キーパーソンの二人
WWD:動画キャンペーンを通して伝えたいことは?
オリヴァー・ライヒェルト=ビルケンシュトッ クグループ最高経営責任者(以下、ライヒェルトCEO):動画シリーズのテーマは、「アグリー フォー ア リーズン(Ugly for a Reason、“不格好”なのには理由がある)」。目的はシューズのファッション的側面だけでなく、機能性の認知を高めること。足の健康に寄り添ってきたブランドミッションを世界中の人たちに改めて知ってほしい。
WWD:近年の商況は?
ライヒェルトCEO:とても良い。世界で毎年2ケタの成長率を維持し、非常に魅力的なマージンを 持っている。スタッフも増員中だ。現在建設中のドイツの新工場のおかげで、製造キャパシティが 拡大する。EVA(酢酸ビニル共重合樹脂)やPU(ポリウレタン)などの新素材を使ったサンダルもより増えるだろう。アメリカとカナダが一番大きな市場で次がヨーロッパ。アジア市場は成長しているが、供給が十分に間に合っていないのが現状。億ユーロ単位の投資をし、改善に努める狙いだ。
「ビルケンシュトック」ができるまで
WWD:2021年3月にはLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)系の投資会社であるLキャタルトン(L CATTERTON)に過半数株式を売却している。ブランドにどのような影響があった?
ライヒェルトCEO:ビジョンを共有するパートナーを選択し、戦略的提携を結んだので、ブランドの核に大きな変化はない。12年に創業一族外が経営から退いたタイミングで私がはじめて一族以外からCEOに就任したが、今回の提携は新しい株主を獲得するための、論理的な次のステップだったといえるだろう。
WWD:入社して着手したことは?
ライヒェルトCEO:ビルケンシュトックは、典型的な中規模の家族経営のビジネスだった。商品は素晴らしかったが、しっかりと管理がされておらず、可能性を押し殺していた。すべてを変える必要があった。流通業者の見直しや流通の管理、外部のクリエイティブの採用など、ブランド管理に注力し、グローバル単位でそれを実施した。
WWD:欧米で取り扱っているスキンケアや寝具のラインを日本でも展開する予定はあるか?
ライヒェルトCEO:日本でのスキンケア系は特に取り扱いが難しいが、展開したいと思っている。健康へのアプローチに特化しているという意味で、睡眠の質の改善などに取り組むのはわれわれの自然な発想だ。ハンドクリームやフットクリームを中心としたナチュラルコスメも、信頼と機能性をコアバリューにすえる「ビルケンシュトック」だからこそ意味が生まれるだろう。
日本では直接の小売り・卸売業務も開始
23年2月には原宿店オープン
WWD:日本市場の現在地は?
ライヒェルトCEO:日本で16年に発足したチームを通して、市場全体を確実に管理できるように働きかけている。長きにわたってつながりのあった流通におけるパートナーシップを終了し、小売店を自社で管理できるようにする。直接の卸売業務も開始する。これによりブランドを開放し、次のチャプターへと導いていけるはず。供給も拡大し、日本市場のポテンシャルを満たしたい。
WWD:23年2月に原宿にオープンする新店舗のコンセプトは?
ラウル・ウォートマン代表取締役・マネージング ディレクター(以下、ウォートマン代表):日本や東京では現地の建築家やデザイナーらとコラボ レーションをしていく。原宿の新店舗は、東京の持つアーバンの雰囲気と「ビルケンシュトック」の自然に根付くブランドらしさを融合させる。地域の生活者とつながるため、その土地に合わせて根を下ろすことが大事だと考える。
ライヒェルトCEO:グローバルの店舗に対する共通のコンセプトは設けていないので、原宿独自のものになるだろう。これまでに約3000種類ものスタイルを生み出してきたが、地域ごとに“ハマる”モデルは異なる。「ビルケンシュトック」の強みはブランド内でトレンドをつくり出せること。店舗ごとに地域に合った“モデル”を展開することで、それぞれの特性に合わせた多様なラインアッ プの店舗を作ることができる。
WWD:日本市場に期待することは?
ウォートマン代表:新しい消費者層にリーチするために、日本は非常にエキサイティングな市場だ。洗練されており、影響力もあるので、現地のクリエイターや、「ユナイテッドアローズ」や「ビームス」といった小売りとのコラボを実施している。日本ならではのデザインは、グローバルに対しても刺激になっている。
WWD:卸売(B2B)と小売り(D2C)の比率は?
ライヒェルトCEO:欧米の大きな市場では、卸売で成長してきた。B2Bビジネスを衰退させたくない一方、最大化することにも抵抗がある。比率は試行錯誤しながらだが、B2B対D2Cが55対45程度となるだろう。
WWD:もうすぐ250周年だが、今後250年の目標は?
ライヒェルトCEO:地球上の全ての人に、「ビルケンシュトック」の極上の履き心地、“フットベッド(足の形状に合わせて足を支えるインソール)”を届けること。
ブランドの歴史をたたえる
一夜限りのイベントを開催
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「ビルケンシュトック」は11月28日(現地時間)、ニューヨーク・ブロードウェイ通りに位置する老舗ベニュー、チプリアーニでこれまでの歩みと歴史を祝うイベントを開催した。初めて開発した“マドリッド”サンダルから歴代コラボレーションアイテム、欧米で展開する寝具の展示から、足のサイズを正確に計測する技術を活かしたカスタムオーダーコーナー、スキンケアラインを使ったマッサージ体験などをそろえた。シューズに使われて いる原材料に触れたりすることで、ブランドのアイデンティティーを肌で感じながら、理解を深められる空間に。ブランドの集大成を会場全体で表現した。会場には、世界各国から約400人が集まった。
ビルケンシュトック・ジャパン カスタマーサービス
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