2022年11月に主力ブランドEC「フリークス ストア オンライン」を、複数ブランドを扱うモール型EC「デイトナパーク」としてリニューアルしたデイトナ・インターナショナル。その背景には、業態の変更のみならず、全社を挙げたDX戦略がある。それを支えるのが、CX(顧客体験)プラットフォーム「カルテ」を提供するプレイドだ。デイトナは何を目指してどこへ向かうのか。デイトナでDXを推進する目黒希望担当とプレイドの長谷川亮担当に話を聞いた。
デジタル接客の強化と
リアルタイムパーソナライゼーションを実現
WWD JAPAN(以下、WWD):デイトナ・インターナショナルが抱えていた課題は?
目黒希望デイトナ・インターナショナルDX本部ウェブディレクター(以下、目黒):経営が刷新しDXを強化するという経営方針に共感して入社した。当時はデジタルの分野が弱く、体制やリソース、データの整理といった内部的なものからEC自体のサービスレベルまで、やらなければいけないことがたくさんあった。オフラインとオンラインを行き来しやすい環境を整え、お客さまにはシーンに合わせて便利なチャネルで情報に触れて商品を購入してもらいたい。理想は買い物に限らず、イベントやユーチューブなどさまざまなコンテンツでブランド体験を楽しんでもらい、コミュニティーを作ること。実際のデータでも、店舗とECどちらかでのみ購入しているお客さまと比較して、併用しているお客さまの購入金額の年間の合計は約4倍程度多くなることが分かっている。
WWD:なぜ「カルテ」を導入したのか?
目黒:デジタル接客の強化とリアルタイムパーソナライゼーションの実現の一環として導入した。長期的なサイトの改修と並行して、足元の売り上げも確保する必要があったため、導入後すぐにデータを可視化、活用してお客さまに最適な情報を出し分けられる接客ツールが必須だった。類似ツールをクオリティー・スピード・コストの3つの軸で比較して一番優れていた「カルテ」に決めた。サイト上でのユーザーの行動をリアルタイムで判別して接客できるのは、「カルテ」だけだった。加えて無償で丁寧なサポート体制があることも魅力的だった。現在は専任を設けて年間150本以上のシナリオを運用中だ。
長谷川亮プレイドカスタマーサクセス(以下、長谷川):「カルテ」は、正しいコミュニケーションを取るためにはリアル店舗で接客するようにユーザーを捉えるべきという設計思想を持つ。そのためには、ウェブサイトやアプリに来訪中のユーザーの属性や行動を把握する必要があるが、「カルテ」は独自のリアルタイム解析エンジンでユーザー単位で行動データを保有できるため実現できた。
リアルタイム解析だからできる「鉄板施策」
WWD:EC売り上げを最大化するために手応えのあった施策は?
目黒:たとえば、「くじ引き施策」だ。特定の行動をしたお客さまを「購入を迷っている方」と判断し、その人だけに当日のみ使える割引クーポンが当たるくじを引けるポップアップを掲出する。売り上げにインパクトを出しつつ、オープンクーポンのように安売りイメージを与えないメリットがある。サイトに訪問中のお客さまの行動を捉えて施策を打てるのはリアルタイム解析ができる「カルテ」ならでは。その他にも自社EC閲覧後の店舗購入や、広告経由での店舗売り上げなど、データ分析や効果の可視化が包括的にできている。
WWD:現在進行中のOMO施策は?
目黒:さまざまあるが、直近では自社ECサイトをリニューアルした。新サイト「デイトナパーク」は、他社も商品を出品してECと実店舗のどちらでも販売できる仕組みで、店舗でもECでも“売る”という当社の強みを活かしたOMOプラットフォームだ。店舗では、自社で企画・開発した「+プラス ミラー」を導入した。全身鏡をデバイス化したもので、内蔵カメラで全身撮影を行ったりさまざまな診断コンテンツを提供したりして、商品のリコメンドができる。特許を出願中だ。「+プラス ミラー」にも「カルテ」を導入し、UIUXの改善につなげている。
シームレスな顧客体験目指す
長谷川:オンライン上での顧客データの取得ノウハウはあるが、リアル店舗からお客さまの行動データを取得することは当社としてもトライアルの領域だ。お客さまの許諾を得た上で今後は店舗での行動データを集めて、ビーコンを使った来店データの取得や、非接触でICタグの情報を読み取れるRFIDを使った試着データの取得など解像度をより上げていきたい。そして、これらのオフラインデータをオンライン上の詳細な行動データと組み合わせることで、オンオフを横断したデータ活用を実現したい。
目黒:それらを活用すればECサイトと連動してお客さまにあった情報を配信することはもちろん、サイトの閲覧が実店舗の来店にどう影響しているかを分析したり、試着されても購入されない商品の分析などを社内の企画にフィードバックしたりもできる。長谷川さんはアパレル企業で働いた経験があり、知識と経験が豊富。長谷川さんに「こんなことはできないか」と相談すると、「カルテ」では対応しきれないことも、パートナー企業を探してきてくれるなど、実現に向かって並走してくれるので、安心して進められる。
両者が目指す次のステージは?
WWD:次に目指すステージは?
目黒:目指すはライフスタイルテック企業だ。ブラッシュアップ中の「+プラス ミラー」をはじめ、自社で開発したOMO施策を、他社に提供する事業を視野に入れている。デバイスの提供から運用のコンサルティングまで、自分たちの知見は他社にも有益なはず。今まさに実現に向けて動いている。
長谷川:CX(顧客体験)プラットフォームをうたい、ユーザー一人一人のデータ解析に取り組んできたプレイドだからこそ、よりきめ細やかなユーザー体験の実現ができると信じている。今後も目黒さんのビジョンを全力でサポートし、業界をリードする取り組みを推進しつつ、他社にも役立つソリューションとなるよう質を高めていく。
PHOTO:SHUNGO TANAKA(MAETTICO)