講談社の「ヴォーチェ(VoCE)」について、遠藤友子編集長は「雑誌ではデパコスを中心に、ビューティをディープにメジャーに伝えています」と話す。「ディープでメジャー」の意味を尋ねると、「『ヴォーチェ』は創刊以来、難しいこともエンタメに昇華させています。例えばキャラ立ちした研究員にご登場いただき漫画にするなど、勉強させていただき、理解して、時間をかけて作っています。私たちが長年伝え続けている『キレイになるって、面白い!』は、本当に秀逸なフレーズだと思うんです。どのプラットフォームでも貫いているのは、このDNA。長年挑戦し続けているからこその情報と経験の蓄積は大きいんです」と話す。情報と経験の蓄積に大きく寄与しているのは、長年二人三脚の美容ライターたちだ。そして、そんな美容ライターの知見を引き出すのは、「時には素人のような質問をして情報を咀嚼する」編集者。こうして「ディープ」と「メジャー」のバランスを図る。
デジタルは新規ファンの獲得を主軸に間口を広くしているが、「面白い」を追求する姿勢は忘れない。例えばYouTubeも、「反響が大きかった研ナオコさんの“盛りメイク”大公開や、ファーストサマーウイカさんのセルフメイク実況、シリーズ化している本気トークの座談会も、編集部員が『面白そう!』と考え、まず相談してみることから始まりました。プラットフォームは違うけれど、正直やっていることは変わりません」。
「ディープにメジャーに」のシンボリックな存在と言えば、ベストコスメ特集だろう。「私たちのベスコスは、本当にガチなんです。今でも『広告に左右されるんでしょう?』と聞かれるけれど、懲りずに毎回『いつもガチです!』と答え続けています(笑)」という。読者の多くは「ベスコス特集をみて、2、3品コスメを買い足すようです。ご自身が購入したコスメを答え合わせしたり、美容好きのLINEグループで盛り上がったりと楽しんでいます」。ベスコス特集が生み出す熱量のおかげで、受賞製品は「『ヴォーチェ』のベスコスを受賞すると再び盛り上がります。中には『昨年対比で何倍』という製品も」。今年の上半期には、受賞したスキンケアとメイクアップ製品を集めた“ベスコスカー”を2台、東京ミッドタウン日比谷に設置した。「編集部員がベスコス受賞の理由を説明するなど、リアルな触れ合いに挑戦したんです。車の周りには行列ができて大盛況でした」と振り返る。
ビューティの世界ではインフルエンサーの存在感が増しているが、「雑誌発祥のメディアの信ぴょう性の高さは、正直私たちが思っている以上。一方、インフルエンサーの皆さんは見せ方が上手で学ぶべきところがたくさんあります。だからこそ共に『ヴォーチェ』を、ご本人を、ビューティ業界を盛り上げたい」という。例えばパーソナルカラー診断で有名な、あやんぬとは、インスタライブを一緒に。総合出版社だからこそ、「EXITりんたろー。美容道」はすぐに書籍化するなどにも積極的だ。こうして美容ライターの次なる存在を発掘する。
来年は創刊25周年、オン・オフ問わず「1年中お祭り状態」でビューティの面白さを発信する。
紙媒体からデジタル、そしてSNSやイベント、他社のコンサルティングまでビジネスを拡大し続けるメディアの編集長に話を聞きました。