漫画「スラムダンク(SLAM DUNK)」の映画「THE FIRST SLAM DUNK」が12月3日に公開された。原作は「人生観を変えた漫画」と言われるほど人々に感動を与えており、発売から30年以上経った今でも多くのファンから親しまれている。そこで、「スラムダンク」愛に溢れたデザイナーや編集者、モデルらの業界人に、同作の魅力やバスケットボールシューズを取り入れたコーディネートを紹介してもらった。
落合宏理/「ファセッタズム」デザイナー
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落合宏理「ファセッタズム(FACETASM)」デザイナーも、自他共に認める「スラムダンク」好きの1人だ。「挫折するけど立ち上がる三井寿と、仲間思いの熱い堀田徳男がお気に入り。彼の発言や行動には感動させられます。数ある名場面の中でも、絶対王者の山王工業との試合で、開始直後に宮城と桜木が変顔でアイコンタクトをとりながら、桜木がきれいにアリウープを決めるシーンが印象に残っています。三井が体力の限界から、これまでで一番の高く美しい弧を描いて3ポイントシュートを決めたシーンも感動しましたね」。
スニーカーでコーディネートする時は、「いつもボトムとのバランスに気をつけている」という落合デザイナー。この日は、自身のブランドの縮絨ウールのセットアップに、愛用している“ア マ マニエール×ナイキ エア ジョーダン 2 エアネス(A MA MANIÉRE × NIKE AIR JORDAN 2 AIRNESS)”を組み合わせて登場した。
阿部勇紀/「ハイプビースト ジャパン」編集長
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阿部勇紀「ハイプビースト・ジャパン(HYPEBEAST JAPAN)」編集長は、「スラムダンク」をきっかけにバスケットボールにハマり、NBAは毎回欠かさずチェックしているという。“バスケの神様”と評されるマイケル・ジョーダン(Michael Jordan)が着用した最初期のシグネチャーモデル“ナイキ エア ジョーダン1(NIKE AIR JORDAN1)"は、20年以上愛用している。そんな阿部編集長は、ジョーダンが1984年に初めて試合で履いたモデルと、同年に製作された「リーバイス(LEVI'S)」“501”を合わせたコーディネートで登場。足元は11月に発売されたばかりの、4度目の復刻を果たした“エア ジョーダン1 シカゴ(AIR JORDAN 1 CHICAGO)”だ。「現在のトレンドを押さえた秀逸なビンテージ加工と、1985年のデッドストックが数十年後に発見されたというコンセプトに引かれました。仕事柄、ハイプなスニーカーを履くことも多いので、他のアイテムはあまりはやりものにならないように気をつけています」。
お気に入りキャラクターは、“あきらめの悪い男”三井寿。「男性ファンはみんなミッチーが好きなんじゃないでしょうか?彼にはたくさんの名シーンがあり、個人的には翔陽戦が好きです。『ここで働けなけりゃ...オレはただの大バカヤロウだ』というセリフにグッときますね」。
新岡潤/モデル・俳優
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モデル・俳優として活動する新岡潤さんは、小学校3年生のとき、バスケットボール部のコーチだった当時の担任に誘われてバスケットボールを始めたという。「スラムダンク」に出てくる山王工業高校のモデルとなった能代工業高等学校に進学し、インターハイと国民体育大会それぞれで優勝した。そして今回、全国での経験を活かし、映画『THE FIRST SLAM DUNK』にてプレー中の音響監修、また声優としても協力している。特に思い入れがあるのは、“ナイキ エア マックス ペニー1(NIKE AIR MAX PENNY 1)。「小学生の時、『スラムダンク』を見て山王工業の沢北栄治に憧れました。彼のモデルになっているペニー・ハーダウェイ(Penny Hardaway)が愛用していたシューズがどうしてもほしかったんですが、母親にねだってもダメで。当時はずっとバスケットボール雑誌を眺めていました」。2022年に復刻することを知り、即購入。この日はシューズの色に合わせて、洋服もブラックやネイビー、グレーなどのモノトーンカラーでまとめた。
好きなキャラクターは、もちろん沢北だ。「能代工業に進学して、日本一になることを目標にバスケを始めたんです。彼が山王工業のエースであること、あの時代にしてアメリカ行きを決め、日本一で満足せず、さらに上を目指す姿勢がすごい!好きシーンは選びきれないけれど、強いていうなら、安西先生が山王工業戦で、『おい......見てるか谷沢......お前を超える逸材がここにいるのだ......!!それも...... 2人も同時にだ』と亡き教え子に問いかけながら頭を抱えるところ。NBAで活躍中の八村塁選手や渡邊雄太選手と重なって、彼らの試合を見るたびに、僕も頭を抱えています(笑)」。
鈴木里美/「オズ ヴィンテージ」オーナー兼バイヤー
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ファッション業界で厚い信頼を得ている「オズ ヴィンテージ(OZ VINTAGE)」の鈴木里美オーナーは、「『スラムダンク』を読み、中学校1年生のときにバスケットボール部に入部。初めて購入したのは“アシックス ファブレ ジャパンL(ASICS FABLE JAPAN L)”で、「スラムダンク」の三井寿が履いているものと同じモデルです」と話す。「ハイテクスニーカーに飽きてきた頃、クラシックなものがほしくなり、このモデルを発見。硬派な見た目と、自分にとってのユースカルチャーを感じさせるところ、また、デカ履きすることで、重たい冬の装いに安定感が出るところが気に入っています」。この日は、ハリのあるボリューミーな装いをスニーカーでカジュアルダウン。靴が生きるようにスカートの長さに気を付けるなど、細部にまで気を配っているのも鈴木オーナーならではだ。
「桜木花道の明るい性格と腕っぷしが強いところに引かれますね。登場から最後まで、毎秒欠かさず進化しているのも魅力。好きなシーンは、山王戦の大事な場面で、宮城リョータがこぼしたルーズボールに花道が突っ込むところ。山王戦はストーリーやセリフなど、全てに目が離せませんが、コマ割りや構図、吹き出しの使い方などは特に好きで何度も見直しました」。
渡部かおり/編集者・ライター
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プラットフォーム「ザ シー(THE SHE)」のディレクターであり、広告やモード誌も手掛ける渡部かおりさん。365日ほぼ毎日スニーカーという、シューズを合わせた着こなしが定番の彼女は、“ファセッタズム ×ナイキ ジョーダン ミッド“ホワイト/ネイビー(FACETASM × NIKE JORDAN 1 MID "WHITE/NAVY")”をセレクト。「モデルのUTAさんのビジュアルがカッコよくて購入しました。持っているスニーカーの9割はインラインのもので、どちらかというとコラボものは避けていたんです。でも『ファセッタズム』の落合さんは、同世代で、触れてきたカルチャーも勝手ながら通ずるものがあり、色使いやディテールも『分かる!』と共感するばかりだったので、なんとしてでもほしかった。アメリカのバスケットボールチーム『シカゴ・ブルズ(Chicago Bulls)』のオレンジをプルバックに使っているところが1番好きです」。
「お気に入りは、“メガネ君”の愛称で親しまれている木暮公延。サブキャラだけれど、湘北高校の知性の象徴だから。知性があるからこその優しさと強さが魅力ですね。練習のシーンでいつもかわいいTシャツを着ていて、すべてのプリントをチェックしています」。メガネくんへのオマージュを込めて、「アリーズ(ARIES)」の生まれた地であり、自身の縁の地でもあるイギリスの国旗がプリントされたTシャツを着たという。「好きな台詞は選びきれないほどありますが、『“負けたことがある”というのがいつか大きな財産になる』『俺は三井、あきらめの悪い男』『まだあわてるような時間じゃない』の3つが印象的ですね」。
山口貴紀/エドストロームオフィス PR
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エドストロームオフィスの PRである山口貴紀さんのイチ押しは、5年ほど前から大切に履いているという1984年の“ナイキ ダブル チーム ハイ(NIKE DOUBLE TEAM HI)”。17年ほど前に平本ジョニー「フェノメノン(PHENOMENON)」デザイナーが雑誌のスナップで履いているところを見たこと、また当時、自分の中で1980’sブームだったことがきっかけで、とても探し回ったという。「当時はいくら探しても、モデル名さえ分からなかったんです。名前にはたどり着きましたが、全然売っていなくて。そうしたら、まさかのジョニーさんが譲ってくれた上に、「フェノメノン」のデザイナーであるオオスミさんからジョニーさんに受け継がれた貴重なスニーカーというサプライズ付きだったんです」。
「魅力は、ボクシングシューズのようにしっかりとフィットすること。おそらくプレーする上で、足首をサポートし、怪我を極力防げるようにしたんでしょうね。実は靴の中にさらにもう1レイヤーのシューレースがあり、履くのに結構な時間がかかるので、あんまり利便性は高くないんですけど(笑)」。コーディネートのポイントは、「スタジャン、チームロゴ、バスケットシューズと愛を足して4で割った感じ」と回答。足元とトップスのロゴの色をリンクさせたり、ワイドパンツを靴のボリュームと合わせたりするなど、バランスの取り方も計算されている。そんな山口さんが好きなキャラクターは、スポーツ用品店の店長。「先見の明と計2足のバッシュを30円と100円で手放す神対応っぷりに感動しました。海南大附属との予選決勝リーグで、パスミスをして敗退したチームの責任を追って、桜木が坊主にし、チームに復帰するまでの一連の流れも好きです」。
ミシェル/「ベベ」エクスクルーシブ・ディレクター
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ビンテージショップ「ベベ(BÉBÉ)」を主宰し、20代から支持を集めるインフルエンサーのミシェル(Michelle )さん。鮮やかなピンク色のシャツで差したパンツスーツの着こなしに、“メゾン シャトー ルージュ×ナイキ エアジョーダン1 ミッド SE(MAISON CHATEAU ROUGE × NIKE AIR JORDAN 1 MID SE)”を選んだ。「3年ほど前にパリに滞在していたとき出合ったのがきっかけ。“ジョーダン”のミドルカットはもともと形が大好きで、これは淡い色合いに、タンの赤いステッチが効いているところに引かれました。まわりと被らないのも愛用ポイントです」。
「好きなキャラクターは桜木花道です。怖いもの知らずの負けず嫌いなところなど、悔しいと思ったら惜しまず努力するところ。まぶしいくらい真っすぐな性格に心をつかまれましたね。彼のやっている『好きなことを楽しむ』って、実は続けることがとても難しい。それでも諦めずに続けている姿勢に感心します」。
奥冨直人/「ボーイ」ショップオーナー
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渋谷に店舗を構えるセレクトショップ「ボーイ(BOY)」オーナーで、DJとしても活動している奥冨直人さんが提案するのは、“コンバース オールスター ハイ(CONVERSE ALL STAR HI)”。「このモデルを初めてゲットしたのは小学校6年生の頃。当時、自分の中で一番バスケに熱中している時期だったのですが、それよりもたくさんのミュージシャンが履いていることに影響を受けて、これまでに各色、何足と買ってきました」。この靴はおよそ10代目で、2019年頃から愛用している。シンプルな見た目でコーディネートしやすく、すっきりとしているのにロックな雰囲気があるところが魅力だそう。刺しゅうや染めを得意とするブランド「ベビ(BEBI)」のスエットに、日本のギャルファッションをけん引してきた「ココルル(COCOLULU)」のデニムを合わせ、カルチャーも時代もミックスしたアメカジスタイルを披露。小物は「コロンビア(COLUMBIA)」のキャップと「マルニ(MARNI)」のバッグで色を統一している。
「三井寿の、人として真っすぐで熱い性格や不器用なところも人間らしくて好き。彼には、物語が進めば進むほど魅力を感じます」と奥冨さん。「シーンで言うなら、ベタだけど、『安西先生...!!バスケがしたいです......』。葛藤、挫折、苦悩、その先に溢れたバスケと安西先生への思いが染み渡っていて、鳥肌が立ちます」。
32/「タロ」美容室オーナー、美容師
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小学生の頃、お兄さんの部屋で読んだことをきっかけに、「スラムダンク」にハマったという美容師の32(ミツ)さん。「いつ読んでもドキドキするし、時を経てもキャラクターのヘアスタイルが色褪せないことも魅力」と話す。愛用シューズは“ ナイキ エア ジョーダン1 レトロ ハイ OG ルーキー オブザ イヤー(NIKE AIR JORDAN 1 RETRO HIGH ROOKIE OF THE YEAR)”。「サッカー部出身でバスケについて詳しくないくせに『スラムダンク』が大好きだから、王道の形と配色を履くのが経験者に対して申し訳なくて(笑)。これはマイケル・ジョーダンが新人賞を受賞した時に着用していたジャケットからインスパイアされたもの。後ろめたさが少なくていいんです」。32さんは、“湘北カラー”と言われる赤と黒のシャツをジャケットの下に取り入れたコーデを披露した。
お気に入りキャラクターは、“ゴリ”の愛称で親しまれる赤木剛憲。陵南戦の終盤に木暮が3ポイントシュートを決めた後、赤木と木暮がハイタッチをするシーンが印象に残っているそう。「3周まわって彼が好き。誰よりも情熱があって、バスケにも人にも真っすぐなところが特に引かれます。18歳で『たわけ』と訛りを使うところもチャーミング。話をリードする彼がいるからこそ、ほかのキャラクターが生かされている気がします。山王戦のタイムアウト時のベンチで、円陣を組むシーンがあります。『オレたちゃ別に仲良しじゃねえし、お前らには腹が立ってばかりだ。だが...(このチームは......最高だ......)』と赤木が言うセリフに、同作のすべてが詰まっていると思います」。