フランス発香水「ニコライ(NICOLAI)」は、家族経営のフレグランスブランドだ。同ブランドの創業者兼マスターパフューマーであるパトリシア・ド・ニコライ(Patricia de Nicolai)は、ゲラン一族で香水に囲まれて育ったが、「ゲラン(GUERLAIN)」を継ぐことはなかった。その代わりに、自己表現として1989年に夫と「ニコライ」を創業。自由につくりたい香りを制作して世界中で販売している。
日本では、ノーズショップが販売を担当。11月に来日したパトリシアの息子であるアクセル・ド・ニコライ(Axel de Nicolai)=ニコライ最高経営責任者に話を聞いた。
WWD:今回の来日の目的は?
アクセル・ド・ニコライ=ニコライCEO(以下、ニコライ):4年間ノーズショップとコラボレーションしているが、コロナで来日できなかった。今回が初来日だ。
日本は、最も訪れたいと思っていた国。知れば知るほど豊かな文化があり、フランスに近いと感じる。
WWD:「ニコライ」のブランド哲学は?一番の強みは?
ニコライ:家族経営である点。母がゲラン一族だったため、調香師になり父母がブランドを始めた。彼らはアーティスティックで、好きなものをつくって提供するという点。私は香水の勉強を始め、マーケティングが主導の商材だと知った。この小売価格にするために、コストはこの程度といったような制限がある。だが、「ニコライ」はそれらの制限なく自由に香水がつくれる。それがいいビジネスになっている。多くのブランドは外注しているが、われわれは、素材に関してはグラースの最高の素材を直接仕入れている点も強みだ。
WWD:ゲラン一族であることが「ニコライ」にどのような影響を与えているか?
ニコライ:祖母は今でも「ゲラン」の香水を付けているし、一族から受け継いでいることもあり、それが影響しているのは間違いない。ただ、母親は一族として「ゲラン」を継がず、自分自身の表現として「ニコライ」を創業した。
WWD:調香師の母の元でどのように育ったか?印象に残っている香りの思い出は?
ニコライ:香水に囲まれて育つのが当たり前のことだった。母がアトリエで調香する姿を見ながら育った。それは日常的なことで、7〜8歳頃から香りに興味を持ち始めた。子どもの頃はバニラのおいしそうな匂いが好きだった。小さく切ってあるハーブの香りも気になった。いろいろな思い出がある。
WWD:素材の調達と生産はどこで行うか?生産は自社工場か?
ニコライ:素材はグラースを中心に調達するが、他の国から購入することもある。素材はナチュラルなものにこだわっている。生産は全て自社で。パリのアトリエで調香して、パリ南部の自社工場で生産している。昔ながらの製法で生産し、ボトル詰めまで全て手作業で行う。
WWD:現在何カ国で販売しているか?好調な市場は?
ニコライ:ほぼ世界中で販売している。パリには8店舗、ロンドンに2店舗直営店がある。他、各地のパートナーを通して販売している。自社ECもある。好調な市場はフランス・パリはもちろん、サウジアラビアや韓国なども好調だ。
WWD:日本での販売戦略は?
ニコライ:ノーズショップといういいパートナーがいる。彼らの選りすぐった香水のラインアップや販売方法はとてもいいと思う。日本人はデリケートな香りが分かると思うので、伸び代がある市場だと期待している。
WWD:香りという感覚的なものをどのように消費者に手に取ってもらうか?
ニコライ:難しいが、選択肢を多く提供することにより、好きな香りを見つけてもらいたい。まずは、好きな香りを見つけて、楽しみ方を覚えてほしい。例えば、今日はこの香り、この時間にはこの香りというようにその時の気分にあう香りを、好奇心を持って楽しんでもらいたい。日本人は繊細な感覚を持っているので、それが可能だと思う。
WWD:あなたにとって香りとは?
ニコライ:ファッションのように自分を表現するもの。季節やオケージョンに合わせて着替えるように、香水も着替えてもらえれば。