ファッション

南青山のセレクト店「アデライデ」 30年間も唯一無二であり続けられる理由は“周年”にあり

 ザ・ウォールが運営する東京・南青山のセレクトショップ「アデライデ(ADELAIDE)」がリニューアルオープンした。1階にオーガニックなボディーケアアイテムやキャンドルなどを扱う“セルフラブズ(Self LOVES)”コーナーと、家具やインテリアアイテムのコーナー“ホームメゾン(Home-Maison)”を新設。コロナ禍を受け、コスメや家具を扱うようになったショップは少なくないが、エッジの効いた商品セレクトには他店にはない「アデライデ」らしさがあふれている。昨年オープン30周年を迎え、リニューアルはそれを記念したもの。神宮前の姉妹店「アディッション アデライデ(ADDITION ADELAIDE)」も今年20周年を迎えた。

 両店はこれまでも、周年に合わせて店舗移転やイベントを行ってきた。「アデライデ」25周年記念で行った、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のアーカイブジュエリーのチャリティーインスタレーション(2016年12月)などは記憶に新しい。「周年に合わせてわれわれがイベントを行うのは、たとえるなら伊勢神宮の式年遷宮と同じ。創業当初の姿勢やコンセプトに立ち返ると共に、セレクトショップとしてのあり方を見直してお客さまの意向に応えていく。もちろん、スタッフの学びの機会にもなる」と、長谷川真美子クリエイティブディレクターはリニューアルの意図を話す。

 リニューアルの目玉である“セルフラブズ”のコーナーは、「コロナ禍でうわべの美しさではなく、精神的に豊かに生きることの価値を私自身強く感じるようになった」ことが企画の出発点だ。商品の選定や買い付けをリードしたのは、長谷川クリエイティブディレクターの実娘で両店のディレクターである長谷川左希子氏。内覧会前に取材に訪れると、左希子ディレクターと若いスタッフたちが緊張感の中でテキパキと準備を進めていた。周年に合わせたリニューアルやイベントが店のコンセプトや具体的なオペレーションをスタッフが学ぶ機会になっているというのは確かで、「式年遷宮」のたとえもうなずける。

希少性を伝えることで、技術を守る

 “セルフラブズ”コーナーは、1階奥の空間をグリーンのガラスで囲い、商品を陳列している。ブランドはオーガニックな精油を扱う米「キンドレッド ブラック(KINDRED BLACK)」やキャンドルの米「ジャニー コーン(JANIE KORN)」、ハンドメイドの陶器類のトルコ「セダ セナー(SEDA SENER)」など約30。初上陸ブランドも多く、エクスクルーシブ商品も企画した。例えば「キンドレッド ブラック」のエクスクルーシブ商品は、コールドプレスで抽出した植物性オイルを小さく繊細な吹きガラスのボトルに詰めたもの(税込3万800円)。パッケージもプラスチックフリーでゴミを減らすことを追求している。ほかも、見た目が美しくユニークで、サステナビリティにも配慮した商品がそろう。

 「ファッションはサステナビリティの観点から負荷の多い産業と見られることが多いが、(希少性を追求した商品をそろえ、売り切ることに注力している)われわれはそうは思わない。少数生産された商品の価値をお客さまに伝えていくことは、生産者や職人の雇用を守り、技術を伝えることにつながる」と長谷川クリエイティブディレクター。「われわれが販売しているものは安い商品ではない。でも、それを買ったことでお客さまが『また明日から頑張ろう』と思って、大切に使い続けてくださるのなら、それはとてもウェルビーイングだと思う」と続ける。

 “ホームメゾン”のコーナーは、中心顧客である近隣に住む高感度富裕層から「家具でいいものを知りたい」という要望が多かったこともあって新設した。リニューアルを記念して、モダニズム家具の名手であるジョルジ・ザルツパン(Jorge Salszupin)のコーヒーテーブル(203万5000円)やアームチェア(242万円)を販売している。また、家具の産地として知られる広島・府中の職人と取り組んで、ザ・ウォールの姉妹会社がキュレーションする収納家具も製作した。顧客の要望に合わせ、サイズや使用木材をカスタマイズして受注販売する。ほか、ミッドセンチュリーの家具に合うテーブルウエアやラグ、スリッパなどもそろえる。

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