ファッション

「デルヴォー」が表参道ヒルズに旗艦店をオープン CEOが語る戦略と展望

 ベルギー・ブリュッセル発のラグジュアリーレザーグッズブランド「デルヴォー」は12月3日、東京・表参道ヒルズに新たな旗艦店をオープンした。パリのサントノーレ通りやニューヨークの五番街などブランドを代表するショップ同様に独自の魅力を放つ新店舗は、ジャン=マルク・ルビエ最高経営責任者(CEO)のクリエイティブなアイデアに基づいた空間デザインが特徴。伝統的な要素に現代的な解釈を加えることで、新旧が入り交じる表参道の二面性を反映している。来日したルビエCEOに、そこに込めた想いから、戦略や今後の展望までを聞いた。

ブリュッセルと東京の
架け橋になる旗艦店

 「デルヴォー」の各店舗は、それぞれ異なるコンセプトで作り上げられている。2フロアからなる表参道ヒルズの新旗艦店は「ブリュッセルと東京の架け橋をイメージした」とルビエCEOは話す。その最大の特徴は、店内の吹き抜けと壁面を生かし、美しい歴史的建造物に囲まれたブリュッセルの象徴的な広場、グラン・プラスを再現しているところだ。また、白を基調にした空間には、17世紀のフランドル地方の家具からヒントを得たキャビネットや、美しい装飾が目を引く階段、有機的なラインを描く調度品を配置。邸宅のような心地よい雰囲気を醸し出している。

 表参道は、「デルヴォー」にとって2014年に日本初の店舗を構えた場所。「表参道は日本のファッションの象徴であるだけでなく、並木道になっていたり、近隣に根津美術館があったりと自然を感じられる散歩道でもある。新たな旗艦店を設けることで、このエリアに今一度貢献したかった」と、出店の理由を語る。そんな店舗の幅20mに及ぶガラス張りのファサードには、ブランドのシグネチャーである王冠から着想を得た木のモチーフを施し、表参道へのオマージュを表現。2階からは、季節によって姿を変える雄大な木々や美しい景色を眺められるようになっている。「この店のキーワードは、人と人や場所、伝統と現代性など、さまざまな“つながり”。お客さまには、“驚き”と“ホッとするような居心地の良さ”を感じてもらいたい。それが会話を生み出すことになるだろう。ショップではあるが意識しているのは、店を超えたコミュニケーションの場。製品を販売するだけでなく、訪れた人に『デルヴォー』の歴史や伝統、ノウハウを伝えていくという役割を担っている」という。

「世界最古の
ラグジュアリーレザーグッズブランド」

 「『デルヴォー』との出合いは約30年前。出張中に訪れた銀座の和光だった。ブランド名も知らなかったが、オリジナリティーがあり、素晴らしいものだったことを覚えている」と振り返るルビエCEOは、11年に自身が設立した投資ファンドのファースト ヘリテージ ブランズで、倒産の危機に瀕していた「デルヴォー」を買収。「卓越性」を軸にした大胆な戦略と緻密な行動計画によって売り上げを伸ばすとともに、わずか3%だったという海外の売り上げ構成比率を90%に高め、インターナショナルブランドとして再興させた。

 その成功については、「『デルヴォー』は、1829年に創業した世界最古のラグジュアリー・レザーグッズ・ブランド。そして、自社のアトリエでバッグを作り続けてきた深い歴史がある。ただし、ストーリーがあるだけでは十分ではなく、それだけは博物館のようになってしまう。重要なのは、それを元にブランドの“今”を作り上げ、未来に向けて積み重ねていくこと。そこには、オリジナリティーが欠かせない。『デルヴォー』では、バッグの内側にも外側と同じくらい上質なレザーを使用する。そして、その卓越性を軽やかかつプレイフルに表現することを大切にしている」と説明。「人気を博している“ブリヨン”や“タンペート”といったバッグは現代を象徴する製品だが、その背景にはデザインにおいても、ノウハウにおいても、ブランドの歴史が詰まっている。伝統と革新性の融合によって、今が築かれている」と続ける。

 そして、2021年6月にはコンパニー フィナンシエール リシュモンの傘下に入った。その経緯については、「11年のファースト ヘリテージ ブランズによる買収当時から、いずれは長期的な成長のために大きなグループに属することが賢明だと考えていて、引き継ぐのにふさわしい時期が来た」と明かす。

日本での商況は
「傑出している」

 「デルヴォー」は現在、日本国内では東京、大阪、京都に6店舗を構えている。「日本はとても重要なマーケットで、ブランドへの意識が高い。しかし、実用性を兼ねた美しさとクオリティーがなければ、日本人には受け入れてもらえない」と分析しつつ、22年の商況については「傑出している」とコメント。「全ての店舗が好調で、性別を問わず幅広い年代のお客さまに愛されている」と付け加える。今後に関しては、「福岡や名古屋、横浜などへの出店も検討しているが、むやみに多店舗化するつもりはない。適切なタイミングとロケーションを見極めつつ、それが整った時にだけ進めていく」と、一歩ずつ着実に発展させていく考えだ。

 日本以外で市場規模が大きいのは韓国、中国、ベルギーだが、世界から観光客が集まる主要都市に旗艦店を構えるイタリア、フランス、イギリス、そしてアメリカの成長も著しく、今後の拡大が期待されるという。また、中東市場には今年、アラブ首長国連邦のドバイにショップをオープンして参入したばかり。来年には、サウジアラビアの首都リヤドにも出店予定だ。「現在の店舗数は全世界で57と、他のブランドに比べると少ない。しかし、『デルヴォー』が本格的に海外市場に打って出たのは、この10年のこと。明確な成長戦略と行動計画はグローバルで考えているが、各店舗が同じフィロソフィーを掲げながらも異なる独自の個性を持っているように、価値観や目標を共有しながら、それぞれの市場に合わせた取り組みを行っていく」。

INTERVIEW & TEXT : JUN YABUNO
問い合わせ先
デルヴォー・ジャパン
03-6432-9125