ファッション

「ルイ・ヴィトン」の会長兼CEO、ヴァージル・アブロー亡き後について語る カール・ラガーフェルドとの思い出も

有料会員限定記事

 米「WWD」は、「アパレル&リテールCEOサミット 2022(WWD Apparel and Retail CEO Summit 2022)」を10月25~26日にニューヨークで開催した。業界をビジネスおよびクリエイティブ面でけん引する、ラグジュアリーブランドの最高経営責任者(CEO)やクリエイティブ・ディレクターらが登壇。テーマである“アジリティーの時代:今後の道筋”を軸に、さまざまな対話が行われた。その中から印象的だったものを編集部がピックアップ。今回は、ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)のマイケル・バーク(Michael Burke)会長兼CEOのパネルを紹介する。(この記事はWWDジャパン2022年12月12日号からの抜粋に加筆をしています)

 ラグジュアリーブランドを成功裏に導き、さらに成長させる秘訣は何だろうか。確たる正解のない難問だが、バーク会長兼CEOは、間違いなくこの秘訣を知る人物の一人だろう。LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)のベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長兼CEOが率いる一族の持株会社グループ アルノー(GROUPE ARNAULT)に入社後、「ディオール(DIOR)」「フェンディ(FENDI)」「ブルガリ(BVLGARI)」とLVMHが擁するブランドの要職を歴任し、13年に現職に就任。アルノーLVMH会長兼CEOの信頼に応え、「ルイ・ヴィトン」のさらなる発展に尽力している。

 CEOの役割は幅広く、その重責は相当なものと推察されるが、ラグジュアリーブランドのトップに就任した際には、まず何をするべきなのだろうか。バーク会長兼CEOは、「何を捨て、何をキープするかを最初の5年で決定することが非常に重要だ。私の経験上、これはおおよそ半々ぐらいになるものだが、簡単そうに見えて実に難しい。自分の経験と直感を頼りに取捨選択をするしかない上、判断が正しかったのかは後にならないと分からない。しかも『ルイ・ヴィトン』のように歴史の長い巨大なブランドの場合、選択するに当たって膨大な量の資料やアーカイブを深掘りする必要がある」と語る。

ヴァージルは“唯一無二の存在”

 21年11月、「ルイ・ヴィトン」のメンズ・アーティスティック・ディレクターだったヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)ががんのため急逝した。「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」の創業者でもあるスターデザイナーの後任に誰が選ばれるのかは業界でも注目されているが、急ぐつもりはないとバーク会長兼CEOは言う。「われわれは“ヴァージルの代わり”を探しているわけではない。彼はユニークで、唯一無二の存在だった。また、仮に“亡くなった時点でのヴァージル”のような人物がいたとしても、その人を後任にするのは間違っている。私たちが4年前に起用したヴァージルと、亡くなったときのヴァージルは別人だからだ」と述べ、ヴァージルが「ルイ・ヴィトン」で行った初めてのキャンペーンを例に説明した。「キャンペーンにはぶかぶかのセーターを着た子どもが登場するが、象徴的だと思う。当時、ヴァージルは『ルイ・ヴィトン』のビジネスに関してまだ子どものようだったものの、やがてそのセーターがぴったり似合うほどに大きく成長した。難題だが、そうして時間をかけて成長していく人物を起用したい」。

 ヴァージルもまた、アーティスティック・ディレクターとして取捨選択を迫られたはずだとバーク会長兼CEOは話す。「『ルイ・ヴィトン』の何を残し、何を変革するか。ブランドにとってアジリティー(変化に機敏に対応できること)は重要だが、クリエイティビティーもやはり重要だ。クリエイティビティーは一過性のトレンドに左右されるものではないので、アジリティーとは相いれない部分もある。しかし、両者のバランスをうまくとれば、(ブランドは)滑らかな車輪のように動き出す。ヴァージルの成功の大部分は、このシンプルな事実を深く理解していたことによると思う」と、サミットのテーマに沿って解説した。

この続きを読むには…
残り2274⽂字, 画像3枚
この記事は、有料会員限定記事です。
紙版を定期購読中の方も閲覧することができます。
定期購読についてはこちらからご確認ください。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

リーダーたちに聞く「最強のファッション ✕ DX」

「WWDJAPAN」11月18日号の特集は、毎年恒例の「DX特集」です。今回はDXの先進企業&キーパーソンたちに「リテール」「サプライチェーン」「AI」そして「中国」の4つのテーマで迫ります。「シーイン」「TEMU」などメガ越境EC企業の台頭する一方、1992年には世界一だった日本企業の競争力は直近では38位にまで後退。その理由は生産性の低さです。DXは多くの日本企業の経営者にとって待ったなしの課…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。