本来、大切な服やアクセサリーは「手入れをしながら長く着る。誰かに引き継ぎ長く身に着けてもらう」ことがサステナブルのはず。にもかかわらず、百貨店においては長年、リセールは取り扱いが難しいテーマだった。そこに風穴を開け、新しい価値を創造しているのが、三越伊勢丹の買い取りサービス「アイム グリーン(i’m green)」だ。2021年10月に本格始動して約1年がたった現在、その手応えやリセールを通じて実現したい未来のマーケットについて、キーマンの2人である大塚信二=三越伊勢丹 デジタル事業運営部 アイム グリーン マネージャーと、嵜本晋輔バリュエンスグループCEO兼バリュエンスホールディングス社長に聞いた。
(この対談は2022年11月25日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット」から抜粋したものです。下記の関連記事から期間限定で動画でも視聴できます)
全国初、百貨店直営の買い取りサービス
向千鶴WWDJAPAN編集統括兼サステナビリティ・ディレクター(以下、WWD):まず、「アイム グリーン」について改めて教えてください。
大塚信二=三越伊勢丹 デジタル事業運営部 アイム グリーン マネージャー(以下、大塚):「アイム グリーン」は、三越伊勢丹が2021年の10月にスタートした、百貨店直営としては全国初の買い取り・引き取りサービスです。買い取りはあくまで手段で、買い取り後にもう一度、伊勢丹新宿本店や日本橋三越本店で経済循環してもらうことが目的です。買い取ったものは、買い取り専門店を運営するバリュエンスホールディングス(以下、バリュエンス)と協業して国内外で販売し、リユースしながら資源循環していく――この二つの役割を果たしています。本取り組みは、お客さまのクローゼットに眠っているものを私たちに預けてもらい、整理のお手伝いをすることを主眼に置いています。
私たちが百貨店運営という“信頼ののれん”の下、お客さまからご要望をいただいて買い取り、買い取り後は即日現金で戻す仕組みにすることで、もう一度伊勢丹新宿本店や日本橋三越本店で買い物をしていただき、経済循環することが可能になりました。データによると、お客さまの9割以上が現金化した当日に同額の新しい買い物をしています。今後、キャンペーンを打ったり、ポイントバックしたりすることで、この経済循環がさらに広がっていくのではないかと思っています。
WWD:買い取れない場合の対処は?
大塚:中には値段が付かないものやリセール価格が数百円になってしまうものが持ち込まれることもあります。その場合は無償で引き取ったり、数百円での買い取りを選んでもらったりしています。無償で提供してもらったものに関しては、捨てずに違う形に転用する方法として、リメイクや素材提供を始めました。今年9月には、東京都立青山高等学校に素材を提供し、文化祭で生徒の皆さんに衣装にリメイクしてもらいました。ファッション業界のデザイナー育成につながるようなリメイクの授業などに生かせないか、学校法人と話をしながら計画中です。
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