「CFCL」は今年、公益性の高いビジネスモデルを証明する国際認証「B コープ」を国内アパレルとして初めて取得した。サステナビリティを前提としたクリエイションを追求する「CFCL」の価値観は、ファッションを楽しみながらも、サステナブルな選択肢を求める若い世代からも支持を得る。Z世代でモデルのトラウデン直美と、高橋悠介「CFCL」代表兼クリエイティブ・ディレクターが、未来のファッションについて語った。
(この対談は2022年11月25日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット」から抜粋したものです。下記の関連記事から期間限定で動画でも視聴できます)
向千鶴WWDJAPAN編集統括サステナビリティ・ディレクター(以下、WWD):高橋さんには2020年のサステナビリティサミット第1回にもご登壇いただきました。そのときはまだブランドは始めたばかりでしたが、その後の活躍はめざましく、例えば2021年には「毎日ファッション大賞」の新人賞・資生堂奨励賞、「FASHION PRIZ OF TOKYO 2022」を受賞されました。ご自身で振り返っていかがですか?
高橋悠介「CFCL」代表兼クリエイティブ・ディレクター(以下、髙橋):今年はパリ・ファッション・ウイークにも参加でき、店舗のオープン、「B コープ」認証取得と、グローバルで戦うために必要なベース作りができました。今までは助走期間で、これからはようやく本当のスタートが切れると思っています。国内でのブランドの認知度は高まってきましたが、海外はまだまだ。ここから新参者としてしっかりアピールしていきます。
WWD:「CFCL」は創業当初からサステナビリティをブランドのDNAとして捉えていますね。
高橋:最初のインタビューで「Bコープ」認証の取得を目指すと公言したり、再生素材を使用したりしていることで、メディアにはサステナブランド代表のような位置づけで取り上げられがちですが、基本的にはクリエイションを押すブランドになりたくて。図らずしてサステナブランド的になってしまったところはあります。
WWD:でも、それはサステナビリティが大前提のクリエイションという意味ですね。トラウデンさんは「CFCL」にどんなイメージをお持ちですか?
トラウデン直美(以下、トラウデン):まさに今おっしゃっていたことが、私が「CFCL」を好きな理由につながります。私は「CFCL」のサステナブルな背景を、商品を手に取った後に知りました。それがすごく良かった。サステナビリティを当たり前と捉えているブランドはまだそんなに多くない中で、そこを前提に面白いもの、いいもの、楽しいものを作りたい気持ちが伝わってくるのですごく信頼感があります。
高橋:ありがとうございます。ファストファッションブランドでかわいいワンピースが1万円で売っている一方で、「CFCL」のワンピースは7〜8万円。サステナブルという言葉がなかった時代は、その差分には何があるのかをさまざまな角度から説明しました。でも、今はサステナブルという言葉一つで理解してもらえるので、楽になったかなと思います。
WWD:今年のパリ・ファッション・ウィークの初日にはブランド設立以来初となる、リアルなモデルが着用したプレゼンテーションをパリのパレ・ド・トーキョーの会場で披露しました。ショーのテーマは?
高橋:テーマは、「ニットウェア ブループリント」。「ニットウエア」は毎シーズンテーマに掲げているもので、ブループリントは青写真・未来の設計図という意味です。パリ・コレクションはフランスのオーセンティックなエレガンスとどう向き合うかが試されるところです。そこで、1960年代のイヴ・サンローランをはじめフランスのエレガンスを作ってきた巨匠たちの服をレファレンスに、コンピュータープログラミングニットでアップデートすることを試みました。家で洗濯できる、あらゆる体形にフィットする、そして全てが再生素材であるという、当時はできなかった要素で新しさをアピールしました。
WWD:演出も印象的でした。
高橋:SF的な世界観を意識しました。会場の演出は、ドイツ在住のアーティスト、ナイル・ケティングさんにお願いしました。彼に「CFCL」の服は実は全部ペットボトルでできているという話をすると、彼はプラスチックの惑星、プラスチックプラネット、略してPLAnetという設定を作ってくれたんです。その惑星にお客さまをいざなうというストーリーです。
WWD:面白い。
高橋:スピルバーグやピクサー、ディズニーの作品のようにワクワク感があるけど、社会問題にも触れていて作品を見終わった後に、何か気付きを得られるような経験をしてほしかった。
WWD:観客の前で1回きりのパフォーマンスとして服を見せる見せ方はやはり違いますか?
高橋:お客さまからの質問を直接受け「鮮やかな発色はポリエステルの最大の特徴です」「私たちの惑星のブループリントを作る上で、プラスチックに背を向けることはできないのではないか[岩崎1] というメッセージを添えています」など、分かりやすく説明できました。
トラウデン:サステナブルの文脈では、プラスチックが悪になりがちですが、共生する必要があり、そのための道を探さなければいけないというメッセージはすごく響きますね。
WWD:バイヤーさんの反応は?
高橋:実は6月のプレコレクションのタイミングでもパリのショールームで発表しました。今回5シーズン目になりますが、ようやく日本よりも海外の売り上げが大きくなりました。セルフリッジやノードストローム、レーン・クロフォードなどのバイヤーが評価してくれたことに、ポテンシャルを感じました。
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