「WWDJAPAN」のソーシャルエディターは毎日、TwitterやFacebook、Instagram、そしてTikTokをパトロールして、バズった投稿や炎上、注目のトレンドをキャッチしている。この連載では、ソーシャルエディターが気になるSNSトレンドを投げかけ、業界をパトロールする記者とディスカッション。業界を動かす“かもしれない”SNSトレンドの影響力や、投稿がバズったり炎上してしまったりに至った背景を探る。今、SNSでは何が起こっているのか?そして、どう向き合うべきなのか?日々のコミュニケーションのヒントにしたい。今回は、資生堂の買収以来、なんだかおとなしかった「ドランク エレファント」のお話。
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> Vol.10 化粧品の“成分ブーム”による人気インフルエンサーの変化【SNSトレンドに、業界は「どうする」?】
ソーシャルエディター浅野:資生堂が2019年に買収し、21年10月に日本上陸したアメリカ発のスキンケアブランド「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」がSNSで話題になっています。上陸が決まった当時は、業界では話題になりましたが、一般消費者の反応は今ひとつでした。しかし、ここ最近でバズが一気に広がり、一部製品は欠品が続いて入手困難なほどです。きっかけはTwitterでのバズ、そこから美容系のインフルエンサーがこぞって紹介して人気が広がりました。「ドランク エレファント」は環境や肌へのやさしさに配慮した処方で成分にもこだわっていることもあり、昨今の成分ブームも追い風になったようです。正直なところ、最近まで目立ったトピックを聞くことがなく、「日本向けじゃないのかな?」と見ていました。価格も美容液やクリームが5000〜1万円前後となかなか高額。新製品が頻繁に出るブランドでもないのでメディア掲載の機会も少ない中、地道な努力が実ったのか、それともトレンドがブランドコンセプトに追いつくまでを見越した資生堂の戦略勝ちなのか?なんて考えています。
記者村上:私はまだ、その熱気を体感するまでには至っていません。Twitterで検索してみたけれど、桜田通さんが出演したライブ配信のプレゼントキャンペーンに関する投稿が目立ちました。でも新製品は多くないけれど、シーズンごとのキットはポップなパッケージも含めてキャッチーですね。特に最近のキットはミニサイズの詰め合わせも多く、お試し機能も果たしているのかな?って思います。
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でも正直、日本の大手はD2Cブランドの育成がそんなに上手じゃないなと思っています。「ドランク エレファント」も、日本市場で今以上に成長するには、大手は経験したことがないかもしれないさまざまな努力が必要でしょう。逆を言えば、未経験だった努力がようやく結実してきたのかもしれません。コーセーの「タルト(TARTE)」も、買収時の企業サイドの熱狂はすごかったし欧米での売り上げは順調のようですが、日本ではまだメジャーな存在とは言い難いですよね?
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花王がメンズに向けてローンチした「アンリクス(UNLICS)」も、コンサバな花王がメンズにベースメイクまで提案しようと一歩踏み込んだ点で拍手喝采だけれど、これをD2Cで売るのは簡単じゃありません。正直、パッケージは少しおとなしかった。ベースメイクで3000円という価格設定は、メンズブランドとしてもD2Cの中では決して安くなく、想いやこだわりを、どこまで経験値の少ないD2Cで伝えられるのか、手腕に注目です。
浅野:桜田通さんはラグジュアリーブランドのスナップの常連ですし、ファンの熱量が高いのでかなりの拡散力を持っています。ホリデーコレクションのタイミングもありますが、ブランドも「今だ!」と感じているからこその起用かもしれません。D2Cブランドは消費者との密なコミュニケーションが重要ですが、大手だからこそ、そういったコミュニケーションは簡単じゃありませんよね。ただ上述の成分ブームの影響力は見過ごせません。とくにバズっているのは、肌にハリや弾力を与えるペプチドをメインとした同じラインのクリームと美容液“プロティニ ポリペプチド クリーム”と“プロティニ P ペプチド リサーフセラム”です。ペプチドはメジャーな成分ではありますが、これまでは「なんかいいんだろう」程度の認識でした。しかし、成分ブームで消費者は今、レチノールやナイアシンアミド、ビタミン、セラミドなどを筆頭に、それらがどう働き、どんな肌悩みに合っているのかまで気にするようになり、「なんとなく」が明確になってきています。「ドランク エレファント」は肌悩みや肌質に合わせて製品を細分化しており、“今、自分に必要なケア”がとてもわかりやすい点が消費者に刺さっているのではないでしょうか。加えて、シンプルで効率的なスキンケアにも注目が集まっています。シンプルで効率的なスキンケアは「効果実感」とほぼイコールで、消費者は無駄なく正解に辿り着きたいんだと思います。
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