いまZ世代の支持を最も集めている街の一つが、東京・下北沢である。安田氏は下北沢に今年開業した商業施設のプロデュースを担当した。どんな考えで臨んだのか。(この記事はWWDジャパン2022年12月19日号からの抜粋です)
東京・下北沢に3月30日オープンした商業施設「ミカン下北」のプロデュースを手掛けた。京王井の頭線の高架下を中心とした区画に、飲食や書店、シェアオフィス、世田谷区が運営する図書館カウンターなどを集積。飲食や物販だけでなく、働く人や住む人が日常的に利用できる施設となった。
館の中だけで完結するのではなく、高架横の道路に対して、オープンに店舗や出入り口を配置することで、街と融合し回遊できる動線を作った。開業から9カ月過ぎた今も多くの人で賑わっている。
足かけ4年のプロジェクトで掲げた開発ビジョンは、進化(evolution)、深化(deeper)、真価(value)の「3つのシンカ」。進化と深化で下北沢にしかできないオンリーワンを作る。そして開発者の京王電鉄とともに、一番大事にしたのは真価だった。商業の再開発では、収支上どうしても建築コストを抑えようとする。必然的に同じような仕様やデザインになっていく。そして売れ筋のテナント、つまり賃料負担ができるテナントを呼ぼうとするため、同じような街並みと施設にならざるを得ない。人気あるテナント側からすれば、全国から出店依頼が来る、つまり引く手あまたになるので、借り手市場になる。結局デベロッパーはリーシングに苦戦し、家賃も最初の想定を下回る。もっとひどい場合はリースアップできない事態になる。
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