12月17日、RTFKT(アーティファクト)によるプロジェクト「クローン X(CLONE X)」のNFT所有者に向けたイベント「クローン X トーキョー(Clone X Tokyo)」が渋谷のクラブキャメロット(CLUB CAMELOT)で行われた。
RTFKTはファッション関係のNFTを手掛けるスタートアップ企業で、2020年1月に立ち上げられ、昨年ナイキによる買収を発表。「クローン X」はクローン化した人間をテーマにしており、クローン=アバターは目、口、ヘルメット、服がランダムに組み合わされ、その組み合わせによって希少価値や人気が異なる。アバターは自由にカスタマイズし、ゲーム「サンドボックス(The Sandbox)」で使用することも可能だ。「クローン X」のNFTの最低価格は12月19日時点で6.02ETH=日本円で約100万円で、現在約1万人が所有している。2万体中、約3000体のクローンが村上隆のコラボレーションにより生まれ、コラボクローンのホルダーは村上のNFT「ムラカミ フラワーズ(Murakami.Flowers)」のセール優先参加権が得られる。
今回のイベントはRTFKTのファンから有志を募り企画・開催した、「クローン X」のホルダーと同行者“プラスワン”1人のみが参加できるクローズドのパーティー。このようなコミュニティ主導のイベントは世界中で開催されている。主にファンアートを手掛けるクリエイターの展示や、ホルダー同士の対面交流が目的だ。「クローン X」は人気のNFTプロジェクトで高額で取引されており、ホルダーはWeb3.0セレブと呼ばれるほど。来場者も富裕層が多く、世界的に有名な某日本アーティストも来場していた。日本では過去に数回開催されているが、これまでで最も規模が大きく、オープン直後から多くの人々が詰めかけた。
筆者はというと、クローンを保有していないどころか、恥ずかしながら全てにおいて「それって一体何なの?」というレベル。知人クリエイターの“プラスワン”として参加したはいいが、人も情報量もあまりに多く大混乱。ざっと見たところ来場者の半数近くが日本在住の外国人で、日本語よりも英語が飛び交っている印象だ。バーカウンターへ行くと、この日のためのオリジナルカクテルメニューが種類豊富にラインアップ。物販ブースにはNFCカードを模した人気クリエイターのトレカやオリジナルTシャツが並び、事前予約したホルダーにプレゼントされた。
会場には国内外のクリエイター作品が展示され、中でもナイキ傘下のRTFKTのプロジェクトということもあり、「ナイキ(NIKE)」のスニーカーに関連する作品が多く見られた。
来場者は皆、自身のNFCカードを見せ合い、クローンではなくリアルな人間としての初対面を楽しんでいた。NFCカードは「クローン X」のホルダー向けに配布されているもので、裏面には自身のツイッターに遷移するQRコードが印刷してある。内蔵されているNFCチップには各々のオープンシー(Opensea)リンクが書き込まれていて、会場の召喚ブースにかざすことで自身のクローンを召喚することが可能だ。この召喚を体験した人には「クローン X」のTシャツ、トレカ、オリジナルどら焼きなどが入ったオリジナルトートバッグがギフトされた。
主催者や展示クリエイターは、「クローン X」オリジナルの法被風ジャケットを着用。デザインはランダムに配布されているようで、アースカラーやデニム、モノトーンなど様々。そのほか、RTFKTと「ナイキ」によるフーディーを着用している人も多く見られた。フーディーにはQRコードがプリントされており、スナップチャットで読み込むと翼のARフィルターが登場する。
来場者の多くのコミュニケーションツールがツイッターであることも新鮮に感じた。参加したクリエイター、デンジン(Denjin)に理由を聞くと「クリエイターならインスタグラムに作品をポストできるけど、クローンのホルダーはそういうわけにもいかないからね。『クローン X』のファンはみんなツイッターで交流することが多いし、今回みたいなイベントの情報もツイッターでチェックすることが多いかな」とのこと。
イベントで3Dアニメーションを放映した、ロサンゼルス出身のRTFKT認可クリエイター、イラ・オルビス(ila orbis)は、元々音楽プロデューサーとして活動していた。今回のイベントのために初めて3D制作に取り組み、知人の歌手やアーティストの協力により約5カ月で作品を仕上げたという。「日本の『クローン X』コミュニティはすごくホットで、こんなに多くの人に自分の作品を見てもらえるなんて最高だ。ロサンゼルスには既にたくさんのクリエイターが存在するし、プラットフォームもたくさんあるから、正直日本のような反響が得られるかわからない。何より、このイベントに来ている日本人がすごくオープンマインドなことには驚いた」。彼が語るように、会場中のあちらこちらで熱心に会話が繰り広げられ、同じNFTホルダーや憧れのクリエイターとの交流を心から楽しんでいる様子。日本で行われている他のパーティではあまり見られないカジュアルさと盛り上がりだ。
2時間半のイベントだったが、クローズ後も多くの人が物足りず、それぞれが個々で打ち上げを行ったようだ。イベントの様子は「クローン X トーキョー」のツイッターで発信されている。