香港の巨大財閥K11は、現地にある自社の美術館で「The Love of Couture: Artisanship in Fashion Beyond Time(クチュールへの愛:時を超えたファッションの職人技)」展を開催している。2023年1月29日まで。この展覧会は、ロンドンにある世界有数のアートやデザイン、パフォーマンスの美術館であるヴィクトリア&アルバート博物館(Victoria and Albert Museum)が収蔵している1830〜1960年代のアーカイブを展示。加えてアジアのデザイナー6組が、このアーカイブにインスピレーションを得つつも現代の東アジアのエッセンスを加えた新作を含む4点ずつのドレスを展示している。日本からは「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」と「リュウノスケオカザキ(RYUNOSUKE OKAZAKI)」が参加している。12月上旬にはガラパーティーが開かれ、小泉智貴と岡﨑龍之祐も出席した。
小泉は、「1830年代のドレスをリサーチしたが、最後は自分の感覚を大事にした。オートクチュールがテーマの1つなので、今回はミシンだけじゃなくハンドステッチを取り入れている。同世代のデザイナーの作品は、いずれも着想源は同じなのに、それぞれ飛躍した解釈でオリジナル。規範にとらわれず、真面目すぎることもなく、一方で皆が見たいものを理解しながら制作する器用さも持っている。 K11という会社は存在も知らなかったが、実際香港を訪れ、その規模感や活気に驚いた。(さまざまな報道はあるが)香港は今もアジアのハブ。東京でのイベントとは、外の世界とのつながり方が違うように感じた。このタイミングで自分から外に出て、トライを繰り返しながらつながっていきたい」と話す。
一方岡崎は、「自分の作品はクチュールとは違うと思っているが、一方で『クチュールっぽいね』と言われることもある。歴史的なクチュールと同時に展示されることで描かれる、その曖昧さが自分にとって新しい刺激になるかもしれない。1921年のポール・ポワレ(Paul Poiret)のドレスの錦糸の刺しゅうは、人間の精神性を突き詰めた装飾のようで自分のアプローチと重なった。展覧会は、キュレーションがとてもアジア的。ヨーロッパで生まれた、元来アジアには存在していなかった文化が混じりあって今のアジアのファッションがあるし、香港はそうやって成長してきた。勢いを肌で感じている」と話す。
そのほかの参加者は、LVMHプライズ2022のセミファイナリストに選出された中国のユエチ・チ(Yueqi Qi)、「ウインドーセン(WINDOWSEN)」を手掛ける中国のセンセン・リイ(Sensen Lii)、セント・マーチン美術大学(Central Saint Martins)在学中から注目を集めていた香港のセリーヌ・クワン(Celine Kwan)、「ミス ソーヒー(MISS SOHEE)」のクリエイティブ・ディレクターを務める韓国のパク・ソヒ(Sohee Park)。