REPORT
心配は杞憂。オッセンドライバーは一人でも大丈夫
クリエイションのトップを務めていたアルベール・エルバスが抜けてはじめてのランウエイショー。エルバスのビジョンをメンズで実現してきたルカ・オッセンドライバーにとっての、パートナー不在の中でのクリエイションという新たなチャレンジは、見事な合格点と言っていいだろう。今シーズンも「ランバン」は、インディビジュアリティ、個性を考え、圧倒的なクラフトマンシップと多彩なバリエーションのメンズウエアを生み出した。
多彩とは言え、今シーズンはオーバーサイズのコートと、テーパード気味のパンツという基本ルールを設け、その中でバリエーションを模索。このアプローチが、特に日本マーケットにおいては、功を奏した。今シーズンのトレンドに浮上するコンパクトサイズのアウターとハイウエストでフレアシルエットのボトムスは、日本人にとって難易度が高く、着こなしづらい。だからこそ馴染みあるシルエットは、安心感を持って迎え入れることができた。もちろん、多彩なフォームを楽しみたい人も、心配することはない。圧倒的なレイヤードスタイルの中には、さまざまなシルエットのトップスが組み込まれている。ボリュームシルエットのレイヤードでも、太って見える心配は皆無だ。個々のアイテムは、マトラッセ(刺し子)やハトメ、ファスナーのディテールが縦のラインを強調しているからだ。
シルエットに制限を設けた分、今シーズンは色使いにおいてはリミッターを解除した。プリントやタイダイでムラ染めのテクニックを多用し、一着の洋服にさまざまな表情を同居させる。そして、随所に加えたステッチワークが、既製服を一点モノの世界へと押し上げる。
アプローチに何ら変化はない。それぞれのルックにおいて、素材を選び、フォームを研究して、インディビジュアリティを示唆するために色と加工、手仕事を加えるというこれまでの定石を徹底的に再追求した。「アルベールがいなくなって、逆に集中できるようになった。この半年は、本当にクリエイション集中した」とオッセンドライバー。彼の言葉は、コレクションに現れていた。