国内外のメンズファッションを中心に取材する大塚副編集長は、デザイナーズブランドの新作を毎シーズンチェックしています。今シーズン購入したものを並べてみると、緑色ばかりで自分で驚いたほど、無類のグリーン好きなのだとか。「最近は『ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)』のおかげで街にグリーンが溢れてうれしい」らしく、「グリーンの使い方が上手いブランドはセンスがいい説」を勝手に唱えたり、「2010年に『オキシジェン フェスティバル(Oxegen Festival)』に出演したフローレンス・ウェルチ(Florence Welch)が“ベスト・グリーン・ドレッサー”」という誰もピンとこない知識を力説したりと、ちょっと何を言っているのか分かりませんが、とりあえずグリーン愛が止まらない様子。今回は、そんな大塚副編集長の“緑だらけのベストバイ”を紹介します。
「ダブレット」の「ジョジョ」9巻スーツ
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東京から片道約3時間の道のりを経て会場にたどり着いた“一生忘れない”「ダブレット(DOUBLET)」のショーで、2ルック目に登場したのがこのスーツ。遠くから近づいて来るにつれて、直感が働きました。「ああ買うかも。いや、絶対買うわ」と。なぜなら、「ジョジョ」を感じたから。思い返せば、僕が緑色を好きになったきっかけは「ジョジョの奇妙な冒険」の単行本9巻を手にしたとき。当時中学生だった僕は、9巻を手にした瞬間「なんてかっこいい色使いなんだ」と感動し、それ以来緑にのめり込んでいったのです。このスーツに「ジョジョ」を感じたのは、色だけではありません。張り出した肩に短ランのような着丈のジャケットと、ローウエストのワイドパンツという個性的なフォームからも“荒木飛呂彦イズム”を感じました。さらに、刺しゅうで表現した焼け焦げ跡と、9巻に収録している“炎・流法”を操るエシディシとの激闘がリンク。「ジョジョ」フリークの井野将之デザイナーが意識したかどうかはさておき、僕にとっては奇跡のようなスーツだったのです。(大塚千践「WWDJAPAN」副編集長、以下同)
「オーラリー」のルック買いセット
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「オーラリー(AURALEE)」の東京での2022-23年秋冬シーズンのランウエイショーを取材した際に、「コレは!」と一目惚れしてルック買いしたニットウエアとパンツのグリーンマンセットです。トップスはフレンチメリノとベビーアルパカを撚糸した杢糸のローゲージリブで、見た目の印象とは異なり軽くてふわっふわ。発色が素晴らしいパンツは、モンゴルのカシミヤとラムウールをブレンドした糸に、ウールリネン糸も使ったツイードです。こちらも履き心地が軽いし柔らかいしでさらっさら。カラーコーデで心は攻めの3トップなのに、体は優しく包み込まれた盤石の5バック状態という、両極が同時に楽しめます。アイテム個々のクオリティーもさることながら、このショーは山口翔太郎さんのスタイリングも素敵で、財布のひもは無人のゴール状態でした。
「ヨーク」のラックへし折りカーコート
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こちらも山口翔太郎さんスタイリングのショーで購入を決意した、「ヨーク(YOKE)」のシープスキンカーコートと、キルティングのトートバッグです。山口さん、勘弁してください。これらは38歳でランウエイショーデビューした、寺田典夫デザイナーの晴れ舞台に登場したもの。「ヨーク」のアウターはシルエット勝負な印象が強かったのですが、一番引かれたのはこの絶妙なディープグリーンの色味と鈍い光沢の組み合わせでした。レザーはベジタブルタンニンなめしで、高圧プレスによってあえて硬く仕上げており、パリッと背すじが伸びる着心地。これから10年20年と着続けていくうちにどんどん味が出ていくのが楽しみな、ラグジュアリーな一着です。リアルレザーのアウターを購入したのは初めてだったのですが、予想以上のしっかり感に自宅のパンパンなラックが折れました。
「ベッドフォード」の幸福の緑のスカーフ
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「この素材、見てください」と山岸慎平「ベッドフォード(BED J.W. FORD)」デザイナーが展示会でうれしそうに紹介してくれたのが、「世界最軽量の素材」というスカーフです。繊細なタッチのポリエステルにキャッチーなスターモチーフやピースマークをあしらい、グリーンの発色の良さも相まって「買う買う」と即決。この軽さがなかなか衝撃的で、宙に投げると羽衣のようにひらひらと美しく舞います。産地の高い技術と、ロマンチストなデザイナーの感性が融合した大好きなアクセサリーです。疲れて帰宅した夜は、たまに自宅で宙にこのスカーフを投げ、きれいなひらひらを眺めながら癒されているという危ない感じは、ここだけの秘密にしておいてください。
「マルニ」のうぐいすウォレット
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ひさしぶりに財布を買い替えたくていろいろ見た結果、「マルニ(MARNI)」のウォレットを購入しました。うぐいす色のようなグリーンがやっぱり決め手。パーツ使いといいゴールドのスタッズ装飾といい、どこかロボットのような近未来感がありながら、かすかに和のムードを感じさせる落ち着いた色味が気に入っています。細かく型押ししたサフィアーノレザーを使っているので傷や汚れにも強く、かわいくてタフな奴。パンツのポケットへの納まりがいいサイズ感です。「マルニ」のアクセサリーはやっぱりかわいくて、使う人の日々に少しの幸せを与え続けてくれるなと再認識しました。
「セリーヌ オム」の緑ヘル“C”キャップ
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「セリーヌ(CELINE)」2021年春夏コレクションで初めて見たときから気になっていた“C”キャップことイニシャル ベースボールキャップ。汗かきなので普段は帽子をあまりかぶらないのですが、このグリーンの配色が好きで、秋冬シーズンでウール素材なら大丈夫だろうと購入しました。映画「パリ、テキサス」の主人公トラヴィスのように、スーツにあえて取り入れるのがいいかなと思っています。なお、僕は大阪育ちなのですが、両親は巨人ファン。幼少時の自宅テレビはプロ野球の巨人戦ばかりで、学生時代はクラスメートが阪神のカツノリ(野村克則)選手が打ったホームランの話題で盛り上がっていても沈黙するしかありませんでした。その反動で、近鉄バファローズを好きになろうとしてみたり、“赤ヘル”軍団こと広島東洋カープの“C”キャップを無理に購入して応援しようとしたりする時期もありましたが、どれも定着せず。いつしかサッカーにのめりこんでいった自分が、まさか“C”キャップを再び身に着ける時期が来るとは、不思議な気持ちです。