サステナビリティ

「ロペピクニック」「エミ」などが採用 低環境負荷で追跡可能な素材「レンチング™エコヴェロ™」とは?

 アパレルメーカーは自社製品の環境負荷の低減や追跡可能性(トレーサビリティー)の担保に向けた取り組みを加速している。トレーサビリティーは、環境や人へ配慮して生産されているかを把握するとともに、「どこでどのように作られたかを知りたい」という消費者の声にもこたえるためだが、現在、追跡可能な素材の数は多くはない。

 オーストリアの素材大手レンチング・グループ(LENZING GROUP)は、トレーサブルで従来のビスコースレーヨンに比べてCO2排出量と水質汚染を最大50%軽減したビスコースレーヨン「レンチング™エコヴェロ™(LENZING™ ECOVERO™)」を提供する。原料には管理された森林の木材とパルプを用い、原料の抽出から生産、流通、廃棄までの全ライフサイクルを通じて高い環境基準に適応するEUエコラベル認証を取得。特殊な製造システムにより、加工や転換の段階を経た後でも最終製品での使用を特定することができる。こうした特性からすでに全世界の500以上のブランドがビスコースレーヨンを「レンチング™エコヴェロ™」に切り替えている。

「ロペピクニック」や「エミ」が採用

 日本でも「レンチング™エコヴェロ™」の採用が進んでいる。

 マッシュスタイルラボが手掛ける「エミ(EMMI)」もその一つだ。「レンチング™エコヴェロ™」採用の理由を生産管理本部の福田健幸「エミ」ブランド責任者は「『サステナビリティの先駆者になりたい』というブランドの思想と会社の“サステナブル&ポジティブ”というスローガンにも合致した」と語る。ニットのプルオーバーやスカートで混率41~72%で使用した。着心地は顧客からも好評だ。「『生地にとろみがあり、肌触りが気持ちいい』『直接肌に触れてもノンストレス』『リブがピタっとし過ぎず程よいフィット感で、1枚でもインナーとしても使いやすい』といった声をいただいている」とレディス営業本部の本多姿織「エミ」担当課長代理。「環境に配慮した素材である点はもちろん、自宅でお手入れできる、毛玉になりにくい点も評価を得た」。

「ロペピクニック」は主力素材として
「レンチング™エコヴェロ™」を活用

 ジュンが手掛ける「ロペピクニック(ROPE' PICNIC)」は、ブランドの核となるアイテムであるニットプルオーバーやニットカーディガンの主素材として、リサイクルポリエステルやオーガニックコットンと混紡して活用する。同ブランドは、2023年中に素材の60%をサステナブル素材に置き換えることを目標にする。「お客さまに届けるまでの工程で可能な限り、環境に配慮したモノ作りを進めることを大切にしている」とロペピクニック事業部の泉田亮MDは話す。「サステナブル素材全体でも『レンチング™エコヴェロ™』は約20%を占めており、高い構成比になっている。『レンチング™エコヴェロ™』は肌触りの良さや着心地、上質な光沢感、落ち感のある素材特性がブランドとの親和性が高い。リブ編みやケーブル編みなどさまざまな編みでも価値観のある表情になるため重宝している」と泉田MD。「レンチング™エコヴェロ™」を使用した商品の販売実績も高く、顧客からの支持を得ている。「お客さまがデザインや着心地で選んでいただいた商品が実は環境に配慮した素材で作られた商品だったと、サステナビリティが特別なものではなく、“当たり前”のものとしてお客さまに提案していきたい」と語る。

「アズールバイマウジー」は「レンチング™エコヴェロ™」を
用いた商品を拡大予定

 「アズールバイマウジー(AZUL BY MOUSSY)」は現在、“ランダムリブハイネックニットトップス”でのみ「レンチング™エコヴェロ™」(59%、ポリエステル25%、ナイロン16%)混の素材を用いているが、今後、ニットやブラウス、スカートなどで「レンチング™エコヴェロ™」の使用拡大を検討している。ビスコースレーヨンの落ち感やしなやかさが生きる商品へ用いていくという。「従来の価格帯と変わらない、求める商品の風合いや機能性が損なわれない場合、環境配慮型素材への切り替えを検討している」と大西俊史アズールバイマウジー事業部副事業部長兼レディースMDグループ長。現在、「レンチング™エコヴェロ™」を用いた商品にはオリジナルのサステナブル下げ札をつけている。「近年SDGsやサステナブルといった言葉が世の中に広く浸透していく中で、ブランドのサステナビリティへの取り組みの一環として続けていきたい」と話す。
 
 「レンチング™エコヴェロ™」は2017年の販売開始以来、30万t以上が生産された。レンチング・グループは現在、世界の主要ブランドの需要増加に対応するためにインドネシア工場で新たに「レンチング™エコヴェロ™」を製造するラインを稼働させる予定で、23年には「レンチング™エコヴェロ™」の生産能力の倍増を計画。すでに日本の有力グローバルブランドの導入が決定するなど、追跡可能で、低環境負荷のビスコースレーヨンとして広く認められている。また、「レンチング™エコヴェロ™」の特徴を広く伝えるために、インスタグラムに公式アカウント(@ecovero.japan)を開設。「レンチング™エコヴェロ™」の環境優位性から着回し術、ブランドとのコラボレーションなど幅広い情報を発信している。

TEXT : YUKO HIROTA
問い合わせ先
レンチング™エコヴェロ™