「ジバンシイ(GIVENCHY)」のメイクアップ クリエイティブ ディレクターに就任した英国出身のメイクアップアーティスト、トム・ウォーカー(Thom Walker)が来日した。彼はメイクアップコレクションを手掛けるとともに、広告の監修も務める。フリーランスとして「エルメス(HERMES)」や「アレキサンダー・マックイーン(ALXANDER MCQUEEN)」「オフ-ホワイトc/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」などのファッションブランドでファッションショーやキャンペーンを手掛けるなど豊富な経験と実績を持つ彼に、就任までの経緯や「ジバンシイ」での仕事について聞いた。
WWD:「ジバンシイ」のディレクターに就任した率直な感想は?
トム・ウォーカー「ジバンシイ」メイクアップ クリエイティブ ディレクター(以下、ウォーカー):とても興奮しているし光栄なことで、今までの仕事の成果を評価してもらったことをうれしく思う。「ジバンシイ」と私は、現代女性の美に対して非常に似た哲学を持っており、それを分かち合えたことが今回の就任につながった。
WWD:「ジバンシイ」やあなたが共有する現代女性のイメージとは?
ウォーカー:エレガンスでありながら時代を超越した感覚を持ち合わせ、大胆でリスクを恐れない。新しいことに挑戦する、シンプルであることを恐れない人。ブラックドレスや赤い口紅のように、シンプルにはパワーが潜んでいる。
WWD:クリエイティブ・ディレクターとしてブランドに関わりたい思いは以前からあった?
ウォーカー:もちろん。夢のような話だ。最初は実現しない夢のように感じていたが、経験を重ねると「いつか現実になるかもしれない」と実感できるようになった。百貨店のカウンターで働いていた時から、広告ビジュアルやファッションにインスパイアされ、ファッションの世界で働いてからはクリエイティブ・ディレクションに強い興味が生まれた。メイクアップアーティストとして商品を作るのは究極の目標だった。
WWD:ブランドにそのまま残したいもの、逆に変えたいものは?
ウォーカー:必ずしも「変えたい」とは思っていない。「変える」というより今あるものや必要なものを時代に適応・昇華させるような感じ。例えば、ルースパウダー“プリズム・リーブル”は長い歴史のある象徴的な製品で、発売当初から今なお革新的。革新的なマインドを持ち続けて全ての製品を進化させたいし、一方でメイクアップが気持ち良く感じられるよう感覚的な体験も大切にしたい。今は2024年に発売する製品を考えている。多くは語れないが、目にフォーカスした製品だ。巧妙でユーザーフレンドリーでありながら、革新的なものを作りたい。
WWD:「ジバンシイ」のメイクはテクノロジーの力で進化することで、より自然な仕上がりがかなうように思う。
ウォーカー:テクノロジーは、商品開発にとって重要な要素。肌に合わないファンデーションは興味を持てないし、ベネフィットも求められる。反対に肌がきれいに見せられれば、もっとつけたくなるだろう。テクノロジーとマインド、さらにクリエイティブを全製品に注入できれば間違うことはないだろう。ベースメイクに関しては、メイクだと分からないぐらいの領域を目指したい。
WWD:商品開発はどう進めているか。
ウォーカー:チームには10人くらいのメンバーがいて、大きなテーブルを囲んで意見を出し合っている。みんながどう考えているかを知りたい。自分と異なる意見を知るのはとても楽しいプロセスだ。