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動画を基点にロイヤルカスタマーを育成 「ファイヤーワーク」が推進する「動画DX」とは?

 2021年に日本へ本格進出した米ループ・ナウ・テクノロジーズが提供する動画DXフォーム「ファイヤーワーク(Firework)」が、わずか1年余りで成果を上げつつある。縦型ショート動画やライブコマース機能を簡単にサイト内に埋め込めるだけでなく、動画を活用したデータ分析やOMO施策、広告施策まで広げることができる。導入企業で進む「動画DX」の事例を聞いた。

あらゆるDX施策のハブになる

WWD JAPAN(以下、WWD):「ファイヤーワーク」が今、求められている理由は?

田中雄大ループ・ナウ・テクノロジーズ セールス事業部シニア アカウント エグゼクティブ(以下、田中):マーケティング活動に動画が欠かせない時代になっているのは周知の通りだ。一方で一般的なDX施策では、ECサイトの強化、SNS運用、OMO施策など各分野をスポットでフォーカスしがちなため、ツールの乱立やリソース不足が問題になっている。「ファイヤーワーク」の強みは、自社サイト内でショート動画やライブコマースを配信できるだけでなく、さまざまな分野の施策のハブの役割を担うことができることだ。

WWD:外部の動画プラットフォームではなく自社サイト内に動画を展開するメリットは?

田中:インスタグラムやユーチューブ、ティックトックなど無料の動画配信サービスは、情報発信としては必要な施策だが、その先の展開につなげにくい。24年に個人が他のドメインへアクセスした履歴などのサードパーティークッキーの規制が始まろうとしているなか、お客さまの情報を自社でどれだけ保有できるかが、サービスの成長に欠かせない。そこに自社サイト内に注目度の高い動画コンテンツを置くメリットがある。「ファイヤーワーク」のダッシュボードでは、各動画のパフォーマンスを分析できるほか、グーグルアナリティクスと連携することで、ライブ配信のアーカイブ視聴者の商品購入率や、サイトの再訪率なども分かる。さらに先日、カスタマーデータプラットフォームの「トレジャーデータ」との連携も開始したことで、ライブ配信を見た人に絞って広告をダイレクトに飛ばしたり、メルマガを配信したりするなど、ユーザー個人に落とし込んだ施策が可能になる。動画ソリューションのメリットは、導入したほぼ100%のクライアントが、サイトの滞在時間や再訪率などのウェブパフォーマンスが上がり、その先の購入率や購入単価の向上まで実感していることだ。また、分析結果をスタッフの評価に活用できるのも大きなメリットだ。

動画がつなぐデジタルとリアル

WWD:「動画DX」が成功している具体例を教えてほしい

田中:花王が展開するカネボウ化粧品のプレステージブランド「ルナソル(LUNASOL)」では、サイト内でメイク方法の紹介などをライブ配信している。また2022年末に展開されたポップアップショップではイベント会場からライブ配信を行い、イベントに来られないお客さまにも会場の雰囲気を共有した。サイネージを設置する店舗も増えているなか、動画素材があると店頭マーケティングにもつなげられる。

WWD:動画の撮影や編集ノウハウがない場合は?

田中:「ファイヤーワーク」は動画編集ツールを備えているのも特徴だ。動画がなくても、スチール写真を組み合わせて動画にできる。「クロコダイル」などのブランドを展開するヤマト インターナショナルは社内に動画撮影の仕組みがなかったので、「ファイヤーワーク」導入と同時に、社内に撮影スタジオを増設し、撮影をインハウス化して社内の作業フローを変更した。ECサイトトップページにも動画を挿入した結果、EC売上の15%は動画経由で発生しており、ROAS(広告費用対効果)も向上した。

定期的なライブ配信で
ファンのロイヤルティを醸成

WWD:ライブ配信の活用事例は?

田中:ストリートブランド「エルエフワイティー(LFYT)」を展開するラファイエットは、週に1回の頻度でライブ配信を行い、配信中にユーザー投票でデザインを決めたり、限定商品の販売や特典を提供するなど、固定の視聴者を離さない取り組みを行っている。自社ブランドのファンのロイヤルティ醸成を図ることで、自社サイトへの訪問、購入を促進し、LTVの向上に取り組んでいる。またECの商品紹介ページには、身長や体型の違うスタッフがアイテムを着用した縦型ショート動画を複数挿入している。実際の店舗スタッフが登場するため、リアル店舗でも話題になるとともに、サイズ感も伝わりやすくなり、EC購入におけるサイズ交換の割合も減ったという。

「動画DX」を推進する
新たな機能の提供に向けて

WWD:今後の展開は?

田中:当社は世界各地に開発チームがあり、日々市場からのニーズに応えるため、サービス強化や新たな機能の開発に取り組んでいる。米国ではすでに導入しているインスタント・チェックアウト(今すぐ購入)機能もその一つだ。この機能は購入プロセスの簡略化と共に、カート落ちへの対策にもなる。このほかにも店舗スタッフをデジタル上で活かす機能の展開も進んでいる。パーソナライズされた、よりリアルなやりとりをデジタル上で行うことで、店舗スタッフの効率の向上と、店舗への誘導を図ることが期待される。こういったサービスは海外ではすでに提供が開始されており、日本でも順次提供が可能になる見込みだ。デジタル上の売り上げだけでなく、店舗も通じた顧客体験の向上と、収益の増加を支えるソリューションを今後も提供していく。

※導入の可否はご利用のEC環境によります。
TEXT:MIWAKO ANNEN
PHOTO:YUTA KATO
問い合わせ先
ファイヤーワーク
https://jp.firework.com/contact-us