コロナ禍を経て、「ローカル消費」にスポットライトが当たっている。アパレル業界にも、これを好機に新しいビジネスチャンスを見いだしている企業がある。地域のニッチなカルチャーを発掘したり、店舗に地元のアーティストを呼んでライブをしたり、行政とのまちづくりに参画したり。成功事例に共通するのは「商品を作って、売って、もうける」という従来的な思考からは離れていることだ。ローカルビジネスの成功に近道はない。しっかりと腰を据えて、その地域の生活や文化を深く理解し、コミットしていく姿勢が重要だ。
アパレル業界を取り巻く商環境は厳しく、均一のチェーンストアオペレーションだけで利益が上がる時代ではない。これまでとはローカルとの向き合い方を根本から変えなければならない。その土地の文化を自ら発掘し、発信者となることが必要だ。ここでは、創業地・茨城からシビれる企画で人だかりを作るデイトナ・インターナショナルの「フリークス ストア」、ユナイテッドアローズの「グリーンレーベル・リラクシング」、TSIホールディングスの事例を紹介する。(この記事は「WWDJAPAN」11月21日号の抜粋です)
スタッフ発案のシビレる企画で
“何もない場所”が大盛況
10月下旬、デイトナ・インターナショナルの創業地である茨城・古河市の「ザ キャンプ フリークス ストア(以下、ザ キャンプ)」。開店時間になると、店舗脇を走る国道から車が次々と吸い込まれていき、90台停められる駐車場がたちまち満杯になった。車から降りてくるのは、おしゃれな装いの親子連れたち。この日、店舗では子持ち家族向けのライフスタイル誌「ハグマグ」とのコラボイベントを実施した。
イベントでは、誌面でモデルを務めるママ・パパが出品するフリマやおしゃれな子供服ブランドのポップアップ、親子ファッションスナップ撮影会などさまざまな企画を用意した。多くの親子連れが来店し、大盛況のうちに幕を下ろした。古河店では、これに限らず毎週末のようにイベントを仕込み、顧客の継続来店につなげている。
「話題性のある企画があれば、周囲に何もない郊外や地方の店舗でも人が集まる。ディスティネーションストア(わざわざ足を運ぶ店)を作ることができる」。そう話すのは、デイトナ・インターナショナルの清宮雄樹 執行役員ブランディング本部長。
同社では、店舗やスタッフ発信の独自企画を“シビレ企画”と呼んでおり、この「ハグマグ」とのコラボイベントもその一つ。全国50の店舗は昨年1年間で150以上のシビレ企画を実施した。8月には富山県を拠点に活動するラップバンドのザ・おめでたズと「フリークス ストア」富山店がコラボ。同店が入居する商業施設「ファボーレ富山」1階でライブ&コラボアイテムの物販を実施すると、県内のみならず全国からファンが集まり、上層階からの立ち見客が出るほどの盛況となった。
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